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【物語】竜の巫女 剣の皇子【第一部】  作者: ヤマトミチカ
であい
7/41

【物語】竜の巫女 剣の皇子 7 天使



 遠い昔の話。

 暗い部屋の中で、僕は壁に背を向け床に座っていた。


 母様は父様の方が好き。

 父様は僕が嫌いなんだ。

 最後に会った侍女が『お母上様は貴方様をお守りするがためにお離れになるのです。決してお捨てになるのではございません。どうか、おわかりくださいませ』

 僕に話してくれた。

 どのみち、母様はいなくなってしまった。母様からもらった本も、ハンカチも、全部なくなってしまった。楽しくない。眠れない。

 食事は夜が明けたら監視役がパンとスープを持ってくるだけ。

僕に話しかける人はいない。

 もう泣くこともない。

 だんだん眠くなってくる。

 最初は曜日も数えていたけど、いつの間にか忘れた。

 あれからどのくらい時間が過ぎたのか……僕にはわからなくなっていた。

 今にも、これからにも、まったく心が動かない。


 不意に、天井にきれいな光が現れたかと思うと部屋中がまぶしくなった。

 こんなに明るい光を見たのは久しぶりだった僕は、しばらく目を開けることができなかった。


「あなたはなぜ、ここにいるの?」

 とても優しい声がしたから、僕はゆっくり目を開けてみた。

 そこには天使がいた。金髪で綺麗な青い瞳の少女が僕に微笑んでいる。

「君は天使?僕を天国に連れて行ってくれるの?」

 天使に尋ねてみた。

 それを聞いた少女は笑って「ううん、ちがう。私はお散歩していただけ。あなたの声が聞こえたの。だからここに来た」と答えた。

 僕は何と聞こえたのか尋ねてみた。少女は「『僕を見て』って聞こえた」笑顔で言い、手を握ってくれた。

 涙が出た。彼女はそんな僕を抱きしめてくれた。

「君は誰?」僕は泣きながら、切れ切れの声で尋ねた。

「私はルチェイ。かくれんぼが得意なの」

 少女は名を教えてくれた。そして、彼女は僕の名前を聞いてきた。

「ソロフス」

 僕は、本当に久しぶりに、自分の名を口に出した。

「ソロフス、私たち友達になりましょうよ」

「いいの?本当?」

「もちろんよ。うれしい!」

「ありがとう」

 僕は声を出すことも久しぶりだったから本当に嬉しかった。

 こうして、僕はひとりの友達を神様からもらった。


 それから僕は、毎晩ちょっとだけ会いに来てくれるルチェイと話をした。

 日付や、季節のこと、花や動物のこと……彼女の国だけにいる『アカホッペヤマザル』も教えてもらった。本でしか知らなかったアーサラードラの事をいろいろと。

 彼女から尋ねられたが、僕は自分自身がここにいる具体的な理由は分からなかった。ルチェイも「あなたを今助けることはできない。ごめんなさい」と謝られた。

 僕は彼女に「それは気にしないで」と返し、僕自身が今できることをやる、と話した。

 食事も摂り、部屋の中で身体を動かすこともした。

 監視役のじいさんは僕のことを奇妙な目でみたけど、かまうもんか。

 いろんな事を考えて、頭の回転を戻すようにした。

 僕はしつこくも監視役に話しかける事も始めた。監視役は僕が触れることを嫌っていたが、たまに短い返事や、いらない本をくれるようにはなった。

 ルチェイもたまに本を持ってきてくれた。

 そうやって、僕は彼女のおかげで辛抱強くがんばることができた。自分の時間が動き出す感覚を取り戻すことができた。


 だけど半年程たった頃、彼女はパタリと来なくなった。





挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


(つづく)



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