7-6 ”初代王の蔵”
ちょっと仕事で理不尽なことで叱責されましたたが心にデッド〇ールを飼っていたお陰で何とか事なきことを得ることができました。
ドワーフ王は、先ほどまでの騒ぎが嘘のように表情を引き締めると、先王へ現在の状況を手短に説明していった。
魔物の襲撃によって国中の住民が石化してしまったこと。
その魔物は、ここにいる新見たちが討伐したこと。
そして、石化解除薬の製法を確立し、すでに薬の準備も進めていること。
一方で、数か月もの間、誰も手をつけられなかったため、通常の食料庫や作物はほぼ壊滅していること。
「ですので、王位を継いだ時に聞いた”初代王の蔵”を解放すべき時かと」
「なるほど、我が王位についていたとしても同じようにしていただろうな。」
「それと、父上のスキルにも力を借りたいのです」
「ふむふむ…」
先王は腕を組み、しばらく考え込む。
「確かに我のスキル《成長促進(植物)》ならば、種を植えた作物を収穫できる段階まで一気に成長させることは可能じゃが、土壌に蓄えられた栄養を著しく消耗させる。何度も使えば、畑そのものが痩せてしまうぞ」
「承知しています。そのため、石化解除する者も、畑の成長促進も時間をかけて段階を踏む予定です。」
「なるほどのぅ」
先王は顎髭を撫でながら頷いた。
「つまり、全員を元に戻すのはかなり先になるということか」
「…はい」
ドワーフ王の返事に、先王はしばらく黙り込んだ。
「そいつは…心苦しいのぅ。じゃが、仕方あるまい。急いで復興しようと人を増やしても食料事情を解決しない限り、根本的な解決にはならぬからの」
「おっしゃる通りです。」
……
ドワーフ王と先王が復興のやり取りをしている間手持ち無沙汰になった新見がゴリオンに小声で話しかけた。
(おっさん、おっさん。”初代王の蔵”ってなんだ?)
(のちにわかるわい)
ゴリオンもまた、小声で返す。
「いや、お待たせした。それと恩人にこのようなことを頼むのも申し訳ないのだが、これから非常用の食料をためている蔵を開けるのでそこから食料を運ぶのを手伝ってほしい。」
とドワーフ王が申し訳なさそうな顔で新見達に頼むと一行はその”蔵”へ移動する。
その道中の廊下で新見はふと思い出したようにゴリオンへ顔を寄せた。
「なぁ、おっさん」
「なんじゃ?」
「ドワーフ王が弟ってことは…本当は、おっさんが王様になってた可能性もあったってことか?」
「あ。いやぁ、そういうのではないんじゃ」
ゴリオンは苦笑する。
「あいつは正室の子で、ワシは側室の子じゃった。ただ、ワシのほうが二十年先に生まれて幼少期はほとんど工房で修業まがいのことばっかやってたからのぅ。
出奔した後から継承権について色々と揉めておった、という話は聞いておる」
「うわ、出た。王族だからこその複雑な家庭事情。」
ゼノンが思わず口を挟むがゴリオンは呆れたように笑う。
「なんじゃそりゃ。それにワシ自身、政で執務室でペンを握るよりも祭り事で鍛冶場で槌を握っておったほうが性に合っておったしの。」
そう言って、自分の手を見る。
「それに、ワシのスキルも生産向きじゃった。じゃから王位の跡目争いからは身を引いたんじゃ」
「それで王都の鍛冶工房に?」
薫が尋ねる。
「まぁ、話すと長いが世界を回ってどんな技術があるか見てみたいってのもあったな。」
まさか王族が世界中を周りに回って王都の鍛冶工房の長になっている
そんなゴリオンの半生を聞いた新見は
「…おっさん、結構すげぇ人生送ってたんだな」
「何を言うかワシなんかより異世界に飛ばされたお前さんらのほうがよっぽどすごいわい。」
何とも言えないが少し照れ臭くなった三人。
「兄者のこういった好奇心はゴリオンの母上に似たのですな。」
ドワーフ王が話を聞いて笑いながら言い放った。
「四代目か…あやつもいい女じゃった。先代妃とは生まれも育ちも違ったが妙に気の合った二人じゃった…。」
先王は髭をさすりながら昔を懐かしむ。
「四代目…?」
謎のワードに困惑する新見ゼノン薫。
すると先王が足を止め、その視線の先にあったものを見つめる。
そこには、古びてはいるものの、先ほどの避難場所用の扉よりもさらにに頑丈そうで巨大な鉄扉が佇んでいた。
「うおお…でけぇ」
思わず声に出てしまった新見。
ドワーフ王は扉の前まで進むと、ゆっくりと手をかざす。
「古の約定に従い…この扉より…危機により中にあるものを欲す……」
低く響く声で何かの呪文を唱える。
すると、王の手のひらから淡い光が広がり、魔法陣が浮かび上がった。
それは瞬く間に扉全体を覆い尽くし、ふっと消えた。
その直後。
ズズズズズ……。
まるで何百年も動いていなかったものを無理やり引きずるような重々しい音を立て、巨大な鉄扉がゆっくりと外側へ開いていく。
その向こうには元の世界で言えば体育館ほどの広さがあり、天井もかなり高い。
照明らしきものは最低限しかなく、薄暗い。
そして何より、ひんやりとしていた。
「なんだか冷蔵庫みたいですね……」
薫が辺りを見回す。
左右の壁際には、大量の麻袋や木桶、樽などが所狭しと並べられている。
しかも、その高さは天井ぎりぎりまで達していた。
「いや、冷蔵庫と言うよりどっちかと言うとコス〇コだな。」と新見がぼさっと言うと
「あー、確かに!」
ゼノンが思わず同意した。
「「「「?」」」」
ギリ平成初期世代の薫とドワーフ達だけがコス〇コのワードにピンとこなかった
(コス〇コの来日は1999年のため。)
中央だけは人が通れるよう一直線に通路が確保されているものの、それ以外の場所はまさに物資の山。
ドワーフ王も目を見開いていた。
「これが大昔、初代国王が初代イタチョーと共に作り上げた非常用の食料保存庫か…実際に目にすると壮観だな……」
「儂も話には聞いておったが、実物を見るのは初めてじゃ」
新見も興味深そうに麻袋の山を眺める。
だが、ふと疑問が浮かんだ。
(ん? 初代国王っていつの話だ?)
いくら冷蔵されているとはいえこれだけ大量の食料がずっと放置されてるとなると、
賞味期限なんてとうの昔に過ぎてるのでは…?
(流石に普通の保存方法じゃ腐ってるだろ……)
そこで新見は、その辺にあった麻袋に鑑定魔法を使った。
~~~《備蓄米》~~~
食用:可だが、麻袋は不可
大昔に収穫され、格納されている米。
内部は時間停止及び防虫の古代魔法によって、半永久的に収穫当時の状態を維持している。
この魔法の技術はすでに失われており再現不可。
魔法が維持されている限り、腐ることはない。
残り保存可能期間:5632年
~~~
(え、えぇ……?)
新見の思考が一瞬止まった。
ちょっと目の錯覚と思い目をこすりながらもう一度見てみる。
だがはっきりと5632年の数字が表示されていた。
(古代魔法…すげぇ…再現できないのが悔やまれるぜ…)
先代王の妻たちの仲の良い話は閑話辺りにでも入れましょうかね(本筋とはあまり関係ないので。)




