Prelude~前奏~
3話目は少し短めです。
ルルーシエの披露に向けてアクセルを踏んでいきます!
シートベルトはしましたか?!
うわぁぁぁぁぁ!!!
「あれが最年少ワルツ……!」
「ヤバい何が起こってたのか分からなかった」
「今年のワルツも、もう決まったのではなくって?」
「次の人が可哀想すぎるよ」
舞台を降りるテスタリオの背に送られる歓声、歓声、歓声。会場は興奮一色となっていた。
特に、初めてワルツを見る人が多い新2年は驚きを隠せていない。もちろん、ルルーシエもその1人だった。
(声が……出せない)
圧倒的な発想力と表現力、そして安定感。あれだけ大規模な術式を保つには、魔力だけでなくとんでもない集中力も必要になる。
それらをあわせ持ち、なおかつ同時に保つことができる技術を持つ者はそういない。ましてや低学年では他に聞いたことすらない。
……もはや恐怖すら感じてくるよ。
「ワルツの人、黒の一族に近いらしいよ」
「やっぱりなー。だからあんなに上手いのか」
テスタリオの姿が見えなくなっても、会場のざわめきは収まらない。それほど衝撃的なことだったのだ。
そんな中、ルルーシエは1人思考を巡らせていた。
今の術式、見たことないものが含まれていた。他の楽章の光界は見たことがあるけど、誰のものにも似た雰囲気のものはなかったから、楽章関係のものではなさそうだね。
ということは、自分で編み出したもの?だとしたら、天才どころじゃないよ。
あの光、光……いや、炎の魔術かな。あれだけ正確に制御するなら風のほうが相性良さそうだけど、熱さが感じられなかった。火傷だってしていないし。
それに炎だけであれだけの光量を保つのは難しい。いったいどうやって……
「あ、なるほど」
ルルーシエの口から小さく言葉が漏れ出た。未だ騒がしい会場では聞こえた者もいなかっただろう。
同じく興奮冷めやらないルルーシエのすみれ色の瞳には、まだ、先ほどの光景が映っているようだった。
ルルーシエは幼い頃から、人形の代わりに母の光界の魔術、絵本の代わりに簡単な魔術書読んで育ってきた。母であるシンティアーレは子守にちょうどいいくらいにしか思っていなかったが。
そのおかげか、タクトを持つ頃には大人が使う魔術を観察・分析し、独自にさらなる工夫を凝らした魔術を扱おうとすることができていた。
いわば、『表現者の敵』。
すごく、おもしろい……!
そして生粋の魔術オタクでもあった。
テスタリオさんを超えて、ワルツになるにはあれ以上の衝撃を与えなければ。同じようなことをやってみる?いや、真似ただけと笑われるだけ。さりげなく取り入れるくらいにしよう。だったら私のこの術式に取り込んで……
あぁ。はやく、はやくやってみたい!
一度沈んでしまったルルーシエの意識を引っ張り上げたのは、少々まばらな周囲の拍手の音だった。と同時に、待機場所を受け持つ教師が声を上げる。
「次、12番の人、準備をしてこちらへ来てください」
「えっ?!」
(テスタリオさんの後、私までに2人いたはず。気づかなかったってこと?嘘でしょ、見逃した?!なんてもったいないことを!)
「またやってしまった……」
いつもこうだ。集中しすぎてしょっちゅう大切なことを見逃してしまう。はあ、もったいない。
……これに関してはテスタリオさんが悪いのでは?
さっき会った時に見せてくれていたら、こうはならなかったかもしれないのに。
何度悔やんでも時間は巻き戻らないし、テスタリオが謝罪として他の魔術を見せてくれるわけでもない。
諦めて服を整え、教師のもとへ向かう。
「それじゃあ、頑張ってね」
「はい!」
名前も知らない、おそらく他学年の先生に見送られ、舞台の上へと歩みを進める。向けられる視線は、もう気にもならなくなっていた。
中央に立ち、リハーサルで言われていた通り、王族と学長が座る席に向かって膝をつき、右手を胸に当てる最高礼を行う。
「第2学年、ルルーシエ・アルトーネ。ここに」
よし、声も震えずに出せた。あとは学長の合図で始めるだけ。
ちらりと高いところに設けられた特別席を見ると、入学式の時に遠目に見た学長と、その横に似た容姿の人が立っているのが見えた。
学長がこちらに軽く頷く。その瞬間、それを合図にしたかのように一気に会場が静まり返った。
一度礼をして立ち上がり、タクトを取り出す。
大丈夫、手も震えていない。こればっかりはテスタリオさんのあれのインパクトが強すぎて良かったよ。
軽く息を吸い、吐く。事前動作の構えを解き、ふわりと手を広げる。
やるからには全力を。最高のものを。
勝負は、一瞬。
ルルーシエがまあまあ変な子だってことがバレてしまいましたね。
でも、まだまだ知らない面があるとかないとか。
次はついにルルーシエの披露!
勝負は一瞬!




