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【物語】竜の巫女 剣の皇子【第一部】  作者: ヤマトミチカ
であい
9/41

【物語】竜の巫女 剣の皇子 9 地図

挿絵(By みてみん)



 私がアーサラードラに向かって歩き出した時、歳は15だった。


 身体もひ弱だったが、何よりも無知であった。

 地図も読めない大バカ。知らないことを知らない大バカ。

 本当に何もかも知らない愚か者だった。

 何かを知っていたら…しばらくあの屋敷を拠点にして冬を越し、山越えの準備を丹念に行った事だろう。

 あの頃の事は、10年を経た今でも思い出したり、夢にも見る。

 今はもう冷や汗をかいて飛び起きる事はないが……今生きているからこその恥と思えるのだと、胸に刻んである。




 僕は寒くなる季節に向け、服をたくさん着て、リュックに食べ物と水をありったけ入れた。毛布も持って行こうとしたけれど、重くてやめた。他には地図とタオルとマッチ、コップ。ブーツはいなくなった監視役のじいさんのものが残っていた。古いブーツでちょっとブカブカだったけど、ないよりはましだ。

 あとはブカブカの帽子を被り、屋敷を出た。


 秋の日差しは柔らかく、少し冷たい風が周りの景色を揺らしていた。

 僕は歩き出した。

 しばらく道なりに進むとふたつの分かれ道があり『ロンテン村』『リーベサラ山』の立て札がそれぞれの道を指し示していた。

 僕は地図を見た。リーベサラ山を越えるとアーサラードラに近いように思えたから、山への道を歩き出した。

 しばらく歩いてみたけれど…どこからが山になるのかもわからず、お腹も空いたので道端に座り、リュックからパンを取り出して食べた。


 そうしていると、僕の行きたい方向から馬が一頭やって来た。僕の知っている馬とは違い耳が長く汚い姿で、その馬にはひとりのじいさんが乗っていた。

「坊主、そんな所で何をしている?」

 じいさんは僕を奇妙な目で眺め、声をかけてきた。

 僕は「リーベサラ山を越えてアーサラードラに行くんです」と答えた。

 それを聞いてじいさんが、ますます変なものを見るように僕を見つめた。

 僕は居心地が悪くなった。

「坊主、冗談を言っているのか知らんが、あれを越えるには儂とロバで2日はかかる。日が暮れる前に、家の手伝いしたほうがましだぞ」

 じいさんは言うと、去って行った。


 僕はなんだか嬉しくなった。2日でアーサラードラに着くことがわかったんだ。食料を2日間持つように計算して、じいさんが来た方向に歩き出した。


 もうすぐ茜色に変わる空が、僕にはとてもきれいに見えた。




(つづく)


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