プロローグ・理解のできない詰め込みと ~純粋すぎる恐ろしさ~
序 章
プロローグ・理解のできない詰め込みと ~純粋すぎる恐ろしさ~
上層の考えていることが理解できない……
アインが渡された新しい授業のスケジュールを見て、ペルフィーは若干遠い目になった。
ペルフィー=プリメーシャスは神官呪師見習いである。
年齢は二十一歳。専攻は医学。
神官呪師学校への入学は十三歳の誕生日を迎えた翌日。
入学試験に当たる適性検査の結果、生家の他の呪師たち同様、神官呪師の適性が高かったので、神官呪師学校に入学した。
神官呪師は、皇宮呪師とは違い、神官としての奉仕に当たりながら魔法を学ぶ。
よって、皇宮呪師より学ぶことが多くなる。
もちろん、皇宮呪師は皇宮呪師で、色々と学ばなければいけないことなども多く、どちらが大変か……などということを比べたところで意味はない。
とにかく、神官呪師は神官としての学びと、呪師としての学びを同時に行うことになるので、まだまだ遊びたい盛りの十三歳の子供が順調に進級していくことは難しい。
それでも、ペルフィーは基礎から初級までを二年で、そこから中級までを更に二年で修了させた……いわゆる一握りの順調に進級した生徒だ。
十五歳で実践訓練に参加した後には神官位の授与も受け、正式な神官としての奉仕活動にも当たり、中級を修めた後の上級と高位魔法……いわゆる専攻は医学に進んだため、まだまだ修行中の身ではある。
(エルマーニ校長が仰っていた、アインが既に終わらせている基礎学習って……初級までじゃないのかよ!?)
神官呪師学校の校長ヴィロバ=エルマーニが言っていた「入学から、順調に進んでも二年はかかる学習範囲。」を基礎から初級までと思っていたペルフィーの考えを裏切り、そこに書かれていた学習範囲は中級を終えて、専攻選択に入る前の生徒が受けるもの。
しかもだ、よくよく考えてみれば、アインは神官呪師としての修行と同時に皇宮呪師としての修行も、そしてなぜか……体力づくりを兼ねてとは聞いているが、明らかにおかしい……皇宮騎士団の武術訓練も受けている。
だいたい……。と、ぺルフィーは湧きあがる苛立ちを必死に押さえ込む。
(皇宮呪師側の実戦訓練と、神官呪師側の実践訓練……どちらも中級に入る前に行われることだろう!? 十五歳以上が対象のはずの訓練すっ飛ばして、先に中級終わらせてるって、どういうことだよ!!)
そりゃあ、先に進めないはずだ。
本来、初級魔法までで対応するべき十五歳以上が対象の実地訓練を受けさせないまま、先に中級の知識と技術を詰め込んであるのだ。
「……ええと……基本は、復習……ですかね?」
こてりと首を傾げるアインに、「おかしいだろう!」と怒鳴りたいのを何とか飲み込む。
「……みたいだな……けれど、上級や高位魔法に関する知識をつけるための基礎講座は追加されてる……」
とりあえず、書かれているスケジュールのいくつかの個所を指さして伝えると、アインの方もこくりと頷く。
「……神官呪師としての授業が中心、見たいですね……」
呟くように言ったアインの声が少し、沈んでいる。
一日おき、更に一日に行われる授業は一科目のみ。
変更されたスケジュールに従って、週に四日の授業と、三日の休養日が書かれ、一日一科目の授業は午前と午後に分かれている。
内容としては、上位や高位の魔法に関する知識を得るための座学と、それに関連する基礎となる初級中級の復習となる実技が組み込まれていて、バランスは悪くはない。
(バランスはな! 中身はおかしいことだらけだけど!!)
頭を掻き毟りたい衝動を抑えて、ペルフィーは上を向き、ゆっくりと息を吸って、吐く。
「……多分だけど、皇宮側との調整がまだなんじゃないか? 暫定的って書いてあるし……」
それから、書類の一番最後に書かれた一文を指して、落ち込みかけているアインを慰めた。
「……そう、ですね……」
もちろん、そこもちゃんと確認していたアインだったが、神官呪師側の授業だけでこんなに時間を取られると、このスケジュールでは皇宮呪師側の授業を受ける時間など取れるのか? という疑問が消えない。
「少なくとも、お前の授業がこれ以上滞らないようにという配慮だろう。あと、エルマーニ校長も仰っていたけれど、上級や高位は『どんなものがある。』くらいは教えられても、詳細に学ぶことはできないから、ずっとこのスケジュールが続くことはないのは確かだろうさ」
そう、どういった種類があり、どんなことができ、どういった使われ方をするのかを学ぶことはできても、では実際に使うには……と言った授業は受けさせられないと言い切られているのだ。
だから、調整がつくまでの間に済ませてしまおうといったところだろう。
「……ぁ……」
言われて、アインも思い出したように顔を上げた。
「このスケジュールには皇宮側の予定が一切入ってないからな……調整待ちってところだろうさ」
「……そう、ですね……」
目を見て言い切るペルフィーに、数度瞬きをしたアインも頷いて、もう一度新しい授業のスケジュール表を見る。
さらりと、右手で紙面を撫でて……
「……調整が終わったら、また、皇宮での授業も……あります、よね……?」
囁くようなアインのその言葉に、ペルフィーはゾワリと悪寒が走るのを感じる。
これで、もし、万が一にもなくなったりしたら……
(……ヤバい、ヤバい、ヤバい……!)
おかしなことは考えないでくれ! と祈りながら、そろそろ休もうとアインを促したペルフィーの顔は真っ青になり、汗が滲んでいた。
番外編第6弾、開幕です!
序章からさっそく、ペルフィーの常識が破壊され、胃に穴が開きそうな展開になっております(笑)。
15歳以上が対象の実地訓練をすっ飛ばして中級を終わらせているアインの狂ったスケジュール。
それにツッコミを入れたいのに、当のアインが「皇宮での授業がなくなるのでは……」と落ち込んでしまうため、必死にフォローするペルフィーの苦労が偲ばれますね。
果たして、皇宮側の予定が入っていない本当の理由とは?
ペルフィーが真っ青になって「おかしなことは考えないでくれ!」と祈る事態は回避できるのか?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




