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私の決定事項

私は目を覚ます。


ん?ここどこだっけ...


私は見慣れない天井にそんなことを思った。


そういえば、私、救護室で寝ていたんだったね...


壁にかけてある時計を確認する。

夜中の3時を指していた。

外は暗くなってしまっている。


確か、ここまで運んでもらって、寝かせてもらった瞬間、眠気が襲って、寝たのかな...


残っている記憶の断片をつなぎ合わせて、そう、結論を出した。

カーテンを挟んだ横のベッドにアリスも念のためと言われ、寝かされていたね。


今は寝ているだろうけど...


私はベッドに寝たまま、腕を確認する。

所々、包帯が巻かれている。

寝ている間に治療してくれたのだろう。


私のベッドの位置はすぐ隣が窓になっている。

私は夜中だけど、目が冴えてしまったので、一度、ベッドから出て、窓の方に向かうことにした。


「痛いっ!」


起き上がろうと、力を入れると、体の至るところが悲鳴をあげた。


夜中に大きめの声を出してしまったので、アリスを起こしてしまったかもしれない。

私は静かに、アリスとの境にあるカーテンの方を見る。


特に動きはなさそうだ...

セーフセーフ...


私は慎重に立ち上がり、窓のところに行き、カーテンを少し開ける。

月の明かりが私の顔を照らし、私の白い肌を銀色に染める。


窓から、辺りを見渡すと、一年生の校舎、そして、私の寮がある森が見えた。


そういえば、ヒカリは元気にしているかな...


遠足で魔物が出て、別れて、あれから、一度も会っていない。

ヒカリにはしっかり、お礼を言わないとね。

ヒカリが救援を呼んでくれたから、先輩方が駆けつけてくれたのだから。


結果的には、私とアリスがプルトナーガを倒した。

でも、あれはとっさに思いついた一か八かの賭けだった。

もしヒカリが救援を呼んでなく、私たちが討伐に失敗していたらって思うと少しゾッとする。


初級ダンジョン10階層には、1年1組のクラスのメンバーが遠足をしていた。

襲われて、怪我で済めば、まだしも、死人だって出てもおかしくない魔物だった。


うんん、そうやって、悪い結果になったことを考えたらキリがない。

せっかく、いい結果になったのだから、そこは喜ばないと...

まあ、遠足が無事に終わってよかったね。


私はそんなことを考えながら、ボーッと暗い窓の外を眺めていた。

そんなことをしていると、後ろでカーテンが、シャッと開いた音がした。

私は振り返る。

アリスがベッド脇に立っていた。


「アリス...?」


いつもとは違う、アリスの表情に私も一瞬、思考が止まるが、すぐに話しかける。


「ごめん、アリス、起こしちゃったよね」


私は、このまま、カーテンを開けっぱなしにするのも悪いと思って、カーテンを閉めようと、振り返って、カーテンを握る。

その時、ダッと、アリスが近づく音が聞こえた。

カーテンを握る手が、アリスの手によって制止される。

アリスはそのまま、後ろから覆いかぶさるように抱きついてくる。


アリス...?


いつもとは違うアリスを見て、私は、心配になった。

私は体の痛みも忘れ、少しの間、その状態で、アリスの好きなようにさせてあげた。


しばらくの沈黙の後、私の右肩に、温かい、雨が、降り始める。

私はアリスにゆっくり優しく、話しかけた。


「アリス...どした?」


私は空いている左手を、私の右肩あたりにあるアリスの顔にそっと、触れる。


「キミハ...私...私...」

「うん...」

「私...」

「ゆっくりでいいから...」

「私はあなたに...ひどいことを...したの...ごめんなさい...」


私はひどいことをされた覚えが全然なかったので、どのように答えてあげたらいいか分からなくなる。


とりあえず、落ち着いて、話を聞いてあげよう...


「アリス、座って話そうか」

「はい...」


私とアリスは窓の方を向いて、私のベッドに並んで腰掛ける。

アリスは私に顔を合わせずらそうな表情をしている。

座ったからなのか、間を取ったからなのか、アリスは少し落ち着いたようだ。


「アリス、お話を聞かせて」

「私は...キミハに...退学をしてもらいたいがために...嫌がらせをしていたのです...」

「うん...」

「まず初めは、委員のお仕事をキミハに全て、押し付けました。そうすれば、キミハが決闘に巻き込まれ、ブレスレットを奪われ、私がそれを糾弾することで、退学に追い込もうと考えたのです」

「でも、それは、確か...私が学年序列一位だったから...」

「ええ、そのような声もありましたから、私は、それを利用したのです」

「うん...そっか...」

「それだけではありません。あなたが一生懸命、手書きでコピーしたプリントを私はひっくり返し、さらに、魔法陣の授業では、魔法陣を自由に使えないあなたに魔法陣を使って戦って、魔法陣使いとして、ハンターとして、復帰できないような怪我を負わせることも考えていました」

「うん...」

「ヒカリを貴族に襲わせたのも、私です。あなたとヒカリを亡き者にしようとしたのも私です。そして、今回、AAAランクの魔物であなたをまた、襲ったのです...」

「うん...」

「私は、私は、大きな罪を犯したのです...」

「うん...」


少しの間、沈黙が訪れる。


アリス...私はあなたを信じるよ...


私は、アリスに声をかける。


「アリス...遠足の時、仲良くしてくれたのは、嘘だったの...?」


いきなり、私から質問をされて、アリスは動揺する。

が、小さな声で答えた。


「はい...」


私は質問を続ける。


「名前で呼んでいいよって話になった時、喜んでいたのも嘘だったの...?」

「はい...」

「私がスープを作った時も...?」

「はい...」

「美味しいって言ってくれたのも...?」

「はい...」


アリスは俯き、小さな声で答える。

まるで、そのように答えるように、と誰かに脅されているかのように...


私は立ち上がり、俯く、アリスの前に膝立ちになって、両肩を掴む。

そして、アリスの心に届くように、突き刺さして、殻を破るようにアリスの顔を見て、質問する。


「じゃあ、私が魔物と戦っているとき!助けに来てくれたのも!一緒に戦ってくれたのも!嘘だったの?」


アリスはどうしても答えられず、両手を口に当て、泣き出してしまう。

その質問に答えたくないと答えてくれたように思えた。


アリスには抗えない、命令を聞かないといけない、そんな対象がいるのだろう...

アリスが逆らえない対象には私も察しがつく...


私は、アリスの両肩を握ったまま、今度は親身に語りかけるように優しく質問した。


「ねえ、アリスの本当の答え、アリスの本当の気持ち、聞かせて...アリスは私のこと、退学させたかったの?亡き者にしたかったの?」


アリスは、両手を口に抑え、滝のような涙を流し、俯いたままだったが、静かに、首を振って、答えてくれた。

今度は私がアリスを上から抱きしめる。


「うん、アリス、1人でよく頑張ったね...その気持ちは、私に届いているから泣かないで...」

「どうして...そんなに優しくするの...私はあなたに...」

「もう、アリス...アリスが本当に悪い子だったら、今、謝ったりしないでしょ」

「たとえ、私が命令されて、罪を犯したとしても、私の罪は私の罪です。許されるわけではありません...」

「うん、そうだね。罪は罪かもしれない」

「はい...」

「でもね、アリス、あなたは、最後、どのような選択をしたの?あなたは私を助けたいって思って、AAAランクなんて殺されてもおかしくない魔物の元に帰ってきてくれたんじゃないの?あなたは私を助けるって選択を最後にしたんじゃないの?」

「それは...」

「それがあなたの答えだったんでしょ。そんなアリスを、友達である私を助けたいと願ったアリスを、軽蔑するはずがないでしょ。私は今でも、アリスから話を聞いた今でも、アリス、あなたは私の大事な友達だよ!」

「ありがとう...キミハ...ありがとう...」


貴族だからって、生きやすいわけじゃない...

上流の貴族になればなるほど、無下にできないことが増えていく...

元々、貴族、うんん、王族であった私にはそれが痛いほどよくわかる...


私はアリスが落ち着くまで、待ってから、話しかける。


「アリス、これからも、よろしくね」

「いえ、私は、おそらく、退学でしょう。それに、家名も捨てさせられるかもしれません。私はお父様の命令を無視して、あまつさえ、その作戦を台無しにしてしまったのですから...」

「そんな...」

「そんな顔しないでください...私が死ぬわけじゃないんですから...今、あなたに大切なものを心に頂きましたから、私はどのような境遇になろうとも、決して負けません」


確かに、肉体的に死ぬわけじゃない、でも、それは、社会的には死ぬっていうこと...


「ねえ、アリス、あなたは、学校を辞めたい?」

「いいえ、もちろん、辞めたくなんてありません...でも」


アリス自身はやめたくないようだ。

それなら、やることはひとつだね。


「アリス、魔物から助けてくれてありがとう」


私は立ち上がる。そして、続ける。


「今度は私があなたを助ける番」


アリスは顔を上げる。


「キミハ...私のお父様の相手をすれば、王国が相手になってしまいます...巻き込むわけには参りません」


アリスは私の目を見て答えた。

私も、目を見たまま、アリスに言う。


「アリス、私はね、あなたが笑って暮らせる平和を手に入れるためだったら、王国が敵になろうと味方になろうとどうでもいいんだよ。それよりも、友達のあなたが笑えない王国なんて、クソ食らえなんだよ...」


私はできる限り、優しく、アリスに声をかけたが、心の中は王国に対して、怒っていた。


「そんなの、そんなの、ダメです!キミハ!やめて、そんなことしたら、あなたまで!」

「今度は私が頑張る番だから。私があなたを守ってあげるから...」

「ダメです!そんなの、もう、キミハを巻き込めません!」


ここまでは心から話していたのだが、アリスが快く受け入れないので、私はだんだん、めんどくさくなる。


「もう、アリスの分からず屋!」

「分からず屋でもいいです!これ以上は!」

「わかった、じゃあ、私も退学とかになったら、一緒にハンターになって、パーティを組も?それがアリスの罪に対する罰ね」


アリスは一瞬、それも楽しそうという顔をして、真面目な顔に戻る。


「なんで、あんたはこんな時にそんなことを言えるんですか!」

「アリス、君は私にとって、全てだからさ」


私はナルが話していた王子様のような身振りをする。


「もう、ふざけないでください!」


私は真面目な顔に戻る。

私とアリスは見つめ合う。

少しの間を置いてから話す。


「アリス、今のあなたを助けなかったら、私、一生、後悔すると思うんだ。なんで、アリスを、友達を助けなかったんっだろうって。それなら、王国を相手に回してしまって、やっちゃったって、後悔するほうがよっぽどマシなんだよ。アリスは後悔すると思っている道を選ぶ?...選ばないよね?そういうこと...」


この言葉はアリスを少しだけ納得させたようだ。


「あなたという人は...敵いませんわ...今でも、そうやって、人を助けていますのね...」


今のアリスの言葉に、脳に電撃が走る。

私は2年前にハンター時代に助けた女の子を、ふと思い出した。


「ちょっと待って!アリス、もしかして...お忍び旅行していたお嬢様の!」

「今更すぎですわ!それに話を折りすぎですわ!」

「いやだって、アリス、あの時よりも可愛くなってるから!」

「そんなことを言っても、私は、あなたが王国に喧嘩を売ることは許しません」


アリスはプイッとそっぽを向いてしまった。

私の話に納得しかけていたのに、私はつい、やらかしてしまったようだ。

話は振り出しに戻った。


また、少しの沈黙が訪れる。

沈黙を破ったのはアリスだった。


「あの時も、こんな言い合いをいたしましたわよね」

「うん、やったね...」


2人で2年前のことを思い出す。

アリスはお忍び旅行のお嬢様で、私はそんなアリスを護衛するハンターとして...


「あの時は私が、大々的にキミハに褒賞を差し上げたいと駄々をこねましたわね」

「うん」

「そんな私にキミハは言ったのですよね。『私がお嬢様をお助けしたのは、お嬢様にお礼の品をいただくためでも、ましてや、王国から褒章を受け取るためでもないのです。今、お嬢様の笑顔を守れていかったら、私はなんで、お嬢様を守れなかったのだろうと後悔していたことでしょう。そんな後悔をしたくないがために私はお嬢さまを救ったのです。お嬢様、私は褒章をいただきたいが為にお嬢様を救う俗物になったほうがよろしいでしょうか?』って」

「うん、言った。改めて言われると、恥ずかしいよ...そんな私にアリスは言ったんだよね。『あなたには敵いませんわ...。私もあなたのように、王国のみなさんの笑顔を守れる立派な魔法陣使いになりますわ。約束いたします』って」

「はい。それにキミハは答えましたよね。『はい。約束です。私もお嬢様に負けないよう、研鑽を重ねますね』って。当の本人はその約束を忘れていたみたいですけれど...」


アリスはむぅ、と頬を赤らめながら怒り顔をしている。


全然怖くない...むしろ可愛い...

アリスは、あの時のお嬢様だから、私が魔法陣が使えることを知っていたんだね...すべての謎は解けた...

私はこの子の力になってあげたい...


「アリス、友達として、あなたを救いたい、これは私の決定事項なの...でもね、あなたが乗り気じゃなかったら、私もアクセル全開で戦えないよ...アリス、もう一度聞くよ、あなたはどうしたいの...?」


私は心に届くように語りかける。

アリスは少しの間、考える。


「私は...あなたとこれからもこの学校で一緒にいたい...です」


私はその答えに顔を輝かせる。


「うん、分かった!私があなたを救う!」

「キミハ!王国を敵に回すのになんで、そんな笑顔ですの!」

「だって、アリスが本心を私に言ってくれるから嬉しくて!なんか告白されたみたい!」

「もう!やるからには、あなたを悲しませるようなことにするわけにも参りません!絶対に勝つのです!私ももちろん戦います!これは私の決定事項です!」


私たちは笑い合った。

朝日がのぼり、窓から、日が差し込んで来る。


私はアリスを守るため、アリスは自分の環境と私を守るため、戦うことを決意した。

次回は、アリス視点で、お嬢様のアリスとハンターのキミハの過去のお話です。

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