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異世界転移物語〜傍若無人なおっさんの成り上がり〜  作者: ゴディバン
第四章 絶望と救出
55/72

55話 大きな力

 土壁に最後のビット魔法を撃つ。


 「二人とも、準備はいいか?生体反応は1つ。魔物がこのエリアに突撃してきたら俺が500個のビット魔法を撃ち込む。避けられた場合は各自で撃退してくれ。」


 『はい。お任せ下さい。』


 「ラミは強いよ~。ペチンって潰してあげるよ。」


 「じゃあ…。いくぞ。」


 二人に最後の合図を行い、土壁貫通のために100個のビット魔法を撃ち込んだ。


 ドドガァーン!!


 土壁から粉塵が舞い上がり視界が遮られる。俺は素早く【周囲探査】を行い壁先の魔物の反応を伺う。そして500個のビット魔法を詠唱しようとしたのだが。


 「生体反応が動いて…ない?なぜだ?」


 『主殿!敵の反応は?』


 「探査の反応は動いてない。そのまま迎撃体制を解かず警戒を!」


 三人は貫通させた壁穴に対して扇状に陣形を組んでいる。左にシロ。真ん中が俺。そして右にラミがいる。粉塵を見つめながら警戒をする。しかし魔物が突撃してくる気配は無い。穴の大きさは直径3m程もある。通常の魔物なら十分に通れる大きさだった。


 「変だな…。俺が貫通孔の向こう側を見て来る。二人は援護してくれ。」


 『はい』 「うん」


 探査の生体反応から貫通孔の先、十数メートルに1匹の魔物が居るはずだ。それが動かない。これだけの衝撃と炸裂音が発生している。臆病な魔物なら逃げるし、獰猛な魔物なら襲い掛かって来る。動かないと言うのは、瀕死の状態か罠に嵌って動けない状態なのかもしれない。


 少しづつ貫通孔へ近づき、その先を覗いた。


 その先は元の石材のダンジョンだった。転落の場所から1階層下がった状態となるが戻ることが出来た。そして動かない反応の正体は〝七色の魔石〟であった。台座の上に設置され直径20cm程度の大きさであった。だが、なぜ魔石から生体反応を感知したのだろう?俺はもう一度【周囲探索】を行い、他の反応を確認したが、やはり目の前の七色魔石がその反応の正体だった。


 「シロ、ラミ。魔物はいない。こっちに来ても大丈夫だ。」


 俺は二人に声を掛け、そしてその七色魔石を魔道具袋に入れようと触れた瞬間、体内から膨大な魔力が吸い取られる感覚がした。そして魔石が〝ブブブ〟と振動して目の前に半透明の大きなパネルが現れ、メニューと思わしき文字などの情報が表示された。


 『主殿。その綺麗な魔石は何なのでしょうか?』


 「なにその不思議な魔石!」


 「ああ、ちょっと質問は待ってくれ。」


 俺は二人を制止して、七色魔石から頭に流れ込む女性のアナウンスを確認した。


 【魔力充填を確認しました。戦略統合システムを起動します。所有者登録を開始しますのでガイダンスに従い、初期設定を登録して下さい。】


 それはまるでパソコンや産業装置のスタートアップと思われるアナウンスが頭の中に流れ込んできた。俺は、これがこの世界の技術で作られた物では無いことを理解した。〝戦略統合システム〟これは現代の地球で使用される単語なのだから。中世に近いこの異世界ではシステムと言う概念すら無いはずだ。

 そして二人には見えていないと思われるパネルの一部を見つめる。

 何項目かのメニューがある。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

 Strategy Integration System

 ~SIS~

 1.管理者設定

 2.利用者登録

 3.端末登録

 4.起動設定

 5.情報検索

 6.表示設定

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━


 「な!なんやこれは!コンピューターか!」

 「いや、これは魔石…?だしな。まさかダンジョンコアってヤツか?にしては英語で何か書いてるな。」


 「す、すてらてぐい いんてぐらちょん しすてむ?」

 「…何これ?」


 単語が読めなかったが、この先進的な感じがする謎の七色魔石は、今後、大きな武器になると考え初期設定をすることにした。

 最初に「管理者設定」に触れると半透明のパネルに表示された内容が変わり、俺の個人情報が表示された。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

 管理権限者:テセウス

 魔力周波数:426.2212MHz

 保有魔力量:221/4721

 充填済魔力:4500/4500

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━


 【この内容で管理者登録を行いますか? [Yes] [No] 】



 俺の名前、魔力周波数?と魔力量が表示され、確認のポップアップウィンドウが表示された。先ほど大量の魔力が吸い取られた感覚があったが、やはり尋常ではない魔力を奪われていた。少し怖くなり悩んだが[Yes]を押して登録をした。



 【管理者登録後は変更が行えません。実行しますか? [Yes] [No] 】



 再びウィンドウが表示され、再確認をしてきた。

 それも[Yes]を押し登録実行をした。



 【SIS起動開始……ピコン! 利用者及び端末が登録されておりません。】



 今度は、利用者と端末?を登録しろと表示される。

 俺はシロ(実験台)を呼び「利用者設定」を押した。



 【利用者を登録します。識別魔力を登録して下さい。】



 『主殿?何をしているのでしょうか?』


 「ん?何かこの七色魔石は、俺の出身地に存在した装置に似てるから、ちょっと操作しているんだ。ふむふむ。シロ、この魔石に触れてみて。」


 俺はシロを利用者第1号として登録した。シロが魔石(以下SIS)に触れると、またガイダンスが流れた。


【利用者の魔力を登録しました。続いて端末登録を行って下さい。】


 端末が何か分からなかった。「情報検索」を押すとヘルプのようなメニューが表示され、そして「端末って何だろう?」と考えていたらメニューの内容が変わり、説明が表示された。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

 SIS端末使用可能一覧

 ・魔石

 ・付与可能可能な物質

 ・神器

 ・専用加工端末

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━


 「なんだろ…。よく分からんな…。魔石は可能って書いているから、一角兎の魔石で試してみるか。これを端末にするには、どうしたらいいのかな?」


 少し悩み、兎の魔石をSISに触れさせると緑色の腕輪へ変形して、またガイダンスが頭の中に流れてきた。


 【低位魔石を機能限定端末へ変換登録しました。SISとリンク開始します。】


 「スゲぇ、これが情報端末か。よし、シロ、この腕輪を着けてみてくれ。」


 『はい』


 シロが緑色腕輪を取り付けると、サイズが自動で調整され、腕輪の真ん中に透明な水晶に似た部品が現れた。俺は、この水晶に登録者が魔力を流し込む操作部だと考えた。



 【初回起動のため、チュートリアルモードを開始します。この訓練施設のマップデータは初期登録されています。訓練終了条件は、SISの使用方法習得と当該施設からの脱出となります。訓練魔獣の脅威度は「初級」に設定されております。】



 『主殿、変な声が頭に直接流れ込んでくるのですが、この腕輪の効果なのでしょうか?"えすあいえす"が訓練とか言ってます。』


 「恐らく魔力で情報を共有する装置だと思う。ラミ、ちょっとコッチに来い。」


 「え?嫌よ。実験台になるの気持ち悪い。」


 「大丈夫だから、ちょっと来い!」


 ラミがブツブツ文句を言いながら、SISに近づいてきた。そして利用者登録をして、もう一つの魔石を端末登録して腕輪をラミに取り付けた。


 「きゃっ。何か聞こえる!なに?"えすあいえす"の"りんく"を開始する?何これ?」


 「二人とも目の前にパネルは表示されてるか?」


 『ぱねる?とは何でしょうか?』


 「えっと、半透明の板が目の前に浮いてないか?」


 『??』


 「何かの設定がまだ必要なのか。ちょっと調べるから待ってくれ。」


 俺は「情報検索」から端末の「表示設定」を色々と変更した。その度に二人が「ぎゃーぎゃー」騒ぐのだが、まるっと無視をしてSISの使用方法を調べた。


 すると仕組みについて様々な事が分かった。この七色魔石は、SISとしての構成装置の一部であり、他の七色魔石が起動していないため、現在はスタンドアロンで動作している。SIS同士をリンクさせて大規模な情報共有を行うことで、このシステムは大きな効果を発揮するそうだ。つまり国家が使用する大規模情報共有システムに近いのか。


 たとえば、高高度から視認した地形情報を端末が魔力を通じてSISに随時送信する。索敵している部隊が敵を発見すると、端末は自動でSISへ敵座標を送信する。SISは地形情報に敵位置をマッピングして、全部隊の端末へその情報を送信し、部隊は敵位置情報などを共有する。つまり【周囲探索】の結果を皆で共有出来るって事か。

 あとは、端末同士での相互通話や、SISからの一斉送話など、他に多くの機能を搭載している。


 そしてメニューの「起動設定」→「SIS装着」に触れると、七色の腕輪に変形した。「表示設定」→「SIS装着色」→「赤」へと変更すると、腕輪が赤色になった。


 「うん。これでいいか。七色の腕輪だと目立つしな。」


 「表示設定」→「端末ウィンドウ」を「非表示」から「表示」へと変更する。


 『ぬおっ!!』


 「んぎゃぼ!!」


 二人から奇声が聞こえてきた。眼前にパネルが表示されたのだろう。


 「表示設定」→「表示位置」→「右上」に変更してみた。うむ。視界への影響が少なくなった。


 『あ、主殿。面妖な板が現れたのですが…』


 「ああ、それがパネルだ。表示されている字は読めるか?」


 『はい。』


 「地図は表示されているか?」


 『はい。これはダンジョンの地図なのでしょうか?』


 「恐らくな。ここは訓練施設ってガイダンスで言ってたからな。しかもこの世界じゃない技術で築かれた場所だ。多分…俺と同じ世界からの転移者と思う。」


 『そ、そうなのですか。』


 「ああ、俺はコイツの操作方法が何となく分かる。元の世界にあった装置の仕組みに似ているからな。」


 これでダンジョンから脱出が可能になった。訓練施設とSISは言っていたので、出口は必ずあるだろう。少し気になったのは「訓練魔獣の脅威度は初級に設定」と聞いたことだった。生息していた「ホーンラビット」や「シャドーウルフ」などは強かった。「レッドドラゴン」に至っては、今でも勝てる気がしない。これは年月が経ち、弱者が淘汰された結果なのか、SIS制作者の環境がこのレベルなのかは不明だ。だが、出会う全ての魔物を倒す必要は無い。SISは戦略的撤退をも含むシステムだ。問題は無い。俺達は出口に向かって行動を開始した。


 SISの地図で階層を確認した。現在は地下4階だった。地上の洞窟から落ち、ダンジョンの回廊からも落ちた。それぞれ天井が高かったので4フロア分を落下したのだろう。


 SISが保管されていた部屋を出て、俺は【周囲探査】を行った。生体反応を感じる。その反応に連動してSISにマッピングされる。なんと反応した種族まで表示されるようになった。これは便利だ。「ホーンラビット」に「シャドーウルフ」「ストーンゴーレム」「アシッドスライム」「フェザースネーク」反応を探知したのは、この5種類だった。


 「探査をしたけど、魔物情報がマップ表示されているか?」


 『はい。表示されております。非常に便利ですね。』


 「ふえぇ~。凄く便利ね。」


 早速、ホーンラビットと対峙する。だが、蜘蛛地獄でパワーアップした俺達の敵ではなく、瞬殺して魔石を拾い集めた。


 「探査に反応しないシャドーウルフに苦労したけど、SISだとマップ表示されるんだな。コイツらを従魔に出来ないかな?便利だと思うんだけど。」


 『どうでしょうか?シャドーウルフは知能が低く感じるのですが…。従魔に応えられるでしょうか?』


 「駄目だったら倒せばいいじゃん。」


 「まあ、そうだな。たしか狼の弱点は光属性だったな。光の攻撃…光の攻撃…光か。あの失敗したレーザー魔法って使えるかな…。」


 俺は、あの"スポットライト"になるレーザー魔法に馬鹿ほどの魔力を込めてダンジョン壁に放ってみた。


「#強き光よ集約し発光せよ:レーザー」


 すると放水車の水流にも似た白い光線が放たれ、ダンジョンの壁面を真っ赤にして溶かしてしまった。溶けた石材は溶岩のように飛び散り、俺達に跳ね返ってきた。


 「んぎゃ、あっつい!! テセウス、何するのよ!!」


 「ご、ごめん。まさかこんなに威力があるとは思ってなかった。」


 心力と魔力の増加により、以前は照明程度だったレーザー魔法が極限の熱量を持つ光線に変化していた。そして魔力残量を確認すると


 【魔力:171/4721】SISの起動に魔力を吸い取られ、心許ない残量となっていた。


 『あ、主殿。恐ろしい魔法を放ちますね…。これを受けて生き残るシャドーウルフは居ないでしょう。』


 この魔法があれば最悪は倒すことは可能だ。だが俺は言語チートを持っているので根気よく話し掛けて従魔交渉をしてみる。ホワイトウルフのポチでも言葉は通じたのだから大丈夫だろう。もし無理なら潔く諦めるとしよう。


 「お、アッチに…。ん!? シャドーウルフの中に1匹、ファントムウルフって種族がいるな。親玉かな?コイツと交渉をするから向かうぞ!」


 数百メートル先にシャドーウルフ×9匹とファントムウルフ×1匹の群れを確認した。俺はそいつらと交渉するため、まず巨大なライトボールをヤツらの目前に出現させて力量をアピールした。


 「おい。そこのファントムウルフ。俺の言葉を理解しているのだろ?」


 『ナンダ キサマハ ワレラノ エサニナレ』


 「ふーん。話す気が無いってことか…。」


 俺はさらに巨大なライトボールを2個出現させ、多方面からの光により透過を屈折させて彼らを微かに視認出来るようにした。そしてレーザー魔法を足元に放ち、彼らを威嚇した。


(魔力:106/4721 撃ててあと2発か…)


 「これでも話す気が無いのか?」


 『コ、コノ ヒカリハ ナンダ ワレラヲ ドウスル ツモリダ』


 「まあ、聞け。お前らを倒す事は簡単だ。この力を見ただろう? だが、今はお前らを殺すつもりはない。俺の提案を聞いてくれればな。」


 『ナンダ?』


 「従魔になれ。それだけだ。」


 『コトワル』


 「そうか、じゃあ消えてくれ。」


 俺はファントムウルフの足元にレーザーを1発、撃ち付けた。

 (魔力:56/4721 あと1発か…)


 「これが最後の警告だ。従魔になれ。」


 『コトワル。ワレラハ カゲノイチゾク ジュウマニハ ナラン』


 「ならばお前達一族の全てを探し出し、根こそぎ倒して回るとしよう。お前のその決断が一族を絶滅に追い込んだんだ。地獄に行って誇るがいい。どこに隠れても無駄だ。俺はこの壁すら溶かしてお前達を探し出し、そして消滅させてやろう。」


 俺は最後の賭けに出た。そしてレーザー魔法を壁面に撃ち、石材を溶かして余力をアピールする。

 (魔力:6/4721 ヤバイ…反撃されたら逃げるか…)


『クッ… ワレラニ ナニヲサセル ツモリダ』


「影になれ。そして俺の暗部として行動しろ。さすれば一族の繁栄を保証してやる。」


『ジュウマハ ワタシダケニ シテクレ。 カレラハ ワタシニシタガウ ダカラ ケイヤクハ フヨウダ』


「分かった。それでいい。」


 俺はギリギリの交渉で勝った。ファントムウルフを従魔するため名付けをする。

 彼の名前は〝クロ〟にした。


 従属紋がトリプルになる。契約が成立した。そしてクロとの会話が多少スムーズになった。


 「これから宜しくな。」


 『ああ コチラこそ 一族ヲ たのむ』


 「お前もSISの登録をする。幻影から実体化は出来るのか?」


 『可能ダ』


 クロが幻影を解いた。その姿は大型獣ぐらいで大きな黒狼そのものだった。


 「この赤い腕輪に触れてくれ。クロの魔力を登録する。」


 『ワカッタ』


 クロが前足の肉球で腕輪に触れる。〝ぷにっ〟とした感触がした。


 「シロとラミも従魔のパスで会話は出来るようになっただろ?」


 『はい。言葉が理解出来ます。クロ殿、私はテセウス様の従魔、エンシャントオーガのシロと申します。』


 「ワタシはジャバウォックのラミよ。ワンちゃん。」


 ラミは獣化して巨大なドラゴン形態になった。恐らく力量を見せつけるためなのだろう。大人げない。


 「ア…、ア…、アア ヨロシク 二人トモ」


 そして情報端末を魔石から変換させようと考えたのだが…。


 「なあ、クロ。お前が腕輪を着けて幻影化すると、腕輪が走ってるようになる…のか?」


 『ソウナル 首輪ナラ 体毛ニ 隠れて見えなくナル』


 魔石を端末登録して、クロの首に着けてみる。見事にサイズが大きくなってピタリと装着された。そして、シャドーウルフ達の表示が〝enemy〟から〝ally〟に変わっていた。SISが味方と識別したのだろう。


 「えねまい…?が敵か、ありりい?が味方なのか。読めないな…」


 もっと英語を勉強すればよかったと思った。

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■□■□異世界転移で魔王になったよ。~極悪非道な物語~□■□■
サブのこちらも良ければお読みください。
こちらは軽いテンポと設定で進みます。
徐々に本作とサブが関連します。
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