表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/227

四季愛華の優雅な休日

※※※※※


 銀次とソラによる映画館デートと同日。愛華は四季家の邸宅内にいくつかある自室にて、澪と過ごしていた。


「あ、あの。愛華様?」


「何かしら」


「私は一体何をすればよろしいのでしょうか?」


 落ち着かないほどに整った室内で愛華は、ノートパソコンをいじりながら紅茶を飲み。私服姿の澪は恐縮しながらソファーに座り目の前の紅茶にも手を付けず愛華の顔色を伺っていた。


「別に、何でも良いわよ。私はSNSを見ているから、流行りの映画でもドラマでも見ればいいのではなくて」


 薄手のブラウスにロングスカートと言った部屋着姿の愛華はまさに令嬢と言った様相で、澪はやや緊張した視線を愛華に送るのだが、当の本人はPCの画面を睨みつけている。


「あの、いつもは絵の練習の手伝いとか、生徒会のこととか、雑用があったりするのですが……」


 動きやすいワイドパンツにTシャツといった私服姿の澪の問いかけに愛華はPCの画面を閉じて立ち上がり、優雅な仕草で澪の横に座る。


「あ、あの」


 銀髪が揺らめき、そこから覗く表情はなんとも複雑そうだった。


「ないわ。絵の方は家庭教師が休みだし、今日は生徒会のことをする予定だったのに……あの男のせいで予定がなくなったわ」


「……桃井ですか」


 一学期にソラに押し付けていた文化祭の新予算案が通り、後は各クラスの出し物について案が提出されるまでやることが無いのである。日頃、習い事や生徒会の仕事で全くゆとりのない生活を送っていた愛華にとっては非常に珍しいゆっくりと過ごせる日であった。それ自体は喜ぶべきことであるのだが、問題はこの状況を作り出したのは愛華でない人物の手腕に寄る理由が大きいことだった。


「あの男。大して仕事ができるわけでもないのに、場を回すのが異様に上手いのよね」


「同感です……一見するとああいった会には不向きに見えたのですが……」


 文化祭委員会においてリーダーシップを存分に発揮して新たな企画を提案する愛華に対し、銀次は質問したり意見する体で議論が円滑に進むように誘導。要望の多い三年の顔を立てつつ勝手のわからない一年も文化祭に参加しやすい工夫を提案。果ては愛華主導による新たな活動ができるリソースの確保を委員会全体で負担できるように絶妙に調整している。まるで何年も部下と上司に揉まれてきた中間管理職を思わせる銀次の活躍によって愛華も想像しないほど文化祭の準備が順調に進んだためにスケジュールに余裕ができてしまったのである。


「あの男、本当に何者なのよ……この私が掌で転がされているみたいで気分が悪いわ」


「しかし、愛華様と桃井の議論は委員会の参加者にとってとても評判がよく。愛華様の人気も上がっているようですっ!」


「……SNSで確認しているわよ。何が狙いなんだか」


「普通に文化祭を成功させようとしているのではないでしょうか?」


 銀髪を耳にかけながら愛華は澪の方を向く。


「それで桃井君にどんな得があるのかしら? ソラを手元に置こうとした私を牽制するなら、すでに目的は達成できているでしょう。付き合ってそれほど時間が経ってないだけで、どうせ桃井君もあの子に潰されるのに……私だって……」


 話しているうちに愛華は俯いて指先を苛立たし気に擦り始めた。それを見て澪が愛華に微かに身を寄せて口を開く。


「愛華様。今日は折角のお休みなのですから、今は髙城 空のことを考えるのは止めましょう。そうだっ、美術展でも行きませんか?」


「澪、近いわ。それに折角の休日に絵なんか見たくないわね。女の子の間で流行っていることを中心に適当にドラマでも見ましょう。それと、今度の社交会で殿方と話す為に適当な話題も必要ね。お母様の新しい事業も確認しないと」


 邸宅にはシアタールームもあるのだが、楽しむためでなくあくまで話題作りの為にモニターとつけてスマホを取り出す愛華に澪は心配そうな表情になる。


「愛華様の楽しめることをしないのですか? せっかくのお休みなのに……」


「楽しいわよ。上に立つ為の必要なことだもの」


 そう言う愛華の表情は、朝食に栄養剤を飲むかのように無味乾燥しているように澪には感じられる。


「えと、話が戻るのですが、私は何を……」


「そこにいればいいわよ。一人で過ごしていると、古いメイドが心配していらない気を回すのよ。別に帰りたければ帰ってもいいわ」


「いえ、あの、お傍にいれて嬉しいです」


「当然でしょ。ほら、学校で話題になりそうなものを探しなさい」


「はい」


 そうして、話題になっている海外の恋愛ドラマを流し見した二人だったが。

 途中から飽きてしまったのか愛華はスマホの画面ばかり見ている。澪が何を見ているのか覗くとそこにはソラがデザインしたスマホケースが紹介されているサイトだった。


 無表情でそれを見つめる愛華に、澪は何も言えず。モニターから流れ出る音だけが部屋に響いていた。

次回は多分月曜日更新です!


いいね、ブックマーク、評価、していただけたら励みになります!!

感想も嬉しいです。皆さんの反応がモチベーションなのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー連載中作品のリンク先↓

奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
いと憐れ。
子供が頑張って大人のフリをしているようで 憐れだ
相手の有能さも受け止められず、相手の顔色ばかりを伺って過ごす日々。実に空虚じゃありゃせんか。 親の愛も受けられず、所詮時代の敗北者…。 と某敗北者ラップが浮かぶ程度には哀れですわ…。 ソラが極彩色の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ