009_蛇くんの四年目
瞑想します、
姿は座禅に似た何か、
あぐらを組んでいるというか、
立膝をついている、
腕を枕っぽくして、頭を支えています。
外見は十歳弱、
肉付きはよく、ふにふにぷにぷにとはあまりしていない、
すらっとしている感じ、
筋肉質ではないけれども、
着流しのようなものを、身につけ、
下着はなく、白い肌がちろりと見えている。
半眼、どことなくどこかを見ているようで、
どこも見ず、
口は閉じ、浅く息をしている、
季節は秋口、
場所は、板張りのお堂のような場所、
時刻は夜半、外からは、気の早い音虫の声、
空間全体がうっすらと光っているような照明、
奥の空間にには、巨大な気配、
てらりと、ぬらりと、蛇身の白い鱗が光を返しています、
ふう、と、吐息、
蛇くん少年、ナギくんが、宙に放つ、
空気の流れと共に、それだけではない、
不可視の力、
その渦が舞ったかと思うと、
ぽうと、大人の拳大の液体が宙に現れ、
重さを無視するように、そこに止まる、
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、
吐息と共に、自然な、不自然なまでに、自然なそれと共に、
数が増え、お堂の、夜を抱えたそこに、
止まり続ける、
そして徐々に、それが踊り始める、
くるりくるりと宙を舞う、
初めは不規則に、そして、徐々に決まった軌道を飛ぶように、
さらには、その空を舞う水球同士が、合わさり、
量をまし、渦巻き、紋様を描き、
そしれまた分裂し、好き勝手に、小鳥のように、
羽虫のように飛び回ります。
集合、解散、上下左右、反転回転、捻り込み、
輪を作り、それを潜りに抜けさせて、
器用に形を変えて、踊らせる、
音楽が聞こえてくるような、見事な舞台。
いやさ、水球を撓ませて、弾いて、
実際に音を響かせる、
半球にし空洞を作り、
振動を増幅させて、
楽を奏でていく、
びろうどを弾くような、共鳴させるような、
不可思議めいた、奇妙に、不安にさせるような楽曲。
音を高めて、最高潮に、
そして、ピンと一つ、弾いたのちに、
一つにまとまり、次の瞬間、霧散する、
文字通りに霧に変じて、
消え去ります。
「うむ、なかなかなうまくなってきたな、
というか、器用さに振り切っているような気がするが?」
お堂の奥、巨大な蛇身の蛇神様、ナギくんの父親が評じます。
「神術は、思うように使えるので楽しいです」
神様に願いを叶えてもらうことが基本の神術ですが、
普通は、定型文的な祝詞を唱えて、
それなりの、あまり派手でない加護をいただくようなものなのですが、
術者本人が神様に近い、半分がそうなので、
息をするのと同じように、
奇跡が使える、まあ、つまり、少年が、例外なのです。
蛇神様は、河川と山々を司るので、
水の扱いはお手のものということもあります。
「とうさまの力を借りると、もっと規模が大きくなりそうですね」
こてんと首を傾げながら、言う凪くんです。
「あー、まあな、国を沈める時とかには便利だろうな」
しれっと物騒なことをいう蛇神さまです、
特に、二人ともそのことは気にしていませんが。
蛇くんの四年目はこんな感じです。