第1話・説明開始すれども進まず ~知らない話に溺れかけ~
第5章 積み重なった様々な
第1話・説明開始すれども進まず ~知らない話に溺れかけ~
「まずはアインが主神殿の医務殿から退院して、最初の授業が皇宮側で行われた時」
落ち着いて説明を始めたウスニーの言葉に、インスも、アインも、シリウムも、それぞれ微妙に違う意味合いで、同じ反応を示す。
インスはどうしてそこが始まりなのか分からなくて驚いていたし、アインはむしろ、その言葉だけですべてを悟って驚いていた。
シリウムはその授業が行われたのが二十日近く前であることを知っていたので、ずいぶんと前から問題が起きていたのかと驚く。
「その授業では幻影人形が使われて、アインに攻撃魔法を使わせるために、インスはその敵性対象を自分に指定したな?」
「はあっ!?」
その説明に、まず最初にシリウムが声をひっくり返して絶句する。
逆に、残りの二人には周知の事実であったので、ただ黙って頷いただけ。
ただ、アインが不安そうにインスを見て、インスが宥めるようにその頭を撫でる。
「……シリウム神官長。申し訳ないが、言いたいことは後でお願いします」
「……わかった……」
気持ちはよく分かるウスニーだったが、話が進まないので質問は受け付けない旨を伝えると、シリウムも理解はできるのでぎろりとインスを睨んで頷く。
「授業自体は成功で終わったが、アインはその後、風邪で寝込んだんだったか……?」
「そうなんですか!?」
「……えっと……はい……」
続けたウスニーに、今度はインスが声を上げ、アインは曖昧に頷く。
そういえば、インスがその日に着ていた上着を借りたままだったと思い出し、アインの視線が彷徨う。
「……インス。お前も、とりあえず最後まで聞け」
「……すみません……」
こう、いちいち遮られては話が進まない。
眉間を揉んで苦言を呈すると、インスも素直に謝罪し、口を噤む。
不安そうに視線を彷徨わせるアインに微笑みかけて、頭を胸元に押し付けさせるように少し押さえた。
素直に顔を寄せたアインがホッと、息をするのを確認し、目線で先を促す。
「インスも訓練場で倒れて、それから十日近く意識が戻らなかった……そこに、アインが見舞いに来たわけだが……」
そこまで言って、ウスニーは深い溜め息を漏らした。
心労で一気に老け込むかのような溜め息の重さに、一瞬室内にも緊張が走る。
「……そこで、アインは見者の目でインスの精神体の状態を見た」
「「……は……?」」
ウスニーのその言葉に、インスとシリウムが間の抜けた声を漏らして絶句する。
アインを撫でていたインスの手も中途半端な位置で止まって、反射でアインも体を強張らせた。
「……いや。待て……。アイン。お前、確か普段は『見ない』ようにしているとか言っていたな……?」
「……えっと……はい……」
思わず口を挟んだシリウムに、小さくなってアインは頷き、初耳すぎる内容にインスは硬直して目を見開いている。
え? 見者の目って、そんな目を閉じたり開いたりするように、見たり、見えないようにしたりと切り替えられるものなんですか? とか。
精神体を見たって……。精神体って、見えるものなんですか? とか。
見者が見えるものって、魔力だけじゃないんですか? など……色々な疑問が一気に押し寄せてきて頭が混乱する。
「……確かに、言っていたな? 見え過ぎて体調が悪くなるから、見たくないと思ったら見えなくなった。と……」
「…………っ!?」
ウスニーが加えた説明に、息を飲んだインスはアインを見つめた。
「…………はい……」
一瞬、怯えたように身を震わせたアインがこくんと頷いて、ぎゅっとインスの胸に頭を押し付ける。
その、甘えるような仕草に、インスの手が半ば自動的に頭から背中までゆっくり撫でて宥めすかす。
「しかもその後、自分が見たいと思った時に、見たいものだけを見えるようになった。とも……」
「「「……………」」」
別口でアインから話を聞く機会があったシリウムは無言。
アインもインスの胸に顔を埋めたまま小さく頷き、置いてきぼりになりかかっているのはインス一人だけ。
情報量が多すぎてキャパオーバーになりかけていた。
もちろん、最初に聞いた時はシリウムもウスニーもキャパオーバーして、その日は仕事にならないくらいに疲弊したのでインスの気持ちは分かる。
分かるが、先に進めるためには話を続ける必要があった。
第5章第1話をお読みいただきありがとうございます。
今回はウスニーによる現状説明会……
のはずが、当のインス自身が一番「初耳なんですけど!?」と情報量に溺れかけております(笑)。
インスが寝込んでいる間に起きた出来事や、アインの「見者の目」に関する驚きの新事実など、知らないことの連続にインスの処理能力は限界ギリギリ。
いちいち驚いて話が止まるため、説明役のウスニーの気苦労が絶えません。
果たしてインスはキャパオーバーを起こさずに最後まで説明を聞き切れるのか?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




