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第一章 第2話 「変化」

何も変わらないはずの朝だった。

昨日と同じ景色、昨日と同じ道。

ただ一つ、違っていたのは――

俺の知らない俺を、誰かが知っていたこと。

(修司…修司…! 起きろ!早く起きろ!)

誰かに呼ばれた気がしたが部屋には1人、俺だけだ


「誰だ…?誰が俺を…。」


スマホを見ると、午前六時二十八分。目覚ましをセットした時刻より二分早く目が覚めたらしい。

ぼーっと窓の方を見ていると、スマホの目覚ましが鳴り始めた。

いつものように顔を洗って髭を剃り、歯を磨く。

テレビをつけると占いが流れていた。


「ごめんなさ〜い、最下位はてんびん座のあなた! ちょっとしたうっかりが大きな失敗に、ラッキーアイテムは小さなテディベアです!」


アナウンサーの明るい声が部屋に響く


「ははっ、最下位か…。」


占いなんて基本信じないが、なんだか今日だけは妙に

耳を傾けてしまった。

そんなことをしていたら会社に向かう時間だ

俺はスーツに着替えて出発する。


「いってきます…って誰もいないのか。」


いつも通りの道を重い足取りで会社に向かう


「おはようございまーす。」


いつも通り適当に挨拶をする


「おつかれっす先輩!」

「あぁ、おはよう。」

「昨日、ちゃんと帰れました?」

「……どういう意味だ?」

「いや、昨日の帰り、駅近くのトンネルで先輩を見かけたんすけど、声かけたのに無視するんすから。」

「人違いだろ。」

「いや、絶対先輩でしたって!」


そんなことを話していたら遠くから誰かが俺を呼んでいる

…渡部課長だ。


「佐伯くん、出してもらった資料、修正箇所がいくつもあったよ。 しっかりやってもらえるかい?」

「本当ですか? すみませんでした、気をつけます。」

「それと佐伯くん、昨日は大丈夫だったかい?」

「何がですか?」

「駅近くのトンネルで君を見かけたんだが、どうも様子がおかしいように見えたから、少し心配したよ。」

「課長もですか…俺じゃないですよ。」


なにかおかしい。

俺は昨日、会社からまっすぐ帰り、途中スーパーに寄って

買い物をしてすぐに帰ったはずだ

なのにどうして駅近くのトンネルで…?

考えても仕方ない、仕事に集中しよう


「…ぱい…先輩!」


俺は はっとした


「ん?あぁすまん、ちょっと考え事してた。」

「大丈夫すか? なんか今日先輩調子悪いっすか?」

「いや、大丈夫だ、すまん」


正直なところ何かおかしいような気がする。

二人とも、同じ場所で俺を見たと言っている。

駅近くのトンネル。

確かに帰り道から大きく外れる場所ではない。

だが、昨日はあそこを通っていない。

……本当か?

いや、スーパーに寄って、惣菜を買って帰った。

それは間違いない。

仕事に戻ろうとしたが、どうにも落ち着かなかった。

帰りに少しだけ寄ってみるか。


「先輩おつかれっす!」


後藤の声はどこか俺を元気づけてくれる。


「あぁ、おつかれさん。」

「帰り、一服して帰りましょうよ!」

「そうだな、付き合うよ。」


定時を過ぎたせいか、喫煙所には誰もいなかった


「先輩見てくださいよ、この料理!」


後藤が見せてくれたのは後藤の彼女が作った手料理だ

食卓に色とりどりな食事が並んでいる


「おぉすごいな、こんなにいっぱい」

「でしょ!なんか作るのが楽しくて作りすぎちゃったみたいで! そういうところも可愛いんすよね!」

「ははっ、楽しそうでなによりだよ」


一服を終えた俺は会社を出て帰路に着いた

帰り道に通りかかったトンネル…ここだ。


「やけに暗いな…それに少し寒いような…。」


不気味に感じた俺はすぐにその場から立ち去ろうとしたが

何か落ちているのを見つけた。


「なんだこれ…小さいクマの人形か…?」


落ちていたのは片耳がちぎれた小さなクマの人形だ

俺は朝見たテレビのことを思い出す。


「ラッキーアイテム…小さなテディベア…。」


俺はその人形を元あった場所に戻し、少し駆け足で家に帰った。

スーツを脱ぎ捨て風呂に入り、 ご飯を流すように食べた俺はすぐにベッドに入った。


「あのトンネル…どこか不思議だったんだよな…。」


気になった俺はあのトンネルについて調べてみたが、情報が何も載っていなかった。


「なんだ…何も載ってないじゃないか、後藤も課長も…一体何を見たんだ…。 考えてもしょうがないか…。」


スマホの画面を消し、部屋が暗くなる。

目を閉じても、あのトンネルの光景が頭から離れなかった。

どうして、あんな場所に俺がいたのだろうか。

しばらく考えていたが、やがて眠気がどっと押し寄せた。

明日になれば、きっと忘れている。

そう自分に言い聞かせた。

だが、あのトンネルのことだけは、どうしても忘れられなかった。

表裏二体 第2話いかがでしたか?

楽しんでいただけたら幸いです。

少し投稿に日が空いてしまい、申し訳ありません。

ゆっくり書いていきますのでこれからもよろしくお願いします。

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