043_蛇くんの殺陣、異界下のあっさり風味。
夕暮れ時、黄昏時、人気が不自然に途絶え、
売り子の客引き、忙しない会話、値切りと首くくるよろしな戯れ声、
交渉がこう笑で、奇奇怪怪な言葉の重なり、
遠く遠くに流れる景色、
ああなるほど、
囚われたかな、
まあ、お手並み拝見、多少の手伝いはいるかな?
ちょっと目には熟練の手並みである界ごとの拐かし、
しかしやはり人に近いのか神から遠いのか、未熟ではあるのか、
今風ではこれでよろしいのか。
影が立ち上がる、余計な問答はなく、
そこはやりとりが欲しいところ、
減点か、
活劇ではないのであるから、ある意味現実的な、
幻想ではあるのか。
質量、
巨大化、
肥大化、肉の壁であるのか、丘くらいに伸び上がり、
黒い黒い、塊、柔らかそうではあり、ぬらぬらと、
水気の多い、光沢が見て取れる、
やはりこれは、粘液であるか、粘身体のくだり、
なめくじの眷属ではあるのであろうかな、
観て、つい、と、切る、
神術というにはあまりにも原始的な、
戯れのような斬撃、不可視であるそれに、
わざわざ遊びで色をつけたような、
光の刃、白い、もしくは部分部分が青い。
千の欠片に砕け切られる黒い巨大な粘体、
そして瞬時に再生、再合成、質量が慣性のまま、
雪崩れ込んでくる、
その中に消える蛇くんことナギ少年、
潰されたか潰したか、
すっと、その黒い巨大な丘のような粘液体より、離れたところ、
間合いにして、十歩、忽然と現れるように、たつナギ少年、
瞬動といえば格好が良いのか、
ただ単に、正しく避けて、その場まで走っただけであるが、
それだけのことが既に神がかっているのであり、
神である身にとっては、つまりは、特に不思議はない普通のことである。
相性のこともあり、ちょっと刺激が肌を指すものの、
ものの程度であり、些細な阻害案件であり、気にするほどでもなく、
ただ少々不快であるくらい、
さて、再生、黒い塊、そして、
独特の何かを擦り合わせるような鳴き声、
「てけりてけりちりちりてけりて」
極南の粘体が流れを汲む、なめくじ、であろうか?
ただただ、生き汚く、
外から来たものとの干渉の結果、
物理法則をやや無視している、質量を保存していない怪異、
変幻自在である捕食者にして、その性質は確かに奉仕するための種族。
いやまあ、珍しいといえば珍しい、
けれどもそのくらいでしかないのではあるのであるか、
神に連なる存在ではあるものの、
それはそのものよりかなり遠く、
ただただ、しぶといだけであるならば、
ただただ、滅しし尽くせば良いだけであり、
そういう力押しは実のところ、
得意な分野で、ありまして、
白い光が周囲を埋めます、
そしてそれだけです、
それだけで、その丘くらいの黒い粘液体は、
そこにいられなくなりました。
こんなものよな、
ちょっと物足りないような顔をして、
いつの間にか戻ってきた街の喧騒を、
背中に、家路へと着くナギ少年でありました。
蛇くんの戦いは、あっさりした殺陣未満風味でした。




