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27 サイモンの話-1



サイモン視点

 





 サイモンは神童と呼ばれていた男だった。


 子供の頃からスカーレット国で1番の頭脳と言われていたサイモンは、色々な事に気がつき過ぎて、子供のくせに面倒な奴だと陰で皆に言われていた。その上、人の心を読むことにも長けていて、痒い所に手が届きすぎ、子供らしくないとも言われていた。


 しかし、サイモンを小生意気なヤツと嘲笑した者は、後で自分の無能さに悔し涙を流した。


 サイモンの整った面立ち、栗色の髪と栗色の瞳、スラリとした外見、優しい仕草は女の子達を夢中にさせた。


 恋人のミミは1つ年下で、何十人もの男に言い寄られても全く相手にしない、美しく可愛い難攻不落の女と言われていた。それなのに、サイモンにはあっさりと落ちた。

 

 サイモン曰く、恋愛心理学的アプローチを駆使すれば、女の子は必ず振り向いてくれる…。あとはその女の子の良い所を褒めて、上手なキスをしてあげればいいのです。女の子はキスが大好きで可愛いですよね。


 それを聞いた周りの男どもは皆泣いた。

 

 恋愛でもサイモンには勝てなかったから。




 そんなサイモンは15歳で官史の試験を受けた。安定した収入に惹かれたと言う事にしておいたが、実際の所、軽い気持ちで受けたら受かってしまっただけだった。それも、歴代最年少での合格、しかも堂々のフルスコア。


 希望する配属先を聞かれたサイモンは、どこの部署でも全力で頑張ります、などと言い、ある部署に配属された。


 手抜きして楽に給料だけもらおうかと考えていたが、色々な事が目についてしまうサイモンが手抜きなど出来るはずもなく、気が付いたら先輩方から疎まれていた。


 仕事が出来すぎてしまったのだ。


 3ヶ月で転属となったが、同じ様に異動先でも疎まれてしまい、部署を転々とする羽目になった。若い事、いや、若すぎる事はサイモンの弱点になっていた。


 それでもサイモンはそれぞれの部署で普通では知り得ない情報を入手し、いろんな事を身につけていった。


 転んでもただでは起きない…。サイモンはそんな男でもあった。




 1年が過ぎ、もう大概のことは経験してしまったなと思っていた時に、サイモンは親衛隊のアレックス隊長から声をかけられた。


「自衛軍副司令官の秘書官になってみないか?

 今度、22歳の男が副司令官になるのだが、サイモンにその人物を支えてもらえたらと思っている。どうだろうか?」


「…何で私なのでしょうか?」

 と、サイモンはアレックスに真面目な顔で聞いた。


「…何で?

 サイモン、お前ができる男だからに決まってるじゃないか。若い副司令官とさらに若い秘書官。2人ならこの国に新しい風を巻き起こせると俺は思うのだが…?

 どうだろう、考えてみてくれないか?」


 サイモンはオファーを受けた。




 初めてマイケル副司令官に会った時、サイモンは驚いた。


 今までの配属先では、若造に物事を教えてやろうという上から目線で接してくる奴らばかりだったのに、マイケル副司令官は違ったからだ。


 いくつだと年は聞かれたが、だからといってどうと言うことはなく対等に接してくれた。


 先を読んで行動するサイモンに、気が利くな、と一言ったマイケル副司令官は嬉しそうだった。


 マイケルはサイモンの言葉もちゃんと聞いてくれた。そんなマイケルの側にいると、サイモンも何だか嬉しくなった。そして、仕事をしていて初めて楽しいと思った。


 サイモンはマイケル司令官の信頼を感じ、充実した日々を過ごしていた。




 仕事を一緒にする内に、副司令官は女に疎い、ということも分かった。


 騎士学校にいるエメリーという女の子に気があるのに、全く自分でわかっていない。エメリーと会うと何だかルンルンルンとしているのに、それにも自分で気づかない。


 サイモンは心の中であれこれと気を揉み、何やかやと年上のマイケルに助言をして、世話を焼いてしまった。


 エメリーが大佐として自衛軍に転属して来た時、サイモンはエメリーの秘書官も兼ねる様になった。仕事は忙しくなったが、マイケルの恋の成就を目指し、恋人のミミも巻き込んでいろんな事を画策した。



 エメリー大佐の18歳の誕生日に合わせて、マイケル司令官とエメリー大佐の三連休を捻り出し、大人気のホテルを予約したのもサイモンであった。


 帰って来た2人は本当に幸せそうだった。たった3日で、エメリー大佐はキラキラと輝く様な美しい女性になっていた。


 そして、ご機嫌な様子で帰ってきたマイケル司令官はサイモンにある依頼をした。


「ホテルにモノクルを着けた男と黒髪の女が現れて、俺たちを狙っていたんだ。

 その正体を探って欲しい」


 これまでに多くの部署で色々な事を経験し、様々な情報を持つサイモンでさえ、頭の中に何も引っかかりが出てこなかった。


 そんな時、エメリー大佐からの情報で道が開けた。星の刺青があるローズマリーの事も、イザベラという名前にも、サイモンは微かに聞き覚えがあったからだ。 





 イザベラの名前は二千年もの昔に起きた事件に出て来る。

 

 その事件とは王太子レオンの暗殺計画だった。


 王位継承二位であるイザベラ王女が暗殺計画の首謀者だとされ、婚約者ミハエルと共に処刑された。そして、'幻術' を使って2人を惑わせた罪で、イザベラの従者のジェラルドも無惨な方法で処刑されている。


 しかし、命を落とした3人は無実で王太子レオンの自作自演だったとサイモンは読み解いた。


 なぜなら、虚偽の証言をしたとして何人かが後に処刑されており、その後の事は歴史書には何も書かれていないからだ。王太子レオンの名前はそれっきり出てこない。


(王太子レオンは国王に始末されたな…)


 優秀なイザベラ王女に王太子の座を奪われると恐れた暗愚な王太子に死を与えられるのは国王だけだ。


 無実の3人は王国を恨みながら死んでいったことだろう。



 星の刺青を持つローズマリーの人格変化と失踪。ローズマリーをイザベラ様と呼ぶモノクル男。そしてミハエルという名は今の読み方にすると、マイケル。

 

 次に狙われるのはマイケル司令官だ。そのためにホテルで様子を見ていたのだとすれば辻褄が合うとサイモンは気付いた。


(イザベラとモノクル男以外の邪悪な何者かの意思が働いている。だけど、誰なのだろう)




 サイモンの心は焦る。


(もし、私がどこにでも飛んで行けたら…

 透視することができたら…

 シールドで攻撃を防げたら…

 姿を変えることが出来たら…

 私はもっとマイケル司令官の役に立てるのに…)


 サイモンは生まれて初めて、自分の頭脳を使ってもままならない事に直面した。そして、魔力のない自分が歯痒い、と唇を噛んだ。


 そんなサイモンにマイケル司令官は言った。


「サイモン、お前は俺の秘書官で参謀、片腕、相棒なんだよ。

 お前は俺にとって、いや、この国にとって、唯一無二の存在なんだ。

 だから、お願いだ。無理はしないで欲しい」


 マイケル司令官の言葉にサイモンは涙を浮かべた。


(マイケル司令官!俺は…俺は!

 あなたの役に立ちたい)

 

 17歳のサイモンは、生まれて初めて自分の存在意義を感じたのだった。


 そして、サイモンは邪悪なモノの正体を見極めるため、自衛軍の騎士ディック、ショーンと共にシュメール領へと向かった。







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