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続 The Lily 前世の記憶は邪魔である   作者: MAYAKO
第一章 礼羽編
15/95

【第15話】獣人族の姫・マートル・ガーディアン参上!(でもちょっとポンコツなの)  

今晩は。

投稿です。

今回、ほんのちょっと長いです。

原稿用紙一枚文くらいですが。

「氷獣が大量発生して、狩りに出たの」


 ……ごめんなさい、氷獣?全く分からないわ。

 狩り?ウサギ?鹿?


(ご主人さまン、これこれ!ナビナナ、見せましたよ?記録、ちゃんと読み込んでくださいよン!)


 脳内検索、視聴中。


 うげっ!

 魔獣じゃん!

 こんなモノが大量発生!?

 猛毒の爪!?どう対処するの?


「その時、真杖に捕まったの……」


 !!!!!!!!!!!!!!!!


「ひぅ」


 息が一瞬、詰まった。

 ぞくっ、とした。


 底知れぬ恐怖を感じた。

 勇者の存在には圧倒されたが、恐怖は少なかった。


 でも、この言葉は何だ!?

 嫌悪も感じるぞ!


「ぼく、交渉材料とか言われて……ぐすっ」


 さすさす。

 肩をさするクルミちゃん。

 ……クルミちゃん、優しいなぁ。


 母性?


 にぎにぎ。

 エノンはマートルの手を握っている。


 母性?


 ……で、私は?


 私は、思考中。

 どこと、どこの交渉だ?


 ナビナナ、情報が欲しい、何か知っている?知っていること全て話して!


(記憶の回復を推薦します、撃推しですわン!)


 記憶を回復した方が早いと?


(それだけではありませんわン。ナビナナの情報をそのまま伝えた場合、ご主人さまンの選択に支障が出る場合がありますわ、ン)


 支障?選択に間違いを犯すと?

 私は私だよ!

 今の私は異世界の力を使えるけど、異世界の私ではない。


 秋津川亜紀の記録も知っているけど、あれは違う世界の未来って感じだ。


 この世界に、アトロニアや、ローロンサみたいなオーバーAIは無い (多分)。

 藤木まどかさんも、遠い人に感じるよ?


 だって、私、知らないもん。


 前世で私を支えて、助けてくれた人。

 だけど、今はいない人だ。


 ん?


 なぜか、エノンに目が向いたぞ?


 亜紀さんにとって(一応年上だし、まあ、同じ私だけど)まどかさんは、今の、エノンやクルミちゃん、みたいな存在だろうか?


 彼女の生い立ちは、私以上に酷いと思う。

 私は、アイお母さんや小次郎お父さんがいるけど、彼女は……。


 それも、私として、受け入れろと?


 受け入れ、出来るかな?今の私には辛すぎないか?その記憶。

 不幸自慢はしたくないけど、母親の呪いの言葉は、無茶苦茶悲しいよ?


 ぽろっ。


 え!?


 涙が!?


「あ、アッキー?どうしたの?」

「アキくん!?どこか怪我している!?」

「い、いや、大丈夫だよ……昔の人の名前……」


 今の私には、もう、遠い名前だ。


 田崎という人も、校長先生も、清掃員さんも。


 ……。


 ?


 違う!そうじゃないっ!知らないわけがない!

 決して、忘れてはいけない名前だ!


 恩人?


 違う!命に繋がる名前だ!


(そうです、ご主人さまン、エンキドゥですわ、ン!)


「……エン……キ……ドゥ……?」


「え?」


 クルミちゃんは、知らない。


「ギルガメシュ叙事詩?」


 エノンは神話大好き、本大好きのゲーマーだから、知っている。


 え?


 マートル?


 私以上に大粒の涙を流し始めた。


「ぼ、ぼく、知っている!エンキドウ、まどかだ!」


「え?」


 マートルの、堰き止められていた感情が一気に溢れ出し、膨れ上がる!


「ううっ……ぼ、ぼく、ここだよぉお!まどかっまどかぁあ!まどかぁ!わああああああんっ!帰りたいっ!帰りたいよぉおおっ!」


「なっ!」


 耳を押さえても、直接脳に響く鋭い悲鳴!

 その叫び声は魔力を帯び、周囲に爆散される。


「まどかっ!シンお姉ちゃん!助けてぇ!ぼくを帰してぇ!」


 理科室のガラス窓は全て割れ砕け、壁にはベキバキと亀裂が走る。

 悲鳴を上げるエノンとクルミちゃん。


 そこに、割れたガラスが雨のように降り注ぐ。


 やばっ!


 無意識に身体が動く!


「速!」


 辺りがゆっくりと動き始める。

 身体が重い、思うように動かない?


 それでも窓側に回り込む!


 駄目だ!魔力が足りないっ!


 ガラスの破片に背中を向ける。

 破片は生き物のように動き、背中に深々と刺さる。


 このガラス、魔力を帯びている!?


 マートルを蹴り飛ばし、右手でエノンを、左手でクルミちゃんを摑み、部屋の中央に転がり込む。


 背中、痛し……。


 マートルから溢れ出した魔力……収まった?


 パラパラと、天井から埃や木片が落ちてくる。


「エノン?クルミちゃん?大丈夫?怪我は無い?」


「ごほごほっ、今の何!?」


「……」


「エノン!?怪我した!?」


 血の臭いだ!

 私の血じゃない、匂いが違う!エノン!?


 庇いきれなかった!?


「うう、痛い……」


 肘打ちにあった頬を切っている!

 血が!


「エノン見せて!」


 女の子のお顔に!

 ……深くはないけど、これ、残る?


「ん?」


 マートルが近づき覗き込む。


「アキ、ぼくを蹴ったでしょう!ひどいや!」


「ガラスのシャワー浴びるか?私の背中、見てみ?」


「!」


「ア、アッキー!?大丈夫?」


 驚き青くなるクルミちゃん。

 その様子を見るマートル。


「ふ、ふん、そのくらいの傷、獣人族だったらすぐに治るさ!」


「傷は治るが、痛いぜ?」


「う……」


「それにエノンは……」


「擦り傷じゃん」


 ぷちっ。


 なんか切れた。


 ゴチッ!


「ぎゃん!今度はぶった!?」


 頭を抑えて蹲るマートル。


「馬鹿者!獣人族じゃないんだぞ!そんな簡単に再生するか!痕が残ったらどうするんだっ!?」


「え!?あっ……ご、ごめんよ、ごめんよ?わざとじゃない、ぼ、ぼく……」


 エノンの流れる血を見て、更に青ざめるマートル。


「や、優しくしてくれたのに、ごめんなさい、ごめんなさいっ!どうしよう!?」


(ご、ご主人さまン、な、なんか来ますっ!高エネルギー2体、急接近ですわン!)


 カタカタと、床に散らばったガラスの破片や机、椅子が振動し始める。


「クルミちゃん、モップいいかな?」


 ロッカーからモップを取り出し、慌てて私に投げ寄越す。


 クルミちゃんやエノンは知っている。

 私のモップは凶器になることを。


「みんな、私の後ろに!早く!マートル!急げ!」


 勇者じゃない、でも、なんだ?

 強い、意思を感じるぞ!


 ドオオオオオオン!


 うひいいっ!


 校舎にぶつかった!?


 取敢えず、投げ付けられたブーメランのようなモノを3っほど、たたき落とす!


 校舎の天井、壁は吹っ飛び、青空が見える。


 挿絵(By みてみん)


「よく躱したな?その木刀で!」


 誰だ?マートルの追手か?


「……追手ではない、俺の名は藤木円、掠われた獣人族の姫、マートル奪還のためこの世界に来た」


 !!!!!!!!!!!


 自然と、座り込んでいるもう一人に目が行く。


「俺は、サイザン、薬師ニトと織り姫リュートの子、円と遊んでいたら、巻き込まれた」


「ぷっ」


 思わず吹き出すエノン。


「やっぱ、笑われるよなぁ、かっこわりぃや……」


 違う……こいつ、凄い魔力を隠している!


 勇者級だ!


「円お兄ちゃん!サイザンお兄ちゃん!」


 え?

 マートル?


「マートル、助けに来たぞ」


 長剣を背に載せている戦士円は、不適に笑った。

次回投稿は 2023/08/21 22時から23時の予定です。

サブタイトルは 【第16話】獣人族の姫・これからどうする?を用意しております。



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