18話 シロとの合流そして
ケンタウロスを言い負かした俺は少し強気でお願いをしてみた。
「おい。馬人間。神殿に行く前に仲間と合流するから先にそこへ行く。」
『なっ!貴様!神の眷属 不死身のケイロンに向かって馬人間とは何たる無礼!!』
「え?お前って不死身なのか?でも毒矢で膝狙ったら苦しみから逃れるのに不死身を捨てて自殺しそうだな。」
『お前は何と恐ろしい事を考えるのじゃ!変な事を言うでない!』
「いや、なんか突然、頭に浮かんだんだ。なんでだろ??この方法でコイツは殺せるって。」
『………ぃゃ…』
声にならない言葉が聞こえた気がしたが、この不思議な思考が気になった。ケイロンが不死身と聞いて、突然頭の中に浮かんだのだ。神の悪戯か自身の能力かは定かではないのだが、偶然でなければチート級の能力だろう。
「なあ、もう一人の仲間がこの先の小川で待ってる。俺らを背中に乗せて走ることってできないのか?」
『貴様は…本当に無礼な奴じゃな。神の眷属に跨るだと!そもそも我は貴様らを神殿まで案…』
「毒の矢膝抜き…」
『クッ… 今回だけじゃ!時間が勿体ないからな! 我も忙しいのじゃ!』
「あっそう」
『この馬人間に乗っていいんでしゅか?楽ちんでしゅ。ワイの念話が聞こえるのでしゅね。さすが神の馬でしゅね。』
『獣ごときが我を愚弄するでない!』
「キャリーバッグは人面駄馬の背中に括り付けるか。ポチ、乗れるか?」
『大丈夫でしゅ。落ちそうになったらコイツの頭でも噛みましゅ。』
ケイロンから威厳が感じられなくなった俺達は好き放題言うようになった。だが、本当に彼は神の眷属であり、賢者でもある。そして俺達を背中に乗せて浅部の拠点へ走り出した。
「おい。馬。色々と聞きたい事がある。真面目に答えてくれれば、お前を神の眷属と認め、また賢者としても認めよう。だが、適当な事を言うようなら、お前は馬人間として扱ってやる。」
『クッ…なぜ貴様はそんなに偉そうなのじゃ。』
「そんな細かいことはいいから。」
「まず、この島って何なんだ?神が眠るってことは墓なのか?」
『いや、眠ると言っても神に死は存在しない
睡眠をなされることもない
神殿に住まわれてる訳でもない
我々の理を超えた世界そのもが神である
神殿は神と接触を行える場所と考えても差し支えなかろう。
それがこの島の存在理由であり
神殿は神そのものである』
「はぁ…つまり神さんは不死の不眠不休で超越した神殿??」
「早い話が神殿で神さんと話せるってことなんだろ?」
『…ああ、…まぁ、その認識で構わん』
俺は簡単にしか理解できなかったが、神様と話せる可能性を感じて少し気が楽になった。この世界のことを何も知らない俺はケイロンに様々な質問を行った。
この世界は「メルベン」と呼ばれている。
現代に置き換えると地球と言ってるようなものだ。
人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔物、魔族などが存在するらしい。
魔物と魔族は言い方と一部種族は外見が似ているだけで、全く異なった存在のようだ。
しかも魔物と魔族と言うのはカテゴリー上の表現で、実際は様々な種族が存在するとのこと。
レベルやステータスの事を聞いてみた。
魔族は階位(色位)と言う概念で血統によるレベルが存在するらしい。
魔物には階位が存在しない。種族差による強弱はあるが、同族間では生まれたときに多少強さ変動する程度のようだ。
人族(人間、獣人、エルフ、ドワーフ)はレベルの概念が存在するようだ。
ステータスは人間族が開発した魔道具や魔法、才能で見ることが可能らしい。
俺が所有していると考えられるチートは〝言語理解〟ぐらいか。
他にも有れば助かるのだが、今は調べようがない。ステータスの確認が楽しみだ。
神の恩恵はチートに入るのかなどと考えている間に浅部の拠点近くまで進んでいた。
「おい、馬。色々と参考にはなった。少しお前に対する認識を改めてやる。神の眷属と言うだけの知識はあるな。あとでまた聞かせてくれ。ケイロン。」
『フッ…我の階位が偉大なる神々に近いことを理解したのじゃな。』
少しイラつくケイロンの喋り方を聞き流しながら、表層の拠点へ向かう。
そして、シロが寝床の木の近くで塩作りをしているのが見えた。
「お~い、シロ! 戻ったぞ!」
『はっ! あれはケンタウロス! 主殿は彼を従属なされたのでしょうか?』
『白いオーガよ。失礼な事を抜かすでない。我は神の眷属にして賢者。ケンタウロスのケイロンであるぞ!』
『ケンタウロスの上位種… 失礼しました。私は人間の主である山田殿と従魔契約を結んでいるオーガ族のシロと申します。』
『やーまん? あぁ、人間の子か』
『主ぃ、踊りだしそうな名前でしゅね!』
「おい! 馬! 名前が違う!」
『…コホン。ふむ、オーガの変異種とは珍しいものじゃ。白い身体は我の記憶には無いな。ありえぬが光の適正を得ているのやもしれん。白いオーガよ、ヌシは知っておると思うが魔族の階位は身体の色で表される。』
第1階位は黒
第2階位は緑
第3階位は紫
第4階位は橙
そして最上位種となる
第5階位は「赤」「青」「黄」のいずれかとなるのじゃ
『これは3原色に近いほど魔の力が強くなるためじゃ。だが、白に階位には存在せん。遙か昔に愚かな魔族が最上位の魔族を混成させよった。しかし現れたのは第1階位つまり黒の魔族じゃった。
「赤」「青」「黄」を混ぜても「黒」になる。これが血色の原則じゃ。
しかしヌシは白の魔族じゃ。もしや、光に適正を持つ第5階位の間で子を成すと
生まれて来る子は存在しない第6階位となる白になるやもしれん。
ヌシの両親の階色はどうなのじゃ?』
『はい。父は青、母は赤、先祖に黄の階位が存在したと聞いております。』
「ふむ… やはり、ヌシの力量は如何ほどか?」
『同族の第3階位の紫には勝てません…』
『ん? 両親の階位を踏まえても、ヌシは最低でも第3階位の紫ではないのか? 一体、どういうことなのじゃ?』
『……。集落では血色の原則に合致しない。つまり両親の子では無いと言われ、同族から蔑まれ侮蔑の対象となり、両親が亡くなってからは暴力を受ける日々でありました。
父方の青一族は代々集落の長を務めており、希少とされる第5階位の魔族でした。
母は、赤一族で他の集落から嫁いだと聞いております。
私は長になることを狙っていた、紫一族と緑一族に集団で攻撃され、集落を追放されました。
そして倒れていたときに山田殿に助けて頂き、従魔の契約を結び現在に至ります。』
『なるほど、ヌシの階色は新たな第6階位かもしれんし、そうでないのやもしれん。今は分からぬが、いつか自ずと理解出来る日が来よう。』
『はい。ありがとうございます。山田殿と出会った時は復讐が全てでしたが、今は生きることに精一杯で充実しております。復讐を諦めた訳ではありませんが、山田殿とポチ殿と暮らす日々が大事だと思えるようになりました。』
『シロ、辛かったら大先輩のワイになんでも相談するんでしゅよ…』
「そうだな、シロ、俺達は運命共同体だ。」
『はい!ありがとうございます!』
シロが身の上を語り、今までの苦労が伺えた。復讐に関しては何とかしてやりたい。
魔族の階位をケイロンから詳しく聞き、今の俺達では復讐は困難だろうと思った。
階色が階位を表しているなんて便利だなぁ、などと考えたのだが、魔族と戦ったことのない俺は、脅威度の参考程度にしかならないと深く気にしなかった。
「おい、シロ、遺跡の事をケイロンから色々聞いた。まず遺跡は…」
「なんだっけ?? クモのス神か何かの神殿なんだ。」
『なんがボロボロのきったない神殿でしゅね~』
『蜘蛛の巣 神?ですか?昆虫の神様なのでしょうか?』
『貴様! クロノス様を侮辱するつもりか!』
「あ、ごめ、そのクロノス神の神殿なんや」
『こんのぉぉ!貴様ぁ!ちゃんとクロノス様に謝らぬか!』
「うん?すまんな。」
『……貴様というヤツは』
「それで不死で不眠不休なホームレスな神様は神殿らしいぞ」
『やっぱり汚い神様でしゅね~』
『はぁ…不眠不休でホームレスをなさってる神様…が実は神殿…なのですか?』
『貴様…ワザと言ってるじゃろ!』
「はぁ~? 何が? さっきその認識であってるって言ってたじゃねーか。」
ケイロンを揶揄し満足した俺は早速神殿に向かうことにした。
「ま、冗談はさておき、今からその神殿に向かう。シロは足早いのか?」
『はい、体力と足力には自信がございます。』
「じゃあシロは走れ。おい、ケイロン、またお前の背に乗るぞ。次は神殿に向かう。その方が断然早いからな。」
『先ほどのは特別じゃ。神の眷属に何度も跨れると思わぬ事だ。』
「さよか、早く着いた方がお前も開放されて楽になれるのに。」
『クッ…今回で最後だぞ…』
「よし、シロ、ポチ、出発するぞ!」
『主、この箱はどうするんでしゅか?』
「ああ、とりあえずこの浅部の拠点に置いとくわ。この馬がいたら日帰りコースだしな。」
俺達は神殿付近に生息している上位種の魔物の事など、すっかり忘れていたのであった。
ケイロンに跨る俺とポチ、並走するシロ。俺達は神殿へ出発した。
小川沿いに走るケイロンとシロ。
「シロ、体力は大丈夫か?」
『はっ!問題ございません。まだまだ大丈夫です』
浅部は魔物に遭遇することなくわずか30分ほどで走り抜けた。
「ひゃっはーーー! 早くて気持ちいいな!!」
深部に入り木々が減る。それに伴い視界も広がる。
『主ぃ なんかヤバそうな臭いがしゅるでしゅ』
「ん? 相手せず走り抜けたらいいだろ。」
『でしゅか…』
深層部を1時間ほど走り抜けだとき
『主ぃ ヤバそうな臭いが強くなってきたでしゅ。ちょっとヤバそうでしゅ。』
ポチが怯えているのが気になりシロとケイロンにも聞いてみる。
『シロ なんか感じるか?』
『主殿、私も危険な気配を多数感じます』
「ケイロン、どうなんだ?」
『ふむ、前方に何かが複数潜んでいるようじゃな。』
「少し止まるか。ケイロン、お前は強いんだろうな?」
『フハハ、我は不死じゃよ。負けることはあり得ぬ。』
「よし、ケイロンを先頭にして迎え撃つ。ポチは隠れてろ。俺とシロはペアで動く。」
『でしゅ』『はい』『うむ』
三人で迎え撃つために《前衛1-後衛2》で三角形の陣営を組む。
迎撃態勢を取っていたら、身の丈5mのサイクロプス(緑)が3匹横に並んで現れた。
-以前に魔族を数値化した参考戦力-
ハーピー ・・・・・・ 50
オーガ ・・・・・・ 100
サイクロプス ・・・・・・ 200
ケンタウロス ・・・・・・ 200
グリフォン ・・・・・・ 400
オルトロス ・・・・・・ 不明
ケルベロス ・・・・・・ 不明
この参考値から考える。階位は別とし、単純に種族の強さで比較するとサイクロプスはシロ(オーガ)の2倍ほど戦力がある。ケイロンは不死身のため無視しても問題無いだろ。
我々には、武器に問題がありそうだ。各サイクロプスは2mほどの棍棒?丸太?を握っている。俺は石斧があるが、シロは素手、ケイロンも素手である。
サイクロプスがケイロンに5mほどの距離まで近付いたその時、ケイロンが手のひらをヤツに向け雷を打ち出した。その雷が直撃して、大きく痙攣しながら倒れる。
2撃、3撃とサイクロプスに雷撃を打ち出すケイロン。
残りの2匹のサイクロプスも同様に大きく痙攣しながら倒れていった。
相手が倒れたのを機に、すかさず俺は石斧でサイクロプスの目玉を潰す。潰す。潰す。のたうち回る巨体達、目玉へ何度も執拗に石斧を振り下ろす。
呆気にとられ呆然と立ち尽くすシロ、木陰で様子を伺っているポチ
そしてじっと俺の行動を見つめているケイロンであった。
ヤツらが息絶えた時、地面は血肉が飛び散り真っ赤に染まっていた。
「ハァハァ…やったか?」
もう決め台詞とも思える自身の戦闘終了の言葉。
俺は体が熱くなるのを感じながら、動かないサイクロプスを見つめていた。
『人間の子よ。ヌシは思ったより戦えるようじゃの。白いオーガよ、ヌシはなぜ動かん?』
『ハッ、主殿の行動につい驚いてしまい…』
『ふむ。白いオーガよ。ヌシは魔族との戦闘経験が少ないのか?』
『魔物との戦闘経験は多くございますが、魔族とは殺し合う経験はございません。』
『なるほど。ヌシの力量の低さは心の問題やもしれんの。』
「シロ、あまり気にしなくていい。気楽に考えろ。」
『それも真理じゃの。心が力を制御しているなら考えるほど逆効果じゃしの。』
『おわったんでしゅか?ワイも活躍したかったでしゅね~』
『『「……」』』
「おい、ケイロン、魔族に魔石ってあるのか?」
『陸地に存在する魔物や魔族には魔石は存在せぬ。ダンジョンと呼ばれる特殊な場所の魔物にのみ体内に核として魔石が存在しておる。』
「そのダンジョンに魔族は出現しないのか?」
『差はあれ魔族は文化を持つ生命体じゃ。魔物のように湧いてことは無い。』
「じゃあ、魔物は湧くのか?」
『そうじゃよ。ダンジョンより発する魔の力によって核が形成されるのじゃ。魔の力の種類により形成される核種や核の大きさが変わるのじゃ。つまり、核が違えば魔物の種類も違うんじゃよ。』
「そっか、ダンジョンってこの島にあるのか?」
『この場所には無い。大陸には数多く存在する。』
「大陸か…神に聞いたら渡る方法を教えてくれるかな?」
『我には何とも言えぬ。それはヌシが神の恩恵を受けているなら叶うじゃろうて。』
サイクロプスとの戦闘が終わり、死体を見ながらケイロンに魔石に関する事柄を教えてもらった。いつの間にか血肉に対する耐性が驚くほど強くなっているのを感じ再び神殿へ向かった。




