077_蛇くんの迫り迫られ苦手で逃げて。
「あなたには私の子供を産んでもらってもいいかな、
とは思っていますよ」
しらり、と、明け方、まだ暗いうち、
森の師匠、その寝床で、
互いに軽く抱き合いながら、
唇を肌に這わせながら、
「うぇ?!」
動揺している、
おんとし、ええと、何歳か言ってしまうと、
鋭い視線と、穿つ弓矢で殺されてしまいそうになる、
金髪妖精美人、長命種です。
「聞こえませんでしたか?
まあ、時期を選んでということになりますけれども、
相性が良いのですよね、
水と森、
雨と土、
霧に風。
熱の篭り方も、お腹に灯る火も、
触れる肌の、濡れ方も、
私が小さき頃から、これに慣れているというのも、
ああ、そうですね、もちろん、
感情的にも、心情的にも、」
愛している、という言葉は、
この関係性にふさわしい、
愛しい、可愛らしい、おかしい。
「うわぁ、いやまあ、うん」
顔が真っ赤でありまして、
大人の余裕、それはどこに行ってしまっているのであろうという、
相手が、神様の眷属で、それ相応の早熟さ、
学習密度が濃ゆい存在である、のと、
精神的な図太さ、もしくは、
少年だけの記憶ではない、崇め奉られる、環境を背景にした、
思考の膨大な、濁流のような、瀑布のような、激しさと、
深く渦巻く滝壺のような、叡智の水、その総水量。
普通に溺れそうになり、苦しそうになり、
その感覚が、身を満たし、快楽に変わるような、
被虐趣味でないはずの感性が、無理矢理に、そう塗りつぶされる、
そんな甘い毒のような声。
「いいよね?」
答えは聞いてないけど。
「」
とうとう無言でうなづくくらいしか、反応が返せなくなる、
小さく細い肩、同じく白くたおやかな首、
何もつけていない肌が、赤く彩られていくのであり、
柔らかく、繊細に、へびの口、蛇の下で、
啄まれて、喰われていく感覚に、
甘く震えて悶えて、
朝日が登る前の最も暗い時に、
蠢いていく二人でありまして。
「いつがいいかな?
父上との調整もあるし、
領域とか権能とか、
その辺りの擦り合わせと、
眷属としての連なりをどうするのか、
奉られる、関係性、環境を、
整えていくのか、
まだまだ先の話だけども、
百年はかけたくないななぁ、
ああ、いや、
ある意味、一千年、万年かけて、
心を甘くぐるぐると溶かして、
作るのも良いかなぁ、
最後の一片まで、
語り尽くす一編まで、
大事に大事にしていくのもいいかなぁ」
夢現、揺れ動くように、語る蛇くんことナギ少年。
「いや、流石に一千年は持たない」
ちょっと冷静に返答を返す森の妖精、
笑いつつ、その可愛らしい口を、
食べるように塞でしまい、
享楽へと追い込み、逃げ込む、
若い、男神であったわけであります。
蛇くんのその逃げ方は、ちょっといやらしいというお話でした。




