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神樹の巫女  作者: 昼行灯
22/32

22:手がかり

 マルアさんの宿を出ると、いきなりに久しぶりな感覚が私に向けられている。この感覚はもしかしなくても鑑定スキル。

 視線を向けることなく、鑑定スキルを使ってきている相手を鑑定してみれば、なんとなんとのハーフエルフ。しかもなぜか与一の弓を持っている。どういうことなのか。

 (リン)

 (うん)

 (我がやっていい?)

 (え〜、失敗しないでよ?)

 (まかしろ?)

 (任せたく無いかも!)

 クロの魔眼で幻覚を見せる事にして、都合の良い場所まで移動する事にする。この場では人が多すぎるし、ローラン暗部も護衛冒険者の人も居るから面倒ごとは起こしたく無い。


 何よりも、何故カーサが持っているはずの与一の弓を持っているのかを、じっくりと取り調べたい。

 カーサの物では無い可能性もあるけど、あの人に自力で与一の弓を手に入れられる程の実力はない。ハーフではあるけどエルフである以上、カーサ絡みの案件という事になる。


 嫌な予感しかしない。


 最悪を考える。


 カーサの呼び出し自体が罠だった可能性を考える。

 既に一月以上前の話になる、つまり、、手遅れの可能性が高い。些細な事だけど思い当たることがないわけでは無い。心が揺れる。


 クロが私の頬に頭をぐりぐりとしてくる。

 (うん。だいじょうぶ)

 (リン、これが勝手に終わっていない証拠なのだ)

 これとは、ワザワザ私にちょっかいをかけに来たハーフエルフのこと。勝手に終わっていないとは、私の知らないところで全ての事が済んで、二度とカーサに会う事が出来なくなるということ。間に合うか間に合わないかは分からないけど、既に遅いのかもしれないけど、終わってはいない。だから、

 (そうだね、最初で最後のチャンスかも知れないしね、キチンとやろうね)

 (まかしろ?)

 (も〜!)

 クロのおでこにアゴをグリグリと押しつける。


 動揺も何もしない、出来ることを淡々としよう。ただ、失敗はしない。それだけ。



 クロと別れる。

 フードの中から、隠密アンド縮地で誰にも気づかれる事なくハーフエルフの元へと移動するクロ。ハーフエルフは私と目が合った瞬間夢の中へと落ちてもらった。後はクロに人気の無い場所に移動してもらってから色々と聞き出す。移動の間はクロの魔眼で好きな夢を見てもらう。


 私は、取り敢えず人の波に乗る。適当な所で消えよう。

 何か事件がなかったかを暗部の人達に確認したいところだけど、それをすれば私が何かに気付いて動き出したとヤンさんあたりが察してしまう。動きが制限されるのも困る、ここは慎重に。



 隠密を発動しながら、糸で宙を舞う。

 私を追う視線がない事を確認し、クロの待つ場所へと向かう。



 街の外、小山や木に視覚が遮られる場所でクロと合流する。

 「どう?」

 魔眼を発動し、ハーフエルフを観察しているクロに聞く。

 「リン、どうもおかしいのだ」

 「おかしい?」

 「うむ、何かが邪魔してるのだ」

 「うん? どういうこと」

 魔眼を発動し、夢の中にいるハーフエルフの目を覗き込む。


 …………

 ……


 確かに、おかしい。

 「意識がふたつある様な感じだね」

 「うむ、コイツ自体が操り人形の様な気がするのだ」

 「んー、夢が邪魔だね。術を解こうか」

 「うむ」

 その前に神眼で見るか、いや、この状態はあまり良くない。

 「じゃあ、解こう。クロはもしもの準備をして」

 「うむ?」

 「嫌な感じがするから」

 「うむ」


 ゆくぞ。とクロが言い。術を解く。

 「いい夢を見れたか?」

 覚醒したハーフエルフ。意識をクロに奪われている隙に神眼で記憶を観る。

 「ハ? アテン様!?」

 ハーフエルフの間抜けな声、そして、もうひとつの意識、これは、神樹の破片! ハーフエルフの身体が膨張する!

 「クロ!」

 「うむ!」

 念動力でハーフエルフを用意していた鉄の壁の中へ移動させ、ロックの魔法で空間ごと封印する。


 ズガンッ!

 封印空間の中で爆ぜたのがわかる。なかなかの威力、ロックで封印しなかったらこの辺一帯が吹き飛んでいたかもしれない。

 「二段構えだな」

 「そうだね」

 このハーフエルフが失敗した場合、もろとも、証拠も、消すはずだった対象も全てを吹き飛ばしてしまうという念の入り用。 


 「リン、何かわかったか?」

 「ううん、あのハーフエルフ自体ここ最近の記憶を持っていなかった。どうも本当に操り人形だったみたい。核は神樹の破片の方だったみたいだね」

 「神樹?」

 「うん、ア・族の神樹」

 「ア・族?」

 「うん、、困ったな」

 「むむ?」

 「うーん、まあいいや、取り敢えずカーサの家、魔道具屋に行こうか」

 「むむむ? アイツ蘇生して尋問しない?」

 クロが肉片になったハーフエルフを指す。

 「んー、必要な情報は全部取ったし。欲しい情報は跡形も無くなった神樹の破片の方に入ってたっぽいんだよね」

 「みれた?」

 「見つかったと同時に爆発する設定だったよ」

 「用心深いな」

 「そうだね」


 アテン、か。なんだかなあ。


 与一の弓をアイテムボックスにしまい、魔道具屋へと移動する。


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