第3部 流浪のヨーロッパ編 VOL38「究極のバスドライビング」 (2004年)
ー流浪のヨーロッパ編 VOL38ー
「究極のバスドライビング」
ナポリ〜カプリ島 2004年11月
ー前回からの続きー
宮本君とさっきの場所に戻ってみると
隣の船はもうすでに出航した後だった。
うーーん、やっぱり日本人代表として
オシリ出してゴアイサツして
おくべきやったかな??
出航だ。
やや肌寒い風が吹く甲板で絵になる丘と
火山とナポリの街の風景がゆっくり
遠ざかっていくのを眺める。
イタリアってどこを観てもイイよなあ。
天気もサイコーだ。
40分ほどでカプリ島に到着。
予想よりも大きな島だ。
見上げると崖の上のあちこちに
キレイなホテルなどの建物がたくさんある。
青の洞窟への案内とかがなくて
行き方がよくわからない。
バスで行くみたいやけど
どこから乗るんやろ?
警官に訊くとすごくそっけなく
「今日は行けない。」
とだけ言われる。
ええっ?
こんなにいっぱい人が来てるのにい?
せっかくはるばる来たのにい?
婦人警官に訊いてもやっぱり
同じことを言われる。
ナットクいかなくてさらにバスの運転手に
訊くと、洞窟の入り口は海面1mほどの
高さしかないんで波が高い日はボートで
中に入れないそうだ。
うわー、残念やなあ!!
せっかく洞窟の中に射す光の加減が
一番いいと言われるこの昼前の時間帯を
選んでまで来たというのに。
こんなにいい天気やけど
確かに波は少し高いもんなあ。
宮本君もすごく残念そうだ。
彼にとってはこの青の洞窟見学が
メインイベントだったから。
まあ地元の人がムリと言うんだから
仕方がない。
でもこのカプリ島は雰囲気がいいから
洞窟抜きでもけっこうアタリじゃないか
と思って、そう言うと宮本君も意外と
あっさり気持ちを切り替えて同意する。
あんなに楽しみにしてたのにすぐに
前向きに考え直せるところがすごいなあ。
まあそういう臨機応変なところがないと
こんな毎日何が起こるかわからない、
予定通りに物事が進むはずもない
個人旅行を楽しむことなんて
できないかもしれないけどね。
小型のバスでかなり狭く見通しのきかない
くねくね道を上がっていく。
所々バス同士すれ違うことができなくて
止まって道を譲り合うほど狭いのに、
どのバスも信じられないハイペースで
走っている。
道の片方は壁、片方は時々途切れる
低いガードレールがあるだけで
崖下が見え隠れしている。
窓際に座る白髪のやさしい顔の
おばちゃんが窓のほんとにすぐ外が
崖になってる所を通る時、俺らの顔を見て
「ふうー、スリルだわあ!」
という表情を見せる。
俺が相槌をうって崖下を覗き込んで
顔の汗を拭くマネをすると楽しそうに笑う。
マジで俺ら乗客の命はこの見知らぬドライバー
の運転技術ひとつにかかっているのだ!
上るにしたがって窓いっぱいに青い青い海、
切り立った崖、豊かな木々が映ってくる。
ポールに掴まって遠心力や急ブレーキに
耐えて立つ俺はバックミラーが道の脇の
家の塀ほんとにギリっギリをかすめて
木の葉が窓にパシパシ当たりながら
突き進んでいくのを見ていると
ハラハラするのを通り越して
感動すら覚え始める。
この完璧な運転はもうショーの域に
達してるのではないかとさえ思えて
コーフンしてしまう。
ニンゲンの能力ってスゴイぞっ!!
かなり上がったところでバスを降りて
遠く拡がる海原を観る。
こいつぁーグーやなあ!
高い所から海を見下ろす風景としては
今まで観た中でベスト3に入るなあ。
土産物屋やレストランが並ぶ通りを歩く。
ここののんびりした南の国を想わせる雰囲気は
マイアミの南に47個連なる端の島、
アメリカ最南端キイウエストを思い出させる。
レストランの前にマライアキャリーの写真が
数枚貼ってある。
なるほどスーパースターと呼ばれる人が
プライベートでゆったり訪れるのに
ふさわしいリラックスした空気が
ここにはあるように感じる。
ここにハマって何ヶ月も滞在する人は
多いという。
土産物屋で青の洞窟の絵ハガキを見て
あまりの美しさにガクゼンとする。
こ、こんなにアオイのお!!??
まさに絵の具で塗ったような
信じられないようなキレイな青。
改めて今ほんのすぐ目の前まで来ていながら
それを観れない、もう一生観れないかも
しれないという事実を前にして
すごく無念である。
「今回観れないってことは
これはきっといつかまた来いってことやね。
俺絶対またここに来るよ。」
宮本君は静かに燃えていた。




