【第15話】獣人族の姫・マートル・ガーディアン参上!(でもちょっとポンコツなの)
今晩は。
投稿です。
今回、ほんのちょっと長いです。
原稿用紙一枚文くらいですが。
「氷獣が大量発生して、狩りに出たの」
……ごめんなさい、氷獣?全く分からないわ。
狩り?ウサギ?鹿?
(ご主人さまン、これこれ!ナビナナ、見せましたよ?記録、ちゃんと読み込んでくださいよン!)
脳内検索、視聴中。
うげっ!
魔獣じゃん!
こんなモノが大量発生!?
猛毒の爪!?どう対処するの?
「その時、真杖に捕まったの……」
!!!!!!!!!!!!!!!!
「ひぅ」
息が一瞬、詰まった。
ぞくっ、とした。
底知れぬ恐怖を感じた。
勇者の存在には圧倒されたが、恐怖は少なかった。
でも、この言葉は何だ!?
嫌悪も感じるぞ!
「ぼく、交渉材料とか言われて……ぐすっ」
さすさす。
肩をさするクルミちゃん。
……クルミちゃん、優しいなぁ。
母性?
にぎにぎ。
エノンはマートルの手を握っている。
母性?
……で、私は?
私は、思考中。
どこと、どこの交渉だ?
ナビナナ、情報が欲しい、何か知っている?知っていること全て話して!
(記憶の回復を推薦します、撃推しですわン!)
記憶を回復した方が早いと?
(それだけではありませんわン。ナビナナの情報をそのまま伝えた場合、ご主人さまンの選択に支障が出る場合がありますわ、ン)
支障?選択に間違いを犯すと?
私は私だよ!
今の私は異世界の力を使えるけど、異世界の私ではない。
秋津川亜紀の記録も知っているけど、あれは違う世界の未来って感じだ。
この世界に、アトロニアや、ローロンサみたいなオーバーAIは無い (多分)。
藤木まどかさんも、遠い人に感じるよ?
だって、私、知らないもん。
前世で私を支えて、助けてくれた人。
だけど、今はいない人だ。
ん?
なぜか、エノンに目が向いたぞ?
亜紀さんにとって(一応年上だし、まあ、同じ私だけど)まどかさんは、今の、エノンやクルミちゃん、みたいな存在だろうか?
彼女の生い立ちは、私以上に酷いと思う。
私は、アイお母さんや小次郎お父さんがいるけど、彼女は……。
それも、私として、受け入れろと?
受け入れ、出来るかな?今の私には辛すぎないか?その記憶。
不幸自慢はしたくないけど、母親の呪いの言葉は、無茶苦茶悲しいよ?
ぽろっ。
え!?
涙が!?
「あ、アッキー?どうしたの?」
「アキくん!?どこか怪我している!?」
「い、いや、大丈夫だよ……昔の人の名前……」
今の私には、もう、遠い名前だ。
田崎という人も、校長先生も、清掃員さんも。
……。
?
違う!そうじゃないっ!知らないわけがない!
決して、忘れてはいけない名前だ!
恩人?
違う!命に繋がる名前だ!
(そうです、ご主人さまン、エンキドゥですわ、ン!)
「……エン……キ……ドゥ……?」
「え?」
クルミちゃんは、知らない。
「ギルガメシュ叙事詩?」
エノンは神話大好き、本大好きのゲーマーだから、知っている。
え?
マートル?
私以上に大粒の涙を流し始めた。
「ぼ、ぼく、知っている!エンキドウ、まどかだ!」
「え?」
マートルの、堰き止められていた感情が一気に溢れ出し、膨れ上がる!
「ううっ……ぼ、ぼく、ここだよぉお!まどかっまどかぁあ!まどかぁ!わああああああんっ!帰りたいっ!帰りたいよぉおおっ!」
「なっ!」
耳を押さえても、直接脳に響く鋭い悲鳴!
その叫び声は魔力を帯び、周囲に爆散される。
「まどかっ!シンお姉ちゃん!助けてぇ!ぼくを帰してぇ!」
理科室のガラス窓は全て割れ砕け、壁にはベキバキと亀裂が走る。
悲鳴を上げるエノンとクルミちゃん。
そこに、割れたガラスが雨のように降り注ぐ。
やばっ!
無意識に身体が動く!
「速!」
辺りがゆっくりと動き始める。
身体が重い、思うように動かない?
それでも窓側に回り込む!
駄目だ!魔力が足りないっ!
ガラスの破片に背中を向ける。
破片は生き物のように動き、背中に深々と刺さる。
このガラス、魔力を帯びている!?
マートルを蹴り飛ばし、右手でエノンを、左手でクルミちゃんを摑み、部屋の中央に転がり込む。
背中、痛し……。
マートルから溢れ出した魔力……収まった?
パラパラと、天井から埃や木片が落ちてくる。
「エノン?クルミちゃん?大丈夫?怪我は無い?」
「ごほごほっ、今の何!?」
「……」
「エノン!?怪我した!?」
血の臭いだ!
私の血じゃない、匂いが違う!エノン!?
庇いきれなかった!?
「うう、痛い……」
肘打ちにあった頬を切っている!
血が!
「エノン見せて!」
女の子のお顔に!
……深くはないけど、これ、残る?
「ん?」
マートルが近づき覗き込む。
「アキ、ぼくを蹴ったでしょう!ひどいや!」
「ガラスのシャワー浴びるか?私の背中、見てみ?」
「!」
「ア、アッキー!?大丈夫?」
驚き青くなるクルミちゃん。
その様子を見るマートル。
「ふ、ふん、そのくらいの傷、獣人族だったらすぐに治るさ!」
「傷は治るが、痛いぜ?」
「う……」
「それにエノンは……」
「擦り傷じゃん」
ぷちっ。
なんか切れた。
ゴチッ!
「ぎゃん!今度はぶった!?」
頭を抑えて蹲るマートル。
「馬鹿者!獣人族じゃないんだぞ!そんな簡単に再生するか!痕が残ったらどうするんだっ!?」
「え!?あっ……ご、ごめんよ、ごめんよ?わざとじゃない、ぼ、ぼく……」
エノンの流れる血を見て、更に青ざめるマートル。
「や、優しくしてくれたのに、ごめんなさい、ごめんなさいっ!どうしよう!?」
(ご、ご主人さまン、な、なんか来ますっ!高エネルギー2体、急接近ですわン!)
カタカタと、床に散らばったガラスの破片や机、椅子が振動し始める。
「クルミちゃん、モップいいかな?」
ロッカーからモップを取り出し、慌てて私に投げ寄越す。
クルミちゃんやエノンは知っている。
私のモップは凶器になることを。
「みんな、私の後ろに!早く!マートル!急げ!」
勇者じゃない、でも、なんだ?
強い、意思を感じるぞ!
ドオオオオオオン!
うひいいっ!
校舎にぶつかった!?
取敢えず、投げ付けられたブーメランのようなモノを3っほど、たたき落とす!
校舎の天井、壁は吹っ飛び、青空が見える。
「よく躱したな?その木刀で!」
誰だ?マートルの追手か?
「……追手ではない、俺の名は藤木円、掠われた獣人族の姫、マートル奪還のためこの世界に来た」
!!!!!!!!!!!
自然と、座り込んでいるもう一人に目が行く。
「俺は、サイザン、薬師ニトと織り姫リュートの子、円と遊んでいたら、巻き込まれた」
「ぷっ」
思わず吹き出すエノン。
「やっぱ、笑われるよなぁ、かっこわりぃや……」
違う……こいつ、凄い魔力を隠している!
勇者級だ!
「円お兄ちゃん!サイザンお兄ちゃん!」
え?
マートル?
「マートル、助けに来たぞ」
長剣を背に載せている戦士円は、不適に笑った。
次回投稿は 2023/08/21 22時から23時の予定です。
サブタイトルは 【第16話】獣人族の姫・これからどうする?を用意しております。




