第一話 新入社員のプロローグは〇〇
「歩く人間凶器が来た!」
誰かが叫んだ。
「逃げろーっ!!」
次の瞬間、校舎中が大混乱になる。
生徒たちは一斉に廊下を駆け出し、先生たちは避難誘導を始める。
「だ、だから違うんですってぇぇぇぇ!!」
私は泣きそうになりながら両手を振る。
何もしてない。
……いや。
正確には、ちょっとだけ。
本当に、ほんのちょっとだけカムイを使おうとしただけなのに。
――ゴゴゴゴゴッ!!
「また来るぞ!」
「伏せろー!!」
「なんで毎回こうなるのーーーーー!!」
◇ ◇ ◇
――数日前。
今日は社会人として最初の日。
新品のスーツに身を包み、鏡の前で深呼吸をする。
「よし」
少しだけ緊張している。
でも、それ以上に嬉しかった。
就職活動は決して順調じゃなかった。
面接では緊張してまともに喋れないし、オタク趣味も隠しきれないし、何度「今回はご期待に添えない結果となりました」を見たことか。
それでも諦めずに受け続けて、ようやく決まった一社。
だから採用通知をもらったときは、本当に泣いた。
今日から私は、その会社の新人社員だ。
鏡に映る自分を見る。
肩まで切り揃えた髪。
新品のパンツスーツ。
少しだけ大人っぽい靴。
うん。
ちゃんと新人社員に見える。
……胸以外は。
「……はぁ」
もう少しあればよかったのになぁ。
こればっかりはどうにもならない。
気を取り直して会社へ向かう。
受付を済ませると、すぐに一人の男性が迎えに来た。
「霧島さんですね。課長がお待ちです」
「はい」
応接室へ案内される。
そこにいたのは、五十代くらいの穏やかそうな男性だった。
「初めまして。福山です。課長をしています」
「霧島陽花です。本日からよろしくお願いします!」
「うん。元気があってよろしい」
そう言って課長は立ち上がる。
「じゃあ、職場へ向かおうか」
「はい!」
やっぱり研修室とかかな。
それとも部署の人への挨拶?
少し緊張しながら課長について会社を出る。
そこには黒塗りの大型車が止まっていた。
「こちらへ」
「えっ、車ですか?」
「うん。職場まで少し遠いからね」
そういうものなのかな。
新入社員だからよく分からない。
私は深く考えずに後部座席へ乗り込んだ。
車は街を抜け、山道へ入る。
「あの……工場勤務なんですか?」
「まあ、そんなところかな」
課長はにっこりと笑うだけ。
しばらく走ると、見たことのない検問所が現れる。
制服姿の警備員。
厳重なゲート。
まるで映画みたいだ。
「社員証を」
課長がカードを見せる。
ゲートが開く。
さらに奥へ。
そして――長いトンネルへ入った。
数秒。
いや、一分くらいだっただろうか。
トンネルを抜けた、その瞬間。
私は言葉を失った。
ガラスのように輝く超高層ビル群。
空中を走る乗り物。
空に浮かぶ巨大な広告や鳥居。
どこまでも続く未来都市。
日本じゃない。
少なくとも、私の知っている日本ではない。
「…………え?」
車は何事もなかったように、その街へ入っていく。
私は窓に張りついたまま固まっていた。
課長はそんな私を見て、まるで「今日は雨だね」とでも言うような口調で言った。
「霧島さん」
「……はい」
「ここが君の職場だ」
「…………」
「異世界だけどね」
…………はい?
その一言で、私の社会人生活は、音を立てて予定から外れた。
過去作「神々の世界で学園生活~ライセンスゼロの私が世界最強!?~」のリメイクになります。
なので更新頻度は高めです。
設定なんかはそのままですが展開はかなり変更予定です
そんなわけでよろしくお願いいたします。
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