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第一章 第1話 『日常』

あなたは昨日、自分が何をしていたのか全て覚えていますか?


誰と会い、何を話し、どこへ行ったのか。

その記憶は本当に自分の記憶だと言い切れますか。

「うるさいな…。」

騒がしく鳴るスマホには午前六時半、いつもの時間だ。

重たい体を無理やり起こし、洗面所へ向かった。

顔を洗い、髭を剃り、歯を磨く、鏡を見るとひどく疲れた顔をしていた

三十四歳、いつからこうなってしまったんだろう。

そんなことを考えながら洗面所の電気を消す

カーテンを開けると下の方から子供の元気そうな声が聞こえる


「元気そうでなによりだな、俺にもその元気分けてくれよ。」


そう呟いた俺は、昨日の余ったご飯を食べながらテレビを

ぼんやり眺める。


「おはようございます! 今日も気持ちのいい朝ですね!さて、それでは今日の天気からです!」


テレビからアナウンサーの明るい声が聞こえる。

スーツに着替え、会社に向かう支度を済ませ、玄関を開け、大きなため息をつく。


「はぁ…行ってくるか…。」


憂鬱な気分なまま、会社に向かう


「おはようございまーす」


一応挨拶はする、本当ならする気も起きないけどしない訳にもいかないからだ


「先輩、おはようございます!」

「あぁ、おはよう。」


こいつは俺の部下の後藤、入社3年目の若手だ

いつも元気で、仕事も真面目にやってくれる


「佐伯先輩、今日の会議資料送ってるんで最終確認してもらえますか?」

「ありがとう、 確認しておくよ。」


色々修正点を言ったのだがちゃんと修正されて分かりやすくなっている


「後藤、確認したよ。 とりあえずこれで大丈夫だ。」

「了解っす、そしたら先輩とりあえず一服行きませんか?」


ニヤニヤしながら俺に言ってくる


「そうだな、コーヒー奢るよ。」

「あざっす!」

喫煙所には誰もいなかった

胸ポケットの煙草を取り出し火をつけ、缶コーヒーを開ける

白く浮かぶ煙を見ながら何も考えずぼーっとしていると


「先輩って結婚しないんすか?」


後藤が笑いながら言ってきた


「あぁ、今は考えてないよ。」

「"今は"ってもう先輩三十四でしょ?」

「いいんだよ、そのうち見つかるから。」

「合コンとかセッティングしましょうか? 俺そういうの得意っすよ!」

「いいよいいよ、若い子の中に三十四のおっさんが入る訳にはいかないからさ。」


結婚を考えてない訳じゃない、ただ今の俺に誰かを幸せに出来るような気がしなかったからだ

デスクに戻ると、声をかけられた


「佐伯くん、ちょっといいかな」


聞き慣れた声が背後からした。

渡部課長だ。

この人の「ちょっといいかな」が、本当にちょっとで済んだことは一度もない


「はい、どうされましたか?」


なんだか嫌な予感がする


「この資料なんだが…ここをもう少し分かりやすくできるかな?」


できる限り愛想よく返事をする。


「了解しました、修正してまた確認よろしくお願いします。」(そんなことだと思ったよ、まったく…)


そうこうしているとお昼だ、俺は決まって休憩室でパンを食べる。

休憩室のテレビからはお昼のバラエティ番組が流れている。

休憩から戻ると会議室に向かい準備を進める


「先輩、上手くいくといいっすね。」

「あぁそうだな、頑張ろう。」


少し緊張したが、会議はなんとか乗り切った


「お疲れ様、会議なんとか上手くいったね」


缶コーヒーを後藤に差し出す


「あざっす先輩、やっぱり緊張しますね…」


いつも元気な後藤だが会議などは緊張して固まってしまうようだ

会議を終えて、少し仕事をしたら定時がきた


「お疲れ様でしたー。」

「お疲れ様でしたー!」


俺のあとに後藤が続いて走って出てきた


「先輩おつかれっす!」

「あぁ、お疲れ様。 気をつけてな。」


後藤はこのあと彼女との予定があるらしい

俺は帰りにスーパーに寄って惣菜を買って帰る、いつもの帰り道だ


「ただいま…って誰もいないんだけどな。」


そう呟いた俺は買ってきた惣菜を冷蔵庫に入れ、スーツを脱ぎ風呂に入る

風呂上がりにビールを一本取り出し、買ってきた惣菜とご飯を食べる、テレビからは芸能人がキラキラした部屋に住んでいるところが映っている


「いいな、俺もこういうとこ住んでみたいもんだ。」


そう言って俺はビールを喉に流し込み、食器を片付ける

テレビをぼーっと眺めていたら時間が22時になっていた


「そろそろ寝るか、もう眠たくなってきた。」

ベッドに体を入れ、目をつぶっているとスマホに着信が来る


「なんだよこんな時間に…」


俺は少し気が立ったが、それもすぐに収まった。 スマホには母さんと書いている


「もしもし母さん?」

「もしもし修司? ちゃんとご飯とか食べてる?」

「食べてるよ、もう寝るところなのにどうしたの?」

「ううん、なんでもないよ。 ただご飯とかちゃんとしてるのか気になったの。」

「大丈夫だよ母さん、心配しなくても俺はちゃんとやってるから。 明日も仕事だから切るよ?」

「うん、ごめんね修司。」

「ううん大丈夫、おやすみ母さん。」

「おやすみ。」


ツー…ツー…

電話の切れる音がなんだか悲しく思えた

目覚ましが設定されていることを確認した俺はゆっくり目を閉じた


今日も何も変わらない一日だった

明日もきっと今日と同じ一日が来る


そう思っていた。


めぇのここと申します。

初めて小説を書かせていただきます、書き始めると楽しいもので、どんどんアイデアが浮かびますね。

気になって見てくれたあなた、本当にありがとう。

次回の表裏二体もよろしくお願いします。

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