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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑥ ~陰りの闇が刻む痕跡《あと》~  作者: norito&mikoto
第6章 絡み絡まれ

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第1話・目にしたすべてを語りだし ~涙に濡れる紫の~

第6章 絡み絡まれ



      第1話・目にしたすべてを語りだし ~涙に濡れる紫の~



 まさか……こんな形で突き付けられるなんて……




 泣きながら語る、アインが『見た』インスの精神体の状態に、シリウムとウスニーの顔がどんどん強張っていく。




 時折言葉に詰まり、ぎゅっと、インスの服を掴んで、声も、指先も震わすアインの……ひどく怯えた様子に、宥めすかすインスの表情は戸惑いがち。




 アインが、全身くまなく、背中側まで視た理由。



 それが……




「どうしてありとあらゆる怪我の痕が全身に存在しているんだ……お前、どんな生活している?」


「……私に言われても……」




 殴られた痕、切られた痕、刺された痕……と……



 どこにあるのか……どんな痕が残っているのか……を、告げるたびに言葉に詰まるアインが言い終わるのを待って。



 ジトリとした眼差しでインスを睨むシリウムとウスニーに、ちょっと小さくなって返すインスの声は困惑気味。




 言葉にして聞いたシリウムの声には隠し切れない憤りが宿り、返答に眼差しが冷たい圧を増す。




「……特にわからないのが、拘束の痕……」




 普通に生活していて痕が残るような拘束などされるはずもないのに、それがあるという。




「……………」




 無言で笑顔を向けたインスを見て溜め息を漏らす。




「……しかも、それらは相当()()ものもあるって……?」




 今度はウスニーが口を開くと、インスの腕の中で震えながらアインが頷く。




「……古いのは……色が、違います……古いほど、薄い色を、してます……」




 古い傷の方が痕も薄れていくのと同じかと、シリウムとウスニーは頷き、そういうものかとインスも納得する。




「……多分……」




 恐る恐る、口を開いたアインが、インスの腕の中からインスを見上げる。




 変わらない穏やかな微笑が、ほんの少しだけ困っているような、困惑しているような色を覗かせて、静かにアインを見つめていた。




「「……多分……?」」




 僅かに躊躇うアインを促すようにシリウムとウスニーが問えば、哀しそうに眉を下げたアインは決定的な言葉を口にする。




「……繰り返され、過ぎて……残って、しまっているんだと……思います……」


「「「……………」」」




 途中で上ずった、囁きのようなその言葉に、再び絶句した三人は……




「「お前、本当に何でそんな生活しているんだ?」」


「……そう言われても……」




 ねめつけるようなシリウムとウスニーの、怒りを隠さない声音の問いかけに、キュッとアインを抱きしめ、身を竦めてインスはまたそう返した。




 溜め息を一つ。




「……状況は分かった……。つまり、インスの精神体はボロボロで、こいつはそれを自覚していない……」




 まず、何よりの問題点を指摘したシリウムは真っ直ぐにインスを睨む。




「だからこそ、敵性対象を自分に指定できて、更に強引に授業を進められた」




 その結果、繰り返しダメージを受けて……




「心を具現する器である精神体に起きる異常が、物質の器である肉体にまで反映されている可能性が高い。ということだろう……」




 総括するように結論付けたシリウムの言葉に、全員が頷く。




 他に考えようがなかった。




 しかし……





「……それで? どうすればいいんですか?」




 まるきり他人事のように問いかけたインスに……




「「お前は他に言うことはないのかっ!!」」




 医呪神官の二人から、激しい叱責が飛んできた。




「……インスさま……」




 そっと、アインが右手を伸ばして、インスの頬に触れる。




「……アイン君……?」




 その指先が、驚くほど冷えていて、インスは少し目を丸くして視線を合わせた。




「……だいじに、してください……」




 ジワリと滲む涙に、息を飲む。




「…………そう、ですね……。約束、しましたからね……」




 柔らかく抱擁して、アインの耳元で囁けば、こくんと、小さく頷かれる。




「……やくそく……です……」




 泣いて、縋る幼子を突き放したり、悲しませたりなんて、できるはずもない。




 この子が、自分のことで泣くことがないように、気を付けないといけないな……と思う程度には、流石にインスも自覚している。




 自分のことを、大切に思ってくれる相手のために、自分を守る必要がある、ということを。




 同時に……




(……アイン君にも……アイン君自身を、大事にして欲しいから……)




 その指先の冷たさが、自分を縛る鎖になってくれる。




 けれど、それよりも、少しでも早く、ぬくもりを取り戻してくれることを強く願った。


第6章第1話をお読みいただきありがとうございます。


アインの口からインスの精神体に刻まれた「異常な痕跡」の詳細が語られました。


普通の生活では決してつかない無数の傷跡や拘束の痕。


それを「繰り返されすぎたから残っている」と涙ながらに訴えるアインに対し、インス本人はどこか他人事のようで……


大人たちから激しい叱責(という名の本気の心配)を受けてしまいます。


自分がどれほど傷ついているかにも無頓着なインスと、「だいじに、してください」と冷たい指先で触れながら涙を流すアイン。


二人のいびつで切実な約束が、少しでも響いて心を繋ぎ止める鎖になってくれればいいですね!


そして、大人たちから問い詰められたインスは自身の「拘束の痕」について何を語るのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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