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異世界転移物語〜傍若無人なおっさんの成り上がり〜  作者: ゴディバン
第二章 文化と社会
25/72

25話 討伐と金策

 日の出と共に目が覚める。この世界に来てから習慣となった。


「あー、よく寝た。ベッドだと快眠だな。」


 若返り効果なのか、ベッドのお陰かのか濁声(だみごえ)が出なくなっていた。


 今日は朝からクエストを受けられる。しっかりと稼いで生活用品などを買いたい。今日の宿代も必要だ。自然と気合が入る。


「シロ、おはよう。」


『主殿 おはようございます。』


 シロは既に起きていた。俺達は朝食を食べるため食堂へと降りた。朝食は黒パンと野菜のスープとサラダだった。昨夜の同じ野菜のスープのようだ。黒パンは驚くほど硬かった。周囲を見る。数組の宿泊者がいるようだ。皆はスープに浸して食べている。


 あぁ…直接食べるのじゃ無いのか。ちょっとビックリした。


 パンとスープのお替りをして食事を終える。荷物らしいものは特にないので、そのまま宿を出る。「今日もまた泊まる」とだけ獣人の若い女性に伝えて冒険者ギルドへ出発した。


 途中で7の鐘が鳴り、冒険者ギルドは開業しているのか気になったが大丈夫だった。中に入ると冒険者は沢山居た。人間と獣人ばかりだった。皆の装備が気になり少しギルド内を見渡す。ハーフメイルに長剣、フルプレートに両手剣、チェーンメイルに短剣。他の冒険者の装備は皆整っている。


 俺はボロボロのシャツにジーンズと石斧の装備。シロは貫頭衣。周囲の冒険者から嘲笑が聞こえる。石と木の斧なんて誰も持ってない。


 神器と言っても、誰も信じないだろう。原始人のような装備と浮浪者のような衣類だからな。E級のクエストボードに向かおうとした時、金髪碧眼の人間の女性に声を掛けられた。


「ちょっと、そこのアナタ!」


「なんだ?」


「何ですのその装備と服装は。ここは命を懸けて依頼を受ける人が集まる冒険者ギルドですのよ?」


「それがどうしたんだ?」


「はぁ?アナタ本気言ってるの?そんな石と木で作ったゴミを持って、依頼を受けるおつもり?」


「ん? ところでお前は誰だ?」


「私はC級冒険者のカミラよ!アナタのような間抜けな冒険者は死ぬ前にさっさと帰ることね!」


「あん?俺に構うな。向こういけ!ホレ シッシッ!」


「まあ、何て無礼な男なの!無謀な新人冒険者に忠告してあげてるのに。」


「うるさい! ブス! 向こういけ!!」


「キィィーー!! アナタなんてオークに食べられてしまえばいいんですわ!」


 C級冒険者のカミラと呼ばれる人間の女性に絡まれた。非常に面倒だった。

 見た目は金髪碧眼で長身、スラっとして麗しかったがムカついた。「ブス」と言ってやったらスッキリした。カミラと言う女冒険者が向こうに行ったので、やっとE級のクエストボードを確認出来た。


 チラッとC級のクエストボードを見ると、報酬が桁違いだった。


 階級を上げて上位のクエストを受託したいが、昇級の条件は小冊子に記載がなかった。昇級査定の条件は不明だが、クエスト実績であることは間違い無いと思っている。


「シロ、これなんてどうだ?」


 ━━━━━討伐依頼━━━━━

 階級:E級

 内容:スライムの討伐

 地域:南部の森

 条件:特になし

 期限:常時

 報酬:1匹 銀貨1枚

 備考:

 依頼表不要 

 冒険者証により討伐確認

 ━━━━━━━━━━━━━━


『主殿、これならば問題なく対応できます。』


「よし、今日はスライム潰しに行くか。」


 俺達は早速、南部の森へ向かった。移動時間が勿体ないので少し急ぎ道中を進む。1時間ほどで森に到着した。


「シロ、俺は【周囲探索】でスライムの反応を調べる。そのため一度スライムを直接見て認識しないとダメなんだ。魔力波を認識するためにな。一人でスライムの討伐は大丈夫か?」


『主殿、素晴らしい能力ですね!私は大丈夫です。』


「いや… うん…」


(他の冒険者や狩人は、もっと種別認識出来るんだろうけどな…)


「と、取り敢えず二手に分かれるか。」


『はい、お気をつけて』


 俺はスライムを探して歩き出した。するとこの森には沢山生息してるのか、すぐに数匹を発見した。スライムを見ながら【周囲探索】を念じる。生体反応の情報が頭に流れ込んでくる。スライムのみ個別に識別出来る。兎は個別認識には含まれて無かった。


 ふと思い、今度は兎も意識して【周囲探索】を行う。すると兎だけしか識別出来なかった。単種にしか使えないことにショックを受ける。


 やはり俺の能力はこの程度なのかと納得してしまう。「見たことがある生物の探索」を複数表示するカテゴライズ認識は使えず、単種でしか使えなかった…。


 スライムを意識して再探索をすると20匹ほどの反応を識別出来た。俺はその反応を頼りに近付き討伐する。全部で15匹ほどを倒す事が出来たが、5匹は見つからなかった。


 まだ時間があるので少し稼ごうと思い、俺は再探索をした。今度は密集しているスライムの反応があった。


 密集しているという状況に違和感を覚えたので、その反応が有った場所に向かうことにした。


 少し走って近付いた時、その先から声が聞こえた。


「キャーーー」


 声のする方へ走った。すると10mほどの巨大なスライムが、今朝の女性冒険者カミラを飲み込む瞬間だった。


「マズイ!」


 俺は巨大スライムと戦うため駆けつける。スライムの体液は強酸性。皮膚に接触すると炎症を起こし溶解する。俺が神の島で体験したことだ。早く助けないと命に関わる。しかし、巨大スライムのゼリー質は肉厚があり、核を直接この石斧では叩けない。


 この神器の性能〝破壊不可属性〟と〝攻撃力増大〟を信じて、石斧を核に向けて全力で投げた。


 ヒュン ヒュン ヒュン…


 ズガァン!!!


 石斧はいとも簡単に巨大スライムを核ごと貫いた。核の失った巨大スライムは体躯を維持できずに液状化する。すると冒険者カミラが液状化した巨大スライムの体内から流れ出てきた。彼女は気を失っている。


 スライムの体液が付着したままだと炎症が進んでしまう。しかし俺は回復薬や水などは持っていない。リュックから拾った服を取り出し、せめて顔だけでも炎症を防ごうとスライムの体液を拭くことにした。


 しかし、彼女はスライムの体液でベトベトになり気持ち悪かった。しかも付着した体液が生臭くて非常に不快だ。と言うか凄くクサイ。俺は鼻をつまみながら、その服で彼女の顔を拭いた。


 拭き終えた服を見て「汚いなぁ…もう使えない。」と思い、その服を諦めてその場に投げ捨てた。


 すると彼女が目を覚ました。


「うぅぅ…」


「おい、大丈夫か?」


「えぇ… アナタが助けてくれたの?」


「ああ、もう大丈夫だ。」


「では、アナタがキングスライムを倒したのね。」


「ああ、そうだ。」


「そう… アナタ階級は?」


「F級だ。お前は一人でクエストを受けたのか?仲間はどうした?」


「私は強いから一人で十分なの。だから仲間はいないわ。」


「だけど、お前は死にそうになってたぞ。」


「それは違うわ、そう、これはなの作戦よ。今回のキングスライム討伐クエストの報酬は全て私が頂くわ。これは小金貨100枚のC級クエストなのよ。」 


「はぁ??」


「アナタはF級よ。このクエストへの参加資格は無いわ。しかも私の許可を得ずに勝手に攻撃したわね。私はアナタに成果を横取りされたのよ。勿論、ギルドにも異議を申し立てるわ。」


「なに!? お前が死にそうだから助けたのに何てがめついヤツだ!」


「私は死にそうになんてなってないわ。アナタが"勝手に判断"しただけ。しかも参加資格が無いのに攻撃したわね。」


「もうええわ!好きにしろや!」


 俺は余りにも驚いて、どうでも良くなった。命を助けたのに悪いことをしたと言われたのである。今日は切り上げてシロを探し街に戻る事にした。腹が立ったので街までの道中、シロに沢山愚痴を言った。街に着き、冒険者ギルドの納品カウンターに向かった。納品職員に冒険者証を2人分渡した。


「討伐依頼の確認をたのむ。」


「はい、少しお待ちください。」


 納品職員が冒険者証を装置で確認しているようだ。すると奥に行き、初老の男と何かを相談しているようだった。


 納品職員がその初老の男を連れて戻ってきた。


「君、少しいいかね?」


「なんだ?」


「向こうで少し話を聞かせてくれないか?」


 俺は納品カウンターの横にある会議室へ呼ばれた。納品職員はカウンターに戻る。初老の男と俺とシロの3人になった。


「テセウス、君の討伐したキングスライムについて聞かせてくれないかのう?」


「ああ、南部の森でE級のスライム討伐クエストをしてたら悲鳴が聞こえたんだ。そこに向かったらカミラと言う冒険者がキングスライムに飲み込まれる瞬間だった。だから、俺がそのキングスライムを倒して救出したんだ。」


「ふむ。なるほどのう。」


「そしたらソイツが「勝手に倒した」「報酬は全部私の物」だって騒ぎ出したんだ「ギルドに異議を申し立てる」って。「お前はF級だ。討伐資格は無い」ってな。」


「うむ、状況は把握した。先ほどカミラから「獲物を横取りされた」って言ってきてのう。話を聞いて別室で待機させておるのじゃよ。暫し待ってくれんかのう?」


「ああ、わかった。」


 初老の男性は部屋を出ていった。暫くするとカミラを連れ会議室に戻ってきた。


「アンタ、討伐報酬は全額私に渡しなさい!」


「カミラ、待つんじゃ。今から当事者を交えて話すからのう。ギルドとして討伐報酬はテセウスに全額支払う。ただし討伐実績は付かないがの。カミラは依頼未達の罰金は無しじゃ。報酬の分け前は二人で話し合うことじゃな。」


「俺はそれでいい」


「当然じゃない!早く報酬を私に渡しなさい!」


「テセウスはスライム15匹とキングスライム1匹で小金貨100枚と銀貨15枚じゃ。シロはスライム20匹で銀貨20枚かの。」


 俺は初老の男性から報酬の入った小袋を受け取った。


「この部屋はそのまま使って構わん。あとは二人で話し合うのじゃ。」


 そう言って初老の男性は部屋を出て行った。


「シロ、宿に行こうか。途中で道具屋にでも寄るぞ。」


「アンタ、まだ話は終わってないわよ!早くその小袋を渡しなさい!」


「一つ、お前に言っておく。好きにしろとは言った。それはギルドに訴えるのを自由にして構わないって意味だ。報酬の件は別だ。俺に権利が有るなら俺の物だ。」


「アンタは私の許可なく標的を奪ったじゃない!横取りよ!報酬受け取りの権利は私にあるわ!」


「はぁぁ… お前マジでウザいな。じゃあハッキリと言ってやる。キングスライムの体内に取り込まれたお前は、どうやって核を潰すんだ? 強酸で粘度が高い液体の中を泳ぐのか? 仮に泳げたとしてお前は目を開けられるのか? お前の目玉は強酸にも耐えるのか?」


「私は強いわ!そんなことは何とでもなるのよ!」


「何とでもなるって具体的にどう行動するんだ? 言ってみろ。」


「お、泳ぐのよ。泳いで核を潰すのよ!」


「泳げるのか? あとお前の目玉は強酸に耐えるのか?」


「え、ええ、泳げるわよ。私は〝才能〟でムニャムニャを持ってるわ。だから泳げるし、核も潰せるのよ!」


「は?? 何て?? 聞こえんな! もう一度言え。」


 何の才能か聞こえなかったので、カミラの側に行き顔を近付けた。


「ちょ、ちょっと近いわよ!」


「ハッキリと聞こえないから聞こえる距離まで来てやった。ホレ、もう一度その才能とやらを言ってみろ。」


「…ムニャムニャ…よ!」


「なぁぁにぃぃ? きーこーえーんーなぁー?」


 カミラの頭を掴んで動けないようにし、彼女の唇の前まで耳を持って行った。スライムの生臭さと良い匂いが少しした。彼女は顔を真っ赤にして叫んだ。


「だから!……ムニャ…よ!」


「あん??【ムニャ】って何?何の才能?」


「もういいじゃない!報酬を頂戴!このままだと、今夜はご飯も寝るところも無いのよ!」


「ははぁん…、そう言うことか。ほんの少しなら金を分けてやってもいいけどな…。」


「し、仕方がないわね。今日はそれで我慢してあげる。でもその報酬は全て私のものよ!」


「ただし、報酬を分けるのには条件がある」


「な、なによ!」


「命を助けたうえに金まで分けるんだ。しかも俺に喧嘩を売った。金が欲しけりゃ、俺に従え!」


「はぁ?アンタ何様?」


「あっそ。じゃあ、いいや」


 俺は席を立ちシロと部屋を出た。冒険者ギルドを出て、職人街の道具屋へ向かっていると後ろから何かが聞こえた


「ちょっと、アンタ、無視しないでよ!」


「なんだ?」


「少しでいいから、報酬を渡しなさいよ!」


「なぜだ?」


「さっき分けるって言ったじゃない!」


「それは俺に完全服従するって条件があっての話だろ。」


「はぁ?さっきよりハードルが上がってるじゃない!」


「さよか、俺は別に何でもいい。嫌なら消えろ。ウザイ。」


「わ、わかった…わよ…。もうお腹がすいて限界なのよ…」


「あ、そう。でも、とりあえず先に道具屋に行くから。」


 俺達は職人街の道具屋に向かった。ウザい同行者を連れて。



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■□■□異世界転移で魔王になったよ。~極悪非道な物語~□■□■
サブのこちらも良ければお読みください。
こちらは軽いテンポと設定で進みます。
徐々に本作とサブが関連します。
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