【アンダンテ】日常 10
空の色が変わり始めた頃、先輩はうなずいた。
[カホラ]:「よし、これかな」
何やら思いついてくれたようだ。
[カホラ]:「舞羽、このプラネタリウムってもう動かすことはできるの?」
[舞羽]:「あ、はい。型にはめ込めば、多分動かすことができると思います」
[カホラ]:「よし、じゃあはめ込んでみよう。実際に動かしてみましょう」
[舞羽]:「あ、はい。分かりました」
俺たちは言われるままにプラネタリウムを組み立てていく。
[吹雪]:「魔法ブースターに魔法を送らないとな」
精神を集中させ、詠唱を始める。
[吹雪]:「――エル、エルフィアス、……雷よ、我に力を与えたまえ、――ライトニング!」
動力口に向けて魔法を送り込む。それに合わせて、ブースターは少しずつ光始め、エネルギーを蓄えていることを教える。
[舞羽]:「……そろそろいいよ、吹雪くん」
[吹雪]:「おう」
ふー、詠唱にはやっぱり体力を要すな。これくらいでへばってはいられないんだが。さて、次は部屋をカーテンで閉めなければ。
[舞羽]:「投影フィルムを貼って……できました。カホラ先輩」
[愛海]:「うん、愛海、電気オフにして」
「了解でーす」
入り口のスイッチに走っていく。
[愛海]:「いいですか? 先輩」
[カホラ]:「ええ、いいわよ」
[愛海]:「じゃあ、行きまーす」
カチッ。部屋の電気が止まると同時に――部屋中が一杯の星空に包まれた。
[カホラ]:「うわー、綺麗」
[吹雪]:「「確かにすごいな。なかなか良い出来だったんだな」
[舞羽]:「そうだね、頑張った甲斐があったね」
暗くてよく見えないが、舞羽の口調からして、嬉しがっているようだ。
[カホラ]:「すごいじゃない二人とも、これでも十分ステキよ」
[吹雪]:「本当ですか?」
[カホラ]:「ええ、とっても見応えがあるもの」
[舞羽]:「ありがとうございます」
[カホラ]:「でも、ここから一工夫を入れたいのよね」
[吹雪]:「はい、そうですね」
[カホラ]:「ちょっと上を見ててね」
言われるままに、俺たちは上に目を戻す。
[カホラ]:「――エル、エルス、ファルディアード……星の瞬きを我らに示したまえ……はっ!」
先輩の詠唱と同時に、上では素晴らしいことが起きていた。それは――、
[舞羽]:「うわー、すごーい」
[吹雪]:「すっげー」
思わず感嘆の声が漏れてしまった。先輩の詠唱と同時に、それはもうすごい数の流れ星が天井を覆い尽くしていたんだ。キラキラ光りながら空を流れる様子はとても煌びやかで心を奪われるものだった。
[舞羽]:「ステキ」
[吹雪]:「これ、先輩が?」
[カホラ]:「そうね、どうかしら?」
[吹雪]:「どうも何も、感動です。すっごく綺麗で何ていうか……すいません、言葉がでないです」
[舞羽]:「私も……」
[カホラ]:「気に入ってもらえたならよかったわ」
[舞羽]:「…………」
あまりの美しさに、俺たちは時間を忘れて見入っていた。
……………………。
[愛海]:「すっごい感動しちゃったよ」
[吹雪]:「俺もだ」
[舞羽]:「私もー」
俺たちは口を揃えてそう言った。
[吹雪]:「あれって、魔法で出したんですか?」
[カホラ]:「うん、そうよ。吹雪たちが作った投影の内側に、透明の膜を貼って、そこに頭の映像を映し出したのよ。機械に仕掛けをしたわけではないわ」
[吹雪]:「そうなんですか」
[舞羽]:「すっごい良いもの見せてもらって、感激です」
[カホラ]:「何を言ってるの、あなたたちが頑張ったからでしょ? 私は大したことはしてないわ」
[吹雪]:「ありがとうございます。これが、先輩の案ですか?」
[カホラ]:「そうね、じっくり見させてもらったけど、この機械にはもう治すようなところは見当たらなかったからね。だったら、機械じゃないところにこういった仕掛けを施したほうが効果的かなって思ったのよ。それが今の流れ星の映像。どうかしら?」
言われなくても、もうこれは――、
[吹雪]:「はい、使わせてもらいます」
[カホラ]:「気に入ってもらえた?」
[吹雪]:「そりゃもう、脱帽です。帽子は持ってないですけど」
[愛海]:「脱毛なら、いずれなるんじゃない? 大久保くん」
[吹雪]:「まだ髪はたくさんあるわ!」
[カホラ]:「うふふ、ならよかったわ」
先輩のおかげで、政策方針が固まったな。
――その後は、4人で楽しくお茶を飲んでこの日の部活動は終わった。先輩は頼れる人だと改めて実感した俺たちだった。




