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遊園地の死闘

 ヨットハーバーを出て、ルームを作り直すことになった。

 今度はアリスがルームを作り、マップはもの寂しさが漂うヨットハーバーから一転、明るく賑やかな遊園地となった。


 遊園地は二十名を超える大人数の対戦で使われることを意図して作られたマップで、ゲームの中でも一、二を誇る広さを持っている。

 観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドにお化け屋敷など、どこか本物の遊園地を参考にしたのではと思うほどアトラクションが充実しており、それらが見事本物みたいに動いて見た目にも楽しいことから、同じ広いマップでもこちらは人気が高くバージョンアップも繰り返し行われているものとなっている。


 アリスが持ち掛けたのは、このマップで十対一の真剣勝負を行うこと。


 先にアリスがマサムネを十回キルすればアリスの勝ち。逆に、先にマサムネが一回でもアリスをキルできればマサムネの勝ちだ。

 勝負に勝った者は、敗者に対し何でも一つお願い事ができる。


 かくして、その第一戦目──




 マサムネは二丁拳銃を手に、広大なマップを駆け回る。


 晴れ渡った青空のテクスチャ。所々に雲のオブジェクトが流れ、周囲は楽しげなアトラクションたちが音を立てて動いている。


 ご丁寧なことに、園内にはお客さんがちゃんといて、あちこちをうろちょろと歩き回っている。当たり判定はないから視界以外に何ら行動を阻害されることはない。だけど、こうして銃を持って歩いていると、なんだかちょっと撃ってみたくなってしまうのはFPSをやる人間の共通した心理だろうか。


 もちろん、現実世界では絶対にやらないが。


 建物の陰に隠れながらマサムネは慎重に移動を続ける。先の通り、アリスは遠距離からの狙撃を得意とするスナイパーだ。きっとどこか見通しのきく場所でこちらを待ち構えているに違いない。


 暖房の利いた暖かな部屋で、マサムネは暑さと息苦しさを覚える。だけど、それは何も暖房の利き過ぎだけが理由ではないだろう。


 それに、ただ勝負をするってだけではこうも体調に変化はないはずだ。


 第一戦目が始まって、まだお互いに一言も口にしていない。

 そのことがマサムネにとって、あるいはアリスにとっても日常ならざることであって、それがやはり今の緊張を生んでいるのだと判断できる。


 空気がどんどん硬く凝縮されていく。

 モニターを食い入るように見つめてその姿を探す。

 そしてキーボードのキーを押して、建物の陰から一歩を踏み出した、その瞬間。


 重たい銃声が一つ。


 一人目のマサムネが命を落とした。


「だあっ!」


 マサムネの緊張の糸が切れた。イスにふんぞり返って一度バンザイの格好をする。


「まず一勝め~♪」


 アリスの笑う声がする。


「ちっくしょう……。どっからだよ」


 そう言って、視界をぐるぐる動かしてアリスを探す。すると、ジェットコースターのレールの上で踊るように飛び跳ねるアリスの姿を発見した。




 第二戦目。


 マサムネは先ほど以上に慎重に歩を進める。

 しかし、一戦目のあっけない勝敗にいくらか動揺を抱えていたらしい。


 銃声。


 一戦目の半分の時間も要することなく、二人目のマサムネは散った。


「なあ、このマップ、俺に不利すぎじゃねーか?」


 自由になった視点でアリスを探す。すると今度は、前後に揺れるバイキングのマストの上で彼女を発見した。


「だから十対一なんだよ」


 とアリス。


「狭いところだとそっちに有利すぎるし、ここのこの緊張感が堪らないでしょ?」


 とそれから、


「それに、マサムネも使えばいいんだよ、ライフル」

「俺は……こいつでいいんだ」

「いつもそれだよね。二丁拳銃」

「なんでも懐に飛び込んでいかないと、どうにかできる気がしないんだ」


 マサムネは言う。


「遠くから狙い撃つんでもなく、オートで弾をばら撒くんでもない。ましてや、一発でズドンってのも違う。相手の息遣いまでわかる距離まで近付いて、自分のありったけを込めて打ち込む。そうじゃないと、勝っても勝った気がしないんだ」

「……変わらないね」

「よし、じゃあ三回戦。だいぶわかってきた」

「あれ、ほんとに?」


 アリスがフフッと笑いをこぼして言う。


 マサムネはマウスとキーボードに手を置き直し、第三戦目の始まりを待った。

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