074_蛙ちゃんの生きる意味と道と未知。
「お家を守る、これは前提としてあるのでしょうね?
神族血統を囲い込む、器としての一家、
血族の維持管理と発展は、
これを主眼とするわけですが、
それはなぜそうするのかと、
内省すると、
惰性ではなかろうかという意見が出てくるのですが、
どう思われます、母上?」
蛙姫、夕食が終了したあたりで、
まったりとした空間にて、
お話を、お母上に振ってみます、
お母上、部屋着でゆったりと、
隙が適度にある、色っぽい艶姿、
鯰髭のお父上は、仕事の都合で、まだ帰宅せず、
ここには、侍女と母上と蛙姫ことナダ姫が、
畳敷きの部屋でまったりとしています。
あかりは、真言術の”灯火”を複数、使用しており、そこそこ明るい、
それを表す言葉に火の言葉が入っているけれども熱は薄く、
白い光が柔らかく、部屋を照らしています。
能力の高い侍女の必須技能ではあります、”灯火”の術行使。
「ある意味正しいですね、
今までそうしてきたので、
そうであったので続いてきたので、
そのまま同じようにしようという、
安全側に立った、立場とやり口ではあります、
ですが、実績があるので、
蔑ろにするものではない、と思いますよ?」
ころころと美しい虫の声のような美声で、
返す母上です。
家を守るということに関して、
それが単純に尊いものであるという、
思考を停止した受け答えではないわけではあります。
「そこです」
指を差します、
「どこです?」
振り返ります、
いや、お約束なやりとりをしないでいただきたいわけですが、
この親子、定番の冗談をこれでもかと押してくるところがございまして。
ともあれ、適度に笑い声が響いたのちに、話が続きます。
「なぜ続けなければならないのでしょう?
もちろん生き残るためとか、
群れの存続の為とかの話では、
あるのですが、
もっと根本的な、いやまあ、理想的な?
目的とかは設定しないのでありましょうか?」
ちょっと真面目っぽい言い方ではありますが、
見失ってしまうものがありそうなのではないかという、
不安が混ざっています、まあ、上っ面だけの演技でもありますが。
「そういう大義は、それが好きな方が、
趣味的にやっつけでこしらえればいいのですよ、
そこは本質ではありませんし、
そもそも本質を求めてしまうことが滑稽ではあります、
ただただ、生き残りたいという生き物としての、
欲求が結果なだけでありましょうよ、
というよりも、苦しみたくないという、不利益からの、逃避が、
結果という方が正しいのではないのですかね?」
にこやかに冷めた笑顔でずんばらりんと切って捨てます。
「そのような解釈であると、
こう何というか、
やる気が削げませんでしょうかね?
楽しくならないような変な気分になるのですが」
困ったような顔でけろけろと鳴く蛙姫です。
「別にやる気は必要ないのです、
というかそれがない状態で、生き残れるようにできたのが、
家という構造なわけですから、
そのやる気とかは、
もっと楽しいことに使うとよろしいと思いますよ?」
大概この母上も大概な方でありまして。
「なるほど、
これは枷ではなく、
補助具とか、補完具なのですね、
なるほど、
あった方が良いではなくて、
うまく利用しましょうという部類のものであるという、
認識でよろしいわけですね」
にんまりと笑う母娘ですが、
まあ、今更何を言ってるのでしょう、
というくらいに、わかっている内容の、
お話ではございます。
かえるちゃんは生き生きと生きているという話でございます。




