053_蛇くんの創世物語で大草原。
「神様の系譜がかなり乱れているのではあるけれども、
一定の法則は前例に乗っているというか、
基本となる筋は変わっていないのではないかなとは思うのですよね」
ナギ少年が、真言術の達人にして学園の特別顧問であり、
幼い頃からの家庭教師でもある痩身の男先生に、
ふとした頃合いにぽんと語ります。
「あー、一応僕も超越している分類の片隅にそっとたたずむ感じではありますが、
神様的な視点では世界が見えないので、ええ、物理的に?
ちょっと突然何を言っているのだろうかなという、
感じにはなりますね」
困惑、くつろぎの空間で、互いに書物を捲りながら、
お仕事としての結界改良の話し合いは、
筒がなく進行中であり、
現在、現存の術者を中心に、無理のない範囲で運用できるように、
改良中かつ、改装中です。
「未来と過去の選択肢を俯瞰するような感じで、
あり得た世界とか、本筋とされるような、
幹のあたりとか、それとは別に何かが寄生しているような?
宿木のようなものがあるとか、
まあ、そんな感じで、見えたりするのです、
ええ、物理的に。
そのような感覚器があるような感じなのですよね、
神様の血統が根源に近いと、
直接それをどうこうできるかどうかというのは、
また別の権能とか才能とかが必要になる部類ではあるんでしょうけど、
あー、母上なら無意識に干渉できそうではあるかな?
父上は権能の種類がちょっと違うけれども、
それなりになんとかなりそうな?
そこしれないところがあるわけでありますから、
ミカドというか叔父貴は、こう、柵が邪魔をしそうではありますね」
つらつらと頭脳内のあれこれを言語化しようとして失敗している感がある、
ナギ少年です。
「未来と過去だけではなくそれが条件分岐したような、
そんな世界が見えているのでしょうかね?
ちょっと混乱しそうではありますが」
思考の手助けをするように合いの手的な返答をする男先生です。
「創生神話というか国作りのお話は、
そう変化ないのですよね、
女神と男神が矛に喩えるような感じで。まぐわって、
一回は失敗して、次に成功して、
次々に神様を生み出して、
最後にその子供に殺されてしまうという」
さらりと手元の神話系の書物を読みつつ、話します。
「ええまあ、有名ですよね、事実でもありますし、
そのお話を知っている、観測している神様もご存命ですしね、
おもいかね?様でしたっけ?」
記録とか記憶とか伝承そのものを司る神様でしたっけかね?
「まあ、生まれる前のことをどうやって記憶しているのかというと、
時間と空間を結構無視することのできる神様であるから、
納得はできるのではありますが、
ただ、この辺りは同じなのですが、大体という範囲でもあるんですよね」
細かな所は違っているというか、
大きく違うところがあるわけで。
「へえ、それほど違いますか?」
気のないような、そうでもないような、合いの手。
「一番の違いは、それが虚構であるかどうかという話でね、
本流ではそれは見立てであって、実在はしていないのだよね」
まあ、何を本流と呼ぶのかの違いはあるかもしれないので、
ないことが真であるかどうかはまた別の問題になるかもしれないのだけれども、
ちょっと衝撃的な内容を、
まあ、そういうこともあるかなと、
淡々と話し合う、異彩にして異才な方々が過ごす、春の夜です。
蛇くんのこの世界に対する認識がちょっと漏れた話でした。




