【物語】竜の巫女 剣の皇子 8 ドア
部屋に閉じ込められていた僕はルチェイと出会い、毎晩話をしてもらうことで元気になった。でも、ある日急に彼女は来なくなった。
また、とても寂しくなった。
監視役のじいさんが心配するくらいの落ち込みようだったらしい。
その暗い気持ちの中、ふと『ルチェイに何かあったのかもしれない』と思い当たった。
僕はたくさん落ち込むのを止めた。また食事をしっかり食べ、室内での運動を再開した。
いつかルチェイを助けるために……でも、どうしたらいいのだろう……。僕は途方に暮れた。
あれは忘れもしない、秋の日のことだ。
「坊主、お前はもう部屋から、ここから出ろ。お前の母親が亡くなった。もうお前はどうなってもいい、自由だ。俺も田舎に帰って自由にやるさ。じゃあな」
監視役のじいさんは僕にそれだけ言うと、さっさといなくなってしまった。
僕は本当に驚いた。部屋のドアにも鍵がかかっていない。
廊下に出て、おそるおそる……玄関のドアを開けた。
外は明るく、まぶしかった。しばらくしてようやく目が慣れてくると、赤や黄、色鮮やかな秋の森の風景が目の前に広がっていた。
自由。
僕は震えた。
外に出てもいいんだ。
自由。
ルチェイに会いに行く事ができる。
母様が天国に行ったことは悲しい。
でもうれしい。
僕はどうしたらいいんだろう。
台所の椅子に腰掛けて僕は考えた。そうして、すべての部屋に何があるかを調べることにした。
地図を見つけ、残った食料を計算して、その残りを少し食べ、着替えをして、その夜は部屋で眠った。
必要な荷物はなんとかそろえることができた。
地図によれば、この小さな屋敷はロゴノダの境にあり、ルチェイの国までも、とても遠い事がわかった。
母様のところにはもう行くことはできない。ごめんなさい。
僕は神様に祈った。母様の事、ルチェイの事……僕の事。
荷物を背負った僕は、巫女の国アーサードラを目指すことにした。
今から歩かないと、雪が降る季節に追いつかれてしまう。僕の脚で行くしかない。
こうして、私の物語は動き出した。
ひとりの天使によって。
(つづく)