六十八話
リンが五人の前で立ち止まった。
彼女はスミカのように小柄だ。それなのに、まるで門を守る巨大な像のような威圧感を押し放っている。
「おまえたちが彼ら四人を倒したのだな。見事だ」
突然の言葉に一同は戸惑う。
「だが、所詮その程度だ。私の考える一流の学生とは、こんなものではない」
「あなた、何が目的なんですの? 一等級同士で〈学園破り〉をする理由がありませんわ」
「これは〈学園破り〉ではない」
レイジたちはさらに混乱した。
「等級という腐ったシステムをぶち壊す。それが目的だ」
「なぜですの? 等級は優れた仕組みですわ。優れた生徒が優れた学園を選びやすくなり、毎年の等級審査会によって学園同士の切磋琢磨を促してますのよ」
リンはエリナの言葉に眉根を寄せた。
「本当にそうだろうか。いいか、実状を見てみろ。我々は他の学園を襲うことで鈴ヶ森に警告、および宣戦布告を行った。なのに、今日来てみればどうだ? まるで準備ができていなかったではないか。どこかで思っていたはずだ。“〈学園破り〉は一等級には関係ない。もし狙われても、二等級相手なら問題はない”とな」
図星だった。いい返す言葉もない。
「先に襲った二等級学園も同じだ。〈学園破り〉を仕掛けてくるのは低等級、負けるわけがないと考えていた。だから、あっさりと陥落した。これが怠慢ではなくてなんだ?
等級が機能しているのは表面だけだ。事実、我々龍晃も含めた全学園と生徒はそのシステムに甘んじている。胡坐をかいている。上の等級は上位だから安泰だと高をくくり、下の等級は下位だから仕方がないと諦めきっている。これのどこが切磋琢磨だ。石同士がぶつかり合う要素を、むしろ等級が奪っているではないか。
こんなシステムはない方がいい。手っ取り早いのは等級に意味がないと知らしめることだ。たった五人の生徒に一等級学園が陥落させられたとあれば、さすがの等級審査会も無視できない。等級というシステムは、根本から見直される必要があると気づくだろう」
リンの言い分は一本筋が通っているとレイジは思った。だが、それで鈴ヶ森が負けていい理由にはならない。ここはスミカが帰ってくる場所だ。それをめちゃくちゃにさせはしない。
「それでも、俺たちは鈴ヶ森が好きなんだ。守らなくちゃいけない」
「その心意気は買おう。だが、心意気だけでは何も成し遂げられないのだ」
レイジを中央に散開するスレイ部たちをリンは横目で見た。
「全員で来るか。選択は正しい。だが……」
「いくぞ!」
レイジ、そしてキョウがリンに向かって飛びかかる。それを皮切りに堀之内、エリナ、アンリが続いた。五人の影がリンを覆う。
「ふん」
リンの髪が大きく弧を描いた。




