057_蛇くんの車窓からの結界案内。
「なぜか牛車に搭乗中です、
いやまあ、楽ではありますが、
馬車とかは使わないのですか?
なるほど、早すぎるから危ないということですか、
先に道の整備をした方がよろしいのではないですかね?」
同乗者のミヤコ結界担当者と、真言術の大家であり、
学園の特別講師であり、蛇くんことナギ少年の家庭教師、
別に何かを教えていたという事実はないわけではありますが、
の、男先生の二人と半人半柱、が三名が、
小粋に会話を楽しんでいます。
半人半柱って表現あっているのでしょうかね?
「そこそのはやさと、高低差でも力強く歩けるのと、
気性が穏やかであり、危なくなく、
操縦の比較的楽である、という利点はあるんですよ、
いやまあ、あとは結構燃費もいいという、
頑丈というのもありますね」
男先生が小粋な会話に参戦していきます。
「馬はあまり強くないですからね、
小柄というか、それこそ馬力が低いですし」
ミヤコの結界担当者、ちょっとお年を召した、
四十代くらいの男性が、参戦していきます。
「こう、ミヤコならではの乗り物とかはないのですかね?
祖霊絡みの、それこそ巨大鼠とか、巨大猫とか、
巨大犬とか、大蛙とか?」
牛はちょっと普通すぎるんじゃないかなという指摘です。
「そこまで幻想が侵食しているわけではないというか、
そもそも祖霊を牛馬のごとく使用するというのは、
ちょっと不敬に当たりそうな気もしますな」
結界担当者の男性が、一般的な意見として述べます。
「面白そうではあるけれども、
運用は難しいのじゃないかなぁ、
鼠も猫も犬も、ましてや蛙だと、飛び跳ねてしまわないか?」
揺れがひどくなりそうであるという、意見をここに投げ込んでみる、
男先生であります。
「いっそ私が何か作って引かせようか?
多分ここら一帯に並ぶものがないくらいの、
速さを実現できると思うよ?」
神様的な冗談とか、いや、本気ともつかない、
意見をさらりと提示してみます。
「やめてください、
車が持ちません、というか、普通に運行が危ないです、
こちらがゆっくりだから、周囲の方々が、
余裕を持って避けてくれているのですから、
あと、結界の調査も兼ねているので、
あまり早く移動されても困ります」
結界担当の男性が、手元の紙をちらちらとみながら、
こたえます。
彼の手元の紙は、両の手で支えるくらいの大きさで、
人の胸板くらいあるでしょうか、
その上に、ちらちらと、光が舞っていて、
何かを示しているようです。
「というか、それが、結界調整の様子を、
探知表記する術具なのですけれども」
男先生が解説を入れます。
「その通りです、新型結界の強度やら、
展開空間を把握して、
その揺らぎを検知しつつ、
安定化がなされているか、
連携が取れているかどうか、などを、
読み取ることができるものです、
真言術が下敷きになっている、術具ですね、
結界の性質上、神術も多少混ざっていますが」
説明が結界担当の男性によって続けられます。
「なるほど」
という感じで、結界の改善、確認を、ミヤコを巡って、
行っているナギ少年でありました。
蛇くんの車窓からでした。




