【アンダンテ】日常 4
[場所:教室]
――で、そんなこんなで朝のホームルームなわけだが。
[繭子]:「はいはーい、みんなおはよ~~」
こんなので、本当に担任を任せて良いのか少々不安になる今日この頃だ。初めてこの光景を見た人はきっと「え? このクラスって生徒が生徒にカリキュラムを教えるの?」って思う人が大半を占めるだろう。俺が初見でも、きっとそういう自信がある。俺から言わせれば、あのマユ姉が教師をしてるってことが一番の不思議なんだけどな。
[繭子]:「みんな元気ですか~? 先生はとっても元気でーす。どれくらいかって言うと、グランドを3周半できるくらい元気でーす」
何だその中途半端な周数は、しかも3周半って……体調が優れない人でも頑張れば走れるぞ。
[繭子]:「じゃあ、早速出席取りますね~。安孫子くん」
[男子生徒]:「はーい」
[繭子]:「……以下略でーす」
[吹雪]:「おいおい!」
持っていたキャップをおでこ目掛けて投げた。
[繭子]:「にゃあああうっ!?」
[翔]:「おお、すげぇコントロール」
[吹雪]:「楽をしようとするな。生徒の確認は教師の基本だ、それくらいしっかりやらないとダメだ」
[繭子]:「ぶー、はーい。じゃあ続けまーす。池上さん――」
[クラスメイト]:「……時々、繭子先生と大久保君、どっちが先生だか分かんなくなるわね」
近くの生徒がそんなことをつぶやいている。俺も正直そう思っていた。
[繭子]:「じゃあ、連絡がありますから、よーく聞いてください。いいですか? もう一度いいますよ? よーく聞いてください。いいですかー?」
そこは繰り返さんでもいいだろうが……。
[繭子]:「明日から暦は十二月に変わりますけど、それに伴って、いよいよ代表4人のピアニストとハーモニクサーが発表されます。誰が選ばれるかは、先生も分かりません。生徒かもしれないし、教師の中かもしれない。ひょっとしたら……選ばれないかもしれない」
それはねぇよ!
[繭子]:「とにかく、年を無事に越すためのだいーじな式典なので、代表に選ばれたかたは、強い意志と志を持って望んでください。いいですね?」
――四季を司るピアノがこの島には存在する。『桜花のピアノ』、『海風のピアノ』、『紅葉のピアノ』、『風花のピアノ』。この四つのピアノを奏でることで、島の四季は保たれ、平和に過ごすことができると、古くから伝えられている。それに伴い、ハルモニア学園では、この時期には毎年、そのピアノを奏でるためのピアニストを4人と、ハーモニクサーと呼ばれる、ピアニストの力を最大限引き出す役割の人物を一人選出される。ピアノを奏でるために必要なものは、才能と魔法、そして、平和を願う強い心。これらを兼ね備えたものが、ピアノを奏でることが可能、同様にハーモニクサーにおいても同じようなことが言える。ピアニストを信頼し、平和を願う心を兼ね備えた者がこの役職に選ばれる。蓋を開けて見るまでは誰が選ばれるかは分からない。しかし、選ばれた者は確固たる意志を持ってやり遂げなければならない。選ばれたということは、それだけ名誉なことでもあるからだ。これは、ハルモニア学園が担ってきた伝統と歴史の深い儀式だ。
[繭子]:「日にちは今から一週間後です。絶対に忘れずに来てくださいね。それと……後もう一つ伝えるべきことがあります。少々口が渇いてきましたが、頑張って伝えたいと思います」
いや、そこまでしゃべってないだろ……。
[繭子]:「近日中にはもう二つ大きな行事があります。何か分かるかな~? シンキングタイムは30秒です」
考える時間がなくても、大方の生徒は察しが付いてるはずだ。
[繭子]:「はい、時間でーす。じゃあその二つの行事とは何でしょうー? じゃあ、舞ちゃん」
[舞羽]:「あ、はい」
[繭子]:「その行事名を答えてください」
[舞羽]:「えっと……マジックコロシアムです」
[繭子]:「そう、大正解~。座布団1枚~」
大喜利じゃないだろうがよ……。
[繭子]:「今週の土曜日に、マジックコロシアムが開催されます。みんなもう知ってると思うけど、マジックコロシアムだから、魔法以外は使っちゃだめだからね? 参加を考えてる人はそこを十分注意してね~? ちなみに、優勝するとステキな賞品が送られるから、魔法に自信がある人は是非是非参加してねー? 嫌いなあいつをぶっ飛ばしてやるーとか、ここで活躍すれば女の子はイチコロにぐへへ――とか、そういう邪な考えでもオーケーらしいでーす」
嫌いな奴をっていうのは分かるが、その後のは明らかにおかしいと思うが。そんなフレーズに惹かれる奴なんて――。
[翔]:「女がイチコロ、ふふふ、オレの時代が来たか?」
いたわ、極身近に……。
[繭子]:「ケガには十分注意してくださーい。ではもう一つは何でしょうか? 時間がないので先生が言っちゃいまーす」
最初からそうしてろよな。
[繭子]:「明日は、みんなの頑張ったテストの結果が発表されまーす。パンパカパーン」
クラスメイトはそれぞれ色々な反応を示している。
[舞羽]:「うわー、来ちゃったよー」
隣で舞羽が苦笑いを浮かべている。
[繭子]:「自分が今どんな状況にいるか、しっかり確認するよーに。ちなみに、現段階で成績が悪い人は留置される可能性もあるから、十分注意してね。先生からの一言メモでーす」
さらっとすごいことを言った気がするが…。
[繭子]:「ってことで、先生の連絡は以上です。何か連絡ある人はいる? ――いないね、それでは朝のホームルームはおしまい~」
この短い時間で飽きたんだろうかあの人は……こんなんで本当に授業一コマできるのか? 毎度のことながら、不安に思えてしまった俺だった…。




