エピローグ:花嫁の文通相手
この話で完結します。
「奥様、お手紙が届いております」
「ありがとう。下がっていいわ」
メイドから手紙を受け取り、私はこの世界では珍しい植物性の紙で出来た封筒を開けた。数年前から変わらない、彼女とのやり取り。手紙の文面には、彼女の最近の出来事について書かれていた。何の変哲もない、ただの貴族令嬢の日常。最近学園の高等部を無事卒業したとか、新しい魔道具の開発現場を見てきただとか、色々と楽しくやっているらしい。
彼女とはクリスティーヌが十歳の頃から手紙をのやり取りをしていた。つまり私の記憶が戻る前からである。本当の意味での味方の少ないクリスティーヌの、ただ一人本当の意味での友達と言っていい。
スクラ公国に嫁ぐとき、クリスティーヌは彼女に助けを求めようともしたが、遠方の彼女に手紙が届くまで、二か月以上はかかる。なので、クリスティーヌが助けを呼ぶことも出来なかったのだ。それに、手紙でのやり取りでクリスティーヌは、彼女にえらく猫を被り、あることないことも書いていた。貴族の令嬢として、彼女に助けを求めるのは憚られたのだろう。
私は机の引き出しから羊皮紙を取り出し、羽ペンを手に取った。出来れば植物紙を使ってみたいと思うのだが、製法はあの国が独占しており、公国に流通しているのはほんの少しで、なかなか手に入らないのだ。私も自分で作ってみようかな? でも、私なんて牛乳パックで葉書を作るくらいのことしかしたことないから、やり方あんまり分からないんだよなぁ。そこらへんも彼女に聞いてみうよう。
私は羽ペンにインクを付け、羊皮紙に走らせる。
「親愛なるイザベラ・バッハシュタイン様へ」
さて、次はどんな返事が来るのかしら。
**********
あとがき
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
初めて書いた恋愛小説と言うことで、読みづらい点もあったかと思いますが、皆さまに沢山の評価をいただき、少しの間ですが恋愛日刊ランキングで二位になることもできました。本当にありがとうございました。
まさかスピンオフ作品がここまでの高評価をいただけるとは思っていませんでした。よく分からない、という人は、僕の別作品「異世界屋敷で奴隷ハー……はあ!?」を読んでみてください。クリスティーヌの文通相手がヒロインとして出てきます。
機会があれば、また恋愛小説を書いてみたいと思います。これからも応援よろしくお願いします。




