67話 教都外周街道
砂漠の国へ向かうことにする。ハナコの話では、周囲が山に囲まれ、カトリク教からの街道以外は経路がないとのこと。魔国軍が教都に駐留しているのに、どうやって向かうのじゃ?と聞かれた。
「ノープランだ。教都には外周街道がある。その外周を通り砂漠の国へ向かう。」
『荷馬車に積んでいる銃と大量の弾丸は検閲されるとやっかいじゃぞ?』
「皆で手分けしてSISの異空間保管庫へ収納しよう。」
「アルカは魔王にまで面が割れているから、ハナコが乗せて先に行けないか?」
『んん~大量の魔国軍の飛行部隊がいるからのう。地上より危険やもしれん。』
「多少、時間がかかっても迂回して山を越すのはどうだ?」
『うむ…無理ではないが合流するまで相当時間を要するぞえ?』
「アルカの安全には代えられない。無理を言うが頼めないか?」
『致し方があるまい。任されよ。』
魔王は、俺達が工業特区を襲撃した報告を受けているかもしれないが、アルカとハナコが抜け、人員構成が変われば遭遇しても気付かれないかもしれない。一縷の望みに賭けて教都の外周街道を突破することにした。
「テセウス、迷惑ばかりかけてごめんね。」
「いいんだ。前にも言ったがお前が悪い訳じゃない。だから気にするな。」
「うん…」
『そろそろ出発するかの。』
「うん。ハナコよろしくね。」
『うむ。ワシにかかれば造作もないことじゃ。ゆくぞ。』
ハナコの背に乗りアルカが飛び立った。しばしの別れとなるが問題はない。他に手段を選べないのだから。シロとラミ、リナとレナ、そして俺の5名は検閲を受けた場合、どのように対応するのか、教都に来た目的は何にするのかを話し合った。
クロたちは幻影化を解かずに同行させ、そして俺たちも出立した。
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教都までは馬車で数時間の距離だ。そろそろ魔国兵と遭遇しても不思議ではない。
荷馬車はシロが御者をしている。白いオーガは珍しいので、泥や油などで汚し、新拠点で入手した農民の服を着せた。申し訳ないが下男の設定にしている。乗合馬車はリナが御者をした。所持しているなかで綺麗な服を着てもらい、視線を彼女に誘導する。姉妹は今まで魔国とは関係ない生活を送っていた。どれだけ見られても問題はない。俺はA級冒険者証でゼリウスとして通すつもりだ。ラミとレミは、俺の愛人のふりをしてやり過ごす。荷馬車が空荷になっていると怪しまれるので、物資を荷台へ多めに積載し、大量の袋に黒蜘蛛の足を入れた。
「そろそろ魔国兵と遭遇する。堂々と通り抜けるぞ。」
『「「はい」」』 「はーい」
教都の外壁が見えたころ、整列する大勢の魔国軍が視界に入る。
想像以上の兵数だった。
そして俺たちに気付いた複数の騎乗兵がこちらに向かってきた。
「止まれ!何者だ!」
初動は予めリナが応対することにしている。愛人を連れて旅している冒険者の設定だ。停車してリナが警備兵に応対した。
「私たちはA級冒険者のゼリウス様のパーティーです。教都へ素材の販売と観光に来たのですが、これはどういう状況なのでしょうか?」
「教都へは入場できない。今から検閲を行う。全員、速やかに身分証と氏名、職業を報告しろ!怪しい動きをすれば、即、捕縛する!」
「私はリナ、身分証はありません。職業はゼリウス様の恋人兼従者です。」
「お前の職業は恋人兼従者だと?何を言ってるんだお前は。ふざけているのか?」
「いえ。私はゼリウス様に養って頂いてますので間違いではありません。」
「はぁ?話にならんな。とりあえず馬車の中を確認する。」
魔国兵が中にいる俺たちへ尋問した。
「我々は魔国軍の治安維持部隊だ。今より検閲を行う。各自、身分所と氏名、職業と目的を答えよ。」
「私はレナ、身分証はございません。職業はゼリウス様の専業恋人です。」
レナがそう答えると俺にしなだれかかり、首にキスをする。
「ラミも身分証はないよー。だってゼリウスの恋人だもん。子供を沢山作るのが仕事かな。好きなことさせてくれるし楽チンだよ。」
ラミが俺に抱き着き答える。
「俺はゼリウス、A級冒険者だ。冒険者証を確認しろ。目的は教都での成果物の売却と観光だ。荷馬車の御者は下男だ。荷台の貨物は危険だから触るなよ。」
俺は魔国兵へ威圧的に返答する。
魔国兵が冒険者証を確認して返却する。
「チッ…このハーレム野郎が…」
そして荷馬車へ移動してシロへ尋問した。
「お前は、問題ないな。可哀そうに人間にこき使われているのか、ひどい奴らだ。水浴びもさせてくれないのか?それにしても酷い臭いだな。困ったことがあれば魔国軍まで来い。助けてやる。」
『ありがとうごぜぇますだ。でもアッシは旦那様に助けてもらったでゲス。裏切ることはできねーでゲス』
「そうか…我々と同じく魔族は義理堅いからな。何かあれば魔国軍南部方面の治安維持部隊第二小隊のクスリまで頼れ。何とかしてやる。」
「おい。荷台の貨物を調べる。積載物と用途を報告しろ。」
魔国兵はシロに指示して荷台を調べる。
「うっ…なんだ!この糞尿の臭いは!死体でも運んでいるのか!」
『ヴェノムスパイダーの素材でゲス。珍味として売れるでゲス。』
「バカを言うな!これは食べ物じゃない!強力な毒物だ!お前ら怪しいなテロ集団なのか?詰所まで来い!」
「えぇー兵隊さんはこの珍味を食べないの?美味しいんだけどなー」
ラミが荷馬車へ近寄り魔国兵へ話しかける。そして、おもむろに黒蜘蛛の袋を開け目玉を取り出す。
「貴様! ぐっ…おぇっ… 何し…て…るん…」
くっちゃ、くっちゃ、ぐっちゃ、にちゃぁ~
「美味しいよ?」
「おぇぇぇぇぇぇぇ」
「くせぇぇ」
「うぎゃーー」
魔国兵たちが叫び、一目散に逃げ出した。
「シロも食べる?」
『久しぶりに頂きます。癖になりますね。この味は。』
「お?俺も久しぶりに欲しいな。腹の部分が美味いんだよな。」
三人で黒蜘蛛を堪能する。
口内を暴風のように吹き荒れるこのビリビリ感も癖になるんだよな。
リナとレナが地に伏せ嘔吐している。
ふと振り返ると、逃げたと思った魔国兵が離れた場所におり、俺と目が合った。そして、黒蜘蛛の腹を持って近づき「食うか?」と聞いたが、いやいやと首を振りながら、後ずさりしてどこかへ行った。
「慣れたら美味いんだけどな。まあ、その前に死ぬと思うけど。」
おやつに黒蜘蛛を食して満足した俺たちは、教都の外周街道を再び進み始めた。
そしてシロは農民の下男を演じてたつもりなのだろうが、盗賊の下っ端にしか思えない言葉使いだなと感じながら、馬車に揺られた。
教都の外周南部で検閲を受けて以降は、特に魔国兵も見ず、順調に進んだ。
そして暫く進んだ後、停車して馬たちの休息を兼ね、SISの通話機能でアルカに連絡してみた。
(アルカ聞こえるか?)
(うん。聞こえるよ。凄いねこれ。こんなに離れてても話せるんだね。)
(ああ、大賢者の未知の技術だからな。そっちはどうだ?)
(こっちは飛行中だよ。どこかはわかんない。)
(順調か?)
(うん。順調だと思う。そっちはどうなの?)
(こっちは色々とあったが、今は切り抜けて、もう大丈夫だ。)
(よかった。早く合流したいね。)
(ああ、そうだな。飛行中だし気を付けて進んでくれ。)
(うん。テセウスも気を付けてね。)
外周街道を南から東へと周り、視界に山岳地帯が入る。その山岳地帯の切れ目に砂漠の国へと続く街道があるらしい。自生植物が減少してきた。砂漠が近く降雨量が少ないからだろうか、視界が広がる。山々が途切れ、そして目前には砂漠が広がってきた。
「道が無いな…」
「砂漠だからねー、砂に道は作れないよ」
『主殿、どうしましょうか、道がありませんが…』
「そうだな、うーん、何か方法は…」
「ピンガーを打ちながら進んでSISで確認し、反応が多い方向が街じゃないか?」
『それは良い方法かもしれませんね。
ですが魔国兵にピンガー音を気付かれたら問題が出ませんか?』
「そうだな。だから可能な限り、教都から離れて安全圏まで進んだらピンガーを使おう。当てずっぽうになるが、それまで砂漠の国と推測した方向に進むしかない」
「ラミが〝ぴんがぁ〟を打ちたい!」
「ああいいぞ。クロたちは散開して周囲を警戒してくれ。引き続き幻影化は解かないでくれ。」
『ああ 了解しタ』




