23:カーレラ
ローラン王都、魔道具屋。
隠密を発動し魔道具屋の前に立ち、周りを見回す。どうもいつもより監視が増えている。
(何かあったっぽいね)
(うむ、監視員が殺されたとかじゃないか)
(かなあ、うーん、どうしよう)
どうやら、今まで魔道具屋にかかっていた擬似ロックの魔法が解かれている。つまり、普通に扉を開けて中に入れる状態になっているのだ。
(これ取手が動いたらバレるよね)
(うぬ、扉まで開いたらアウトだな)
(だよね)
隠密してるから私達の姿は見えないけど、扉が開いて閉まったら流石に確認しにくると思う。
(入ったらロック掛けちゃう?)
(確認しに来ない可能性もあるのではないか?)
(不可侵だから?)
(うむ、夜まで待つか?)
(いやあ、待てないかな)
扉を開き、中に入る。
「んー、あった、これだね」
擬似ロックの魔道具を発動する。
「リン、わかるのか。神眼?」
「ん、違うけど、クロの魔眼でもわかるんじゃない?」
「むむむ、じーっ!」
クロが魔眼を発動し魔道具とにらめっこを始める。外に人の気配がする。けど何かできるわけでもないし、気にしないで良いか。
店の中を見渡す。
何も無いね。カウンターの奥、そういえばこっちまで入るのは初めてかな。と思いながら中を見るがこちらも何も無い。
「え〜、上かな、いや、下かな。クロ〜行くよ〜」
「じーーーっ!」
「ほら、いつまでも見てないでいくよ」
クロを抱き上げて、階段を降る。
「じーーーーーーっ!」
何故か私をじーっと見てくるクロ。
地下で正解だったようだ。転移の扉と金庫。それに遠隔通信用の水晶の魔道具。
「じゃあ、上はカーサの私室だったのかな」
「乙女の秘密が詰まってそうだな!」
「乙女の秘密って何さ?」
「さあ?」
まあいいけど、さて、どうしようかな。
転移の扉を見てみる。
閉じている。あのハーフエルフの記憶の中には帰りのキーワードは無かった。帰る気が無かった?
いや、重要情報は全て神樹の破片が握っていた。上手くいった場合は何某かの行動をしていたはず。けど、今となっては確かめようも無い。
金庫を見てみる。
「これ、アンロックで開くかな?」
「試してみれみれ」
「アンロック!」
カチャン!
「開いちゃった!」
「うひょー、根こそぎいただくのだー!」
頂かないよ! 中を見るが、特にめぼしいものは無い。そういう意味でのめぼしいものではないと言っておく。
最後は、遠隔通信用の水晶。
「これの起動は、んー、こうかな?」
魔力感知の部分にカーサの魔力の波動を当ててみる。
………………
…………
……
ダメだったかな?
ん、そうでもないっぽい。
ヴ、ヴヴ、と水晶が鳴動しはじめて、
「おやおや、誰かと思えば。しばらく連絡もよこさなかったお嬢さんじゃないか、一体何の用さね?」
繋がったようだ。
「どうも」
「なんだいなんだい、ぶっきら棒な返事さね。最近ご執心の人間の口癖でも移ったのかねえ」
「はあ、おそらくそのご執心の人間です」
「………………どういうことだい?」
「リンと言います。カーサの友達です」
「……そうかい、アタシの名はカーレラさね」
「はあ、カーレラさん、はじめまして」
「ああ、はじめまして。で、カーサは居ないのかい?」
「はい、一月ほど前に故郷から呼び出されたといって、そちらに帰ったと思うのですが」
「そうさね、その予定だったはずさね。残念ながらこちらには帰ってきていないがね」
「どういうことです?」
「それはこちらのセリフさね」
これは、話が噛み合わない。というわけではなく、そういう事なんだろうな。
「私、先ほどア・族のハーフエルフに襲われたんですけど」
「…………ハーフエルフ?」
「はい、」
「ア・族にハーフエルフは居ない筈なんだがねえ」
なんか、普通に疑われてるね。まあそうだよね。
「まあ、信じられないのはやまやまなんですけど、んー、」
「信じないというわけではないがね、まず、アンタが何故この魔道具を使えてるのかを説明して欲しいね」
「えーと、カーサの魔力を真似して起動しました」
「……ハッ! そうかいそうかい! じゃあ何故ハーフエルフがア・族だと分かったんだい?」
「鑑定しました」
「ハハッ! 他にわかってることはあるのかい?」
「はあ、ハーフエルフの体内に神樹の欠片が埋め込まれてました」
「ハア!?」
なんか、ダメみたい。
まあいいか。
「取り敢えずそういう事なんで、失礼します」
「まちな!」
「はい?」
「現状は理解したよ。後はこちらで対処するさね」
「えーと、信じたんですか?」
私なら信じないけど。
「ああ、アンタのようなイカれた人間と出会った事があるからね。嘘を言ってないことは解るさね」
「はあ、そうなんですか」
そんな人いるんだ。
「じゃあ、お願いします」
「ああ、、、、わかってるんだろうね?」
「なにがです?」
「これはエルフ族の問題さね」
「はあ」
「手出し無用だよ」
「はあ」
「……………ハア、そうだったね。アイツもそんなだったよ」
「はあ、じゃあ、失礼しますね」
「ああ、、早急に対処するから、少し待つんだよ」
「はい、では」
通信をきる。
ん? そういえばクロ一言も喋らなかったね。なんで?




