054_蛙ちゃんの祖先を敬う儀式の是非。
「ご先祖様を大事にしてもしなくても、
そこにいたことには変わりないので、どうでも良いのではないかしら、
と、発言したら、普通に怒られましたわね」
げんなりとげっそりと、その当時を思い出した蛙姫ことナダ姫様です。
「いやまあ、そうなのではありませんかね?
私たちにとって、血脈とかご先祖とか、
かなり気を遣って讃えなければならない、
立場だと思いますし?」
久しぶりに会話の相手をしているのは、
名目上の婚約者であることころの、蝸牛皇子です。
「そうなのよね、ご先祖がいなければ、私がここに存在していないという、
論理はまあわかるし、いてくれてよかったなぁという感情は、
そこはかとなく感じるのではあるけれども、
別にそこを奉必要はないのではない?
というか、豪華絢爛すぎるのよ、儀式が、
感謝の念を込める以外の何か目的があることが、見えすぎるのよ、
ある意味興醒めではあるわね、
まあ、儲かるから他人がやっている分には推奨するのだけども」
ちょっと普段とは違う衣装、豪華なやつに身を纏っている姫様が言います。
「結構悪どく儲けているらしいじゃないか、
というか、儀式に追加の装束やら意味づけやらをして、
縁起物であるということで抱き合わせて販売している、これは阿漕ではないかな、
って、文句が上がってきているようだよ?」
ちょっと呆れながら、こちらも合わせたように華やかな衣装の蝸牛皇子がいいます。
「祝い事を記号化して、それを物販として売り出すというのは、
古き世から行われているものよ、むしろ神事に近いのではないかしらね?
いやまあ、流石に、尊い方々を、可愛らしい布人形にして、
組にして売り出したのは、やりすぎかなとは思ったけれど、
結構人気がある上に、微笑ましく受け入れられてしまったのよね、
あー、からかいが前面に出ているやつは、不敬であるとか、
言われてしまったけど、やらかし神様系の物語再現とか」
ぺろりと舌を出してあざとく笑って誤魔化す蛙姫様です。
「やっぱり君のところだったか、
国作りのあたりでのやりとりを、
卑猥に再現するあたりとか、やっちゃいけないだろう?
というか、等身大にして、
あなたも、女神を抱いてみようとか、
男神に抱かれて、国作りを体験してみようとか、
どう考えても駄目なやつじゃんか?」
呆れた表情です。
「肌触りとか内面とか、実用に耐えるように工夫しましたのよ?
あと、硬さとかも忠実に再現しました、
といか、神話より盛った感じでもありますよ、
きっと、草葉の陰で、創生男女神様も喜んでいるのでは?」
しれっと。
「不敬、というか不潔ですらあるのでは?
いやまあ、その行為そのものは神聖ではあるけれども」
困惑。
「生物同士ではないので、
むしろ神聖とか純潔さでは、こちらが上なのでは、
という、自負すらありましたが、
中央というか、神殿に睨まれましたので」
「回収したのですよね?」
「闇で販売するだけにとどめました」
「いつか神罰が降ると思う」
げこげこと笑いがら、
春の儀式に向かう、ご両人でございます。
かえるちゃんの祖先に対する立場を表してみたお話でした。




