22 三連休 Day 2
連休2日目の朝。
目が覚めるとエメリーの隣にマイケルはいなくて、隣のダイニングルームから鼻歌が聞こえてきた。
そっとドアを開け隙間から覗いて見ると、マイケルがテーブルに朝食をセットしていた。
「おはよう、エメリー。
調子はどう?熱はない?だるくない?」
どれどれ…とエメリーの額に自分の額をくっつけて、マイケルは眉間に皺を寄せた。
「熱はないけど…ものすごく、具合が悪そうだ…」
「えっ?」
「だから今日も1日、俺に甘えていなさい。大人しく俺のそばにいるんだ。離れない様に。わかった?いいね?」
エメリーはふわっと抱き上げられて、そのままパウダールームへと連れて行かれた。
「終わったら俺を呼びなさい。それとも俺が手伝おうか?」
「もう、やだっ!私は普通に元気ですっ!
全部自分でするから、出て行ってくださいっ!」
マイケルは怒った顔も可愛いねとくつくつと笑っている。
着替えも済ませてエメリーがダイニングルームに戻ると、テーブルの上には朝食が並んでいた。
「朝食はルームサービスにしたけど、よかったかな?
エメリーが好きそうなものを頼んだけど、別のがよかったらまたオーダーしよう。俺は何でもいくらでも食べれそうだよ」
うん、私も!とエメリーが椅子に座ろうとすると、マイケルは右の人差し指を左右に振った。
「エメリー…そこじゃないよ」
えっ?
マイケルは、ここ!と座った自分の膝の上を指差す。
ええっ?
「知らないの?
ホテルに泊まったら、こうするのが普通なんだ」
(う、うそだ、そんなの!)
エメリーが大きく目を見開いていると、すっとマイケルに抱き上げられて、いつのまにか膝の上に横坐りになっていた。
「どれから食べる?」
まずはこれからだな、とマイケルが口付けして抱きしめる。
「うん、これはいいねぇ。キスしやすい。これから毎朝こうしよう!」
「そ、そんなのダメだよ。仕事できなくなるもん」
「へぇ〜、そうなの?ふぅ〜ん、いい事聞いたな。
エメリー、赤くなってる。かわいい!
さて、食べようか?
エメリー、どれにする?パンケーキかな?よしよし」
膝の上に座っていると暖かい。
見つめてくれるその顔にうっとりする。
体が熱くなってくる。
「エメリー、どうした?他のものが食べたいの?」
(ん…違うの…。ただ……)
「あのね…体が…熱いの」
エメリーはマイケルの首にしがみついて耳に唇を這わせた。
「それは…夜まで待って。いい子だから」
あれ、それ、と指差してあーんとして、その合間にいい子いい子とされて、食べ終わるまでエメリーはずっとマイケルの膝の上だった。
(体が熱い。
こんなの、反則だ!)
食事の後は森の中を手を繋いで歩いた。
鳥の声や動物の声が聞こえる。マイケルは片手にランチの入ったバスケットをぶら下げていた。
シートを広げて座り、マイケルはさっとシールドを張る。2人がいることに気づかない動物達が横を通り過ぎていく。
バスケットの中のサンドイッチやクッキーを食べて、温かい紅茶を飲み、2人で横になって見つめ合った。
マイケルはエメリーを腕枕し、もう片腕を腰に回して、エメリーを自分に引き寄せた。
「エメリーに話があるんだ」
(えっ?や、やだ!
辛い話は聞きたくない。今はやだ!)
マイケルには次々と縁談が持ち込まれているのを知ってる。それに、もう直ぐマイケルは爵位を賜るんじゃないか、と誰もが噂している。
(知ってるの。分かってるの。
マイケルは相応しい相手と一緒にならなきゃいけないって。
でも、やだ。今は…今日は聞きたくないよ。
聞かせないで、お願いだから)
「…っやだ!」
マイケルの胸に顔を押し当てて、やだやだやだやだと首を左右に振っていると、涙が止まらない。
「聞きたくない!わかってるの!
マイケルにはもっと相応しい人がいるって。
でも、お願い。この旅行が終わるまで待って。
お願い…」
「エメリー…。
ごめん。俺のせいだね。俺は、情けない男だ。
1番大切なエメリーに、そんな事思わせてたなんて…」
マイケルはエメリーと一緒に起き上がった。
エメリーの乱れた髪を手で整え、涙を親指でそっと拭うと、マイケルはエメリーを抱きしめてキスをした。
「エメリー、俺の話を泣かないで最後まで聞いて欲しい。大事な事を話したいんだ。いいかい?
エレノア様が王太子に即位されるまで、俺達は自分の事を優先できない。
でも、俺はエメリーの事が本当に大好きで…愛してる。ずっとそばにいて欲しい。そばにいたい。
一緒に御屋敷に住んでいるのに、今までちゃんと話した事がなかったから不安にさせてしまった…。ごめん」
マイケルは手の平の小さな箱を開けて、エメリーに見せた。
「俺はね、この指輪を渡したかったんだ。もし、エメリーが俺の事を愛してくれて、ずっとそばにいたいと思っていてくれるなら…」
「指輪?」
「うん、婚約指輪。
だから、エメリーの気持ちをちゃんと聞きたいんだ」
「私と…?」
「うん。俺はこんな男だろう?女性の気持ちが分からないヤツだって言われてる。だから、この前もエメリーを泣かせてしまった。
でもね、エメリー。俺はエメリーを愛している。いつもそばにいたい。そばにいて欲しい。
エメリー。俺の想い、受け取ってくれるかい?」
「マイケル…わたし」
「ん?ゆっくりでいいよ。今でなくても。返事はいつまででも待ってるから。
そして、まだ早いとか、婚約なんか嫌だと思うなら、そう言って欲しい」
うん、と頷くエメリーを抱きしめたまま、マイケルはつぶやいた。
「愛してるよ。心の底から」




