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クルスの末路

クルス視点です。

クルスは太めな貴族の人です。

ご注意ください。

俺の名はクルス・タガルナード。

この王国で一番偉い貴族と言っても過言ではない。

いや、お父様とお母様が一番偉いから、2番目といえば2番目か。


俺は年少期の頃から、豊富な魔力を持ち合わせていた。

まあ、偉い貴族なのだから、当然なのだ。

家で雇った魔法陣の訓練を指導する教師どもは、もっと、体術を鍛えて、柔軟に対応できるようにしなさいとかほざきやがる。

この俺に向かって、指図するとは、頭の悪い奴らだ。

身分の差も分からないのか。

6人の教師を解雇した後、やっと、魔法陣だけを教える教師に巡り合えた。

ふん、苦しゅうない苦しゅうない。


俺は12歳になったので、魔法陣を学ぶ学園に入学した。貴族の学校だ。

魔法陣を使って攻撃できる俺はすでに、学園のトップクラスの魔法陣使いだろう。

偉い貴族なのだから仕方がない。

同じ学年になった奴らには同情してやるぜ。ふっ、かわいそうだな。


入学する前、俺はカナフィルディア伯爵にお茶に招かれた。

まあ、偉い貴族の俺に媚を売るのは当たり前だな。

おっさんとのお茶に付き合ってやるかと屋敷に行ってやった。

伯爵によると、なんでも、今年は学園に二人の平民が入学するらしい。

貴族の学校に、入るとは身分も理解していないガキだろう。

伯爵はその平民共を退学に追い込んで欲しいらしい。

そんなのは簡単だ、貴族の命令で奴隷にする。そして、奴隷に命令して、退学させる。

偉い貴族の俺には簡単だ。

カナフィルディア伯爵の娘も今年入学するらしい。

偉くない下流の貴族にはその程度のこともできないのだろう。

さしずめ、その娘が親に頼み込んだに違いない。

平民と同じ空間で息を吸うと、寿命が縮みそうだしな。

その娘とは話が合いそうだぜ。


俺は入学式の日を迎えた。


入学式で風紀委員長と紹介されたのは平民だった。

身分を弁えられない奴は滑稽だな。

後で、命令して、引き下ろしてやろう。


俺は1年10組になる。

ハハハ、1番大きい数字じゃないか!

やはり、偉い俺は一番に限る。


入学式が終わり、クラスで委員を決める。

ここは、他の貴族共に譲り、都合よく、操作するのが偉い貴族のやり方だな。

お父様も、自らが職につくのではなく、自分が推薦したやつを職に就かせ、都合のいいように操作していた。

そう思っていたが、一人の生徒が俺を委員長に推薦しやがった。


「クルスさんは貴族としての地位も高いので委員長になれば他のクラスを圧倒できるのではありませんか?」


ハッハッハ、身分をしっかりと弁えている奴がこのクラスにいるとはな。

やはり、俺のクラス!レベルが高いじゃないか!

そいつに免じて、会計委員ならしてやるか。

風紀委員長が平民だからな、すぐに引きずり下ろせばいいが、一瞬でも、平民の下につくのはごめんだ。

クラスの話し合いの末、俺は会計委員になった。

会計委員はこの後すぐに会計委員会があるそうだ。俺は会計委員会に向かった。


部屋に入ると、学年ごとに座る位置を決められているようだった。

俺は、決められた位置のすぐに一番前に座る。

会議が始まるのを待っていると、平民の一年生のガキが入ってきやがった。

しかも、そのブレスレットを見ると、三色の宝石がついている。

ハッハッハ、貴族の誰かに虐められたのか?滑稽だな。

善は急げだ。すぐに奴隷にしてやろう。

決闘を申し込んで、脅してやればすぐに、奴隷になるだろう。

平民は魔力が無いに等しいからな。

戦っても圧倒的な戦力差で痛い思いをすることは避けられない。

痛い思いは避けたいと思うだろう?

偉い俺は頭の回転も早いのだ。

天は俺にたくさんのものを与えすぎたようだ。


俺は会議の最後で平民のガキに決闘を申し込んで脅した。

あいつは、俺の声が聞こえないようだ。

まあ、偉い貴族に話しかけられるとは思わないだろうから、多めに見てやろう。

俺の声がやっと届いたようだ。

しかし、あいつは決闘を受けるようだ。

頭の悪いガキだ。偉い貴族の魔力量も知らないらしい。

しかも、俺のブローチを破壊する気満々だそうだ。

頭が悪すぎて笑えてくるぜ。

結局、互いのブレスレットをかけた決闘を行うことになった。

見届け人を念には念をいれ、俺のクラスに委員長にしてやろうかと思ったが王族のシャティリアがやると言って引かなかった。

まあ、いいだろう。


決闘のため、俺たちは向き合う。

あいつはナイフ型の魔剣を取り出す。

ハハハ、魔力が足りないのだろう。

ナイフとは笑わせてくれる。


貴族の凄さを見せつけてやるか。

俺は開始とともに魔力を最大にしたファイアボールをあいつに放った。

勝負は決したな。これが偉い貴族の力だ。

しかし、あいつはファイアボールに突っ込んで行った。

その小さな体はファイアボールに隠れ、全く、見えない。

頭が悪すぎて死んだか?

次の瞬間、ファイアボールは制止し、あろうことか、俺に引き返してきた。

なんだ?何が起こった?

魔法陣の不具合だろうか?俺に従わないファイアボールなど必要ない。

俺は、魔剣を上に振り上げて、振り下ろす。

これでファイアボールは消える…消えない?

俺は何度も何度も繰り返すが消えない!

なんだ!

ファイアボールを避けるしかない。

くっ、追跡しやがる。


グアアアア。


ファイアボールが俺にぶつかって爆発する。


くそ、なんだ!


俺は仕方がないので魔剣で斬りかかる。

馬鹿なあいつは、魔剣を懐にしまってやがる。

この俺がファイアボールを喰らって、気でも失ったと思いやがったのか。


しかし、その剣はシャティリアに止められる。

なんだ、平民を庇うのか?

落ちぶれたな、王族。

シャティリアは、自分のブローチを確認しろとか言ってくる。

ファイアボールごときで破壊されるとでも思っているのか?

俺はブローチに触れる。

ブローチは真っ二つになり光となって消えた。


何?なんで勝手に真っ二つになるんだ?


まさか、このシャティリアが俺を嵌めやがったな。

神聖な決闘で、そんなことをするとは、貴族の風上にも置けないやつだ。

俺はすぐにシャティリアを尋問してやろうと、問いただそうとした。

しかし、シャティリアはすぐに平民の風紀委員長に拘束を指示した。

けっ、平民にお粗末な拘束をやらせるとは、偉い貴族の俺ならすぐに抜け出してしまうぞ。

馬鹿な貴族だ、頭の回転も遅いのか。

同じ貴族として、嘆かわしい限りだ。

俺は拘束魔法をかけられたが、すぐに抜けようとする。

なんだ、魔法陣が起動できない。

平民のくせに、魔力を無効化する構造を持つ、魔法陣をかけたのか。

なんだ、偉い俺を拘束するとはなんだ!


俺は風紀委員会本部の拘束室に拘束される。

錠で繋がれ、誰もいなくなる。


少しして、シャティリアが戻ってくる。

シャティリアは錠を外し、ブレスレットを渡せと言った。

俺はブレスレットを渡すフリをして、攻撃魔法陣を起動しようとした、すると、シャティリアは俺の腹に後ろ回し蹴りを繰り出した。

俺の魔力の波動を圧倒的に上回る魔力の波動を持ったシャティリアの攻撃は俺の魔力の波動を貫通して、俺にダメージが届く。

俺は痛みでうずくまる。


この俺を傷みつけるとは何様のつもりだ。

俺より、偉いつもりか!

シャティリアは俺のブレスレットを奪い、両手を錠にまた、つなぎやがった。

許せない!俺のお父様の力を借りて、あいつも奴隷にしてやる。

後で泣きついても許さない。どちらが偉いのか体に教え込んでやる!


俺はその後しばらくしてきた、平民の風紀委員長によって、拘束を解かれた。

俺は、平民を睨む。そして拳を繰り出す。

平民は軽く避ける。

魔法陣を使わない肉弾戦は偉い俺には似合わないからこれくらいにしてやろう。

平民に触れる度に、俺の品格が下がるからな。


明くる日、むしゃくしゃしながら、俺は学園にきていた。

昨日の決闘をした平民を見つけて、傷みつけてやろうと思ったのだ。


すると、袖口が灰色のデザインをしたツインテールのガキが鼻歌を歌いながら、校内を歩いてやがった。

ここは、貴族の通う学校だぞ。汚い平民が歩いたら、歩いた場所が汚れるだろう。


俺はすぐに、その汚物を排除するために動いた。


「おい、そこの平民、校内を歩くな!汚れるだろう?」

「は、はい、すいません」


ガキは俺に恐怖しながら、謝る。

一応、立場は弁えているようだな。

賢い平民だ。仕方がない、俺の奴隷に加えてやろう。

偉い俺の奴隷になれるのだ。光栄なことだろう。


「おい、お前、俺の奴隷になれ」


ガキは驚いた顔を見せる。それはそうだろう。偉い俺に奴隷にしてもらえるなんて思いもしなかっただろうからな。


「そ、それは、お断りし、します…」


今、なんと言った?

お断りしますだと。

この俺のこの偉い俺の命令を断るのか。

賢い平民だと思ったのは勘違いだったようだな。

俺はガキの両手の手首を片手で掴み、壁に押さえつける。


「おい、もう一回、聞いてやる。俺の奴隷になれ」

「お、お断りします!」


さっきよりも、本気の目で断ってくる。

ここまで、馬鹿な平民は滑稽だ。

仕方がない平民という身分をわからせてやるか。


俺は取り巻きのクラスの貴族に指示し、そのガキを拘束させる。

流石に拷問は人の目につくところではやるべきではない。

お父様も拷問は地下の隠し部屋で行っていたからな。


確か、カナフィルディア伯爵の話によれば、森の中にダンジョンがあったはずだ。

凶悪な魔物がウジャウジャいるであろうダンジョンは偉い俺のような貴族の魔法陣使いしか突破できないであろう。

誰の目にもつかない最高の拷問部屋だ。


俺たちは適当にダンジョンを降り、5層まできた。

ここらでいいだろう。


俺は風の魔法陣で、ダンジョンの天井近くに浮上した。

そして、鎖つき手錠の鎖の先端を杭でダンジョンの天井に打ち付けた。

地面におり、平民のガキの両手首を錠で拘束し、吊り上げた。

ちょうど、平民は爪先立ちになる。


ふっ、いいざまだ。貴族の命令に従わないからこうなるのだ。

俺は平民のブレザーを魔剣で切り刻み、さらにはシャツを切り刻み、下着姿にしてやった。

大体の女はこれで降伏して、奴隷になる。これまでもそうだった。

しかし、この平民は違うかった。


「おい、俺の奴隷になるか?」

「絶対に絶対になりません」


先ほどまでより、このガキの目は、本気になっている。

絶対に俺の奴隷にならないという意思さえを感じる。

こいつ、優しくしてやったからって図にのるな!


上の下着もスカートも切り裂いてやった。


「おい、降参するなら、ここで、やめてやってもいいぞ」

「何をされても、あなたなどに付き従うつもりは、毛頭ございません」


ガキの目に石の光が灯っている。

なんなんだ、お前は!

服を切り裂く程度ではこの平民を屈服させることはできない。

なら、手段は1つだ。

俺は魔剣を鞘に納め、次の行動に移そうと、平民に近づく。


その時、足音が聞こえた。


「なんだ!」


俺は横を見て確認する。瞬間、俺は地面を転がる。

顔が痛い。

そこには決闘をした、平民がいた。

平民はすぐに、鎖を切って、ガキを助けた。

その後、俺に向かって、決闘を申し込んできやがった。

馬鹿なやつだ。

たまたま勝てたにもかかわらず、自分の実力で勝ったとでも思っているのか。

こともあろうに、5人でかかってこいだと、片腹痛いわ。

俺は当然、決闘を受けた。

開始と同時に二人の貴族が平民にのされた。

だらしない貴族だ。

俺のような偉い貴族じゃないと平民にも負けるのか。


俺が平民に攻撃しようと思った時、魔物が現れた。

偉い貴族がいてるのだ。

何も、魔物も俺を襲わないだろう。

襲うのは平民のはずだ。

俺は平民に…



なんだ、俺は気を失っていたのか?

まあいい、奥でドラゴンと戦っている平民がいる。

とりあえず、決闘を終わらせるために、平民を攻撃する。


俺は駆け出す。

ひれ伏せ、平民。


横から、ドラゴン!


ドラゴンが見えたと思った時には、俺は壁に叩きつけられていた。


貴族の俺を襲うとは!

許されないぞ、お前!


ドラゴンはブレスを吐く。


おい、俺は偉い貴族だぞ!


俺はその時、気を失った。



俺は目を覚ます。

また、手が錠に拘束されている。

しかし、今度はすぐにシャティリアに拘束を解かれた。

当たり前だ、俺は偉い貴族なのだからな。


「あなた、カナフィルディア伯爵と繋がっているのね?」


こいつは何を言っているんだ?

繋がっているとはなんだ?


「あなたの拘束を解くように上に圧力をかけたのはカナフィルディア伯爵よ」

「だったら、なんだって言うんだ」

「いいえ、特には」


カナフィルディア伯爵は俺に媚びを売るために動いてくれたようだ。

そのうち家臣にしてやってもいいかもな。

賢い貴族は大好きだ。


その後、カナフィルディア伯爵から、通達が届いた。

ダンジョンの5階層に縦穴、ダンジョンの7階層に回廊魔法陣を設置したのでそれを利用して、平民を殺すように、と。

ツインテールの平民、ヒカリには弟がいる、それを利用しなさい、と


なんだ、カナフィルディアのお嬢様は平民を殺したいのか。


まあ、いいだろう、

付き従うのは、俺の性に合わないが、一応拘束を解くように圧力をかけてくれたようだから、その話には乗ってやる。


俺は一人で歩いていたツインテールの平民に弟を誘拐したと脅す。

助けて欲しくば、平民のもう一人の女を縦穴に落とし、それが終われば報告に来るようにとな。


ハッハッハ、完璧だ。

頭の回転の速い偉い貴族の俺には簡単すぎたな。


俺はツインテールの平民を置き去りにして、ダンジョンを出る。

すると、そこには、シャティリアがいた。


「なんだ、お前?やるのか?」


俺は魔剣を抜こうとする。シャティリアはまたもや、後ろ回し蹴りで俺を吹き飛ばした。

俺はダンジョンの壁に体を打ち付ける。

お腹が痛い。背中が痛い。

おい、偉い貴族に手を出して、ただで済むと思っているのか?


「あなた、人を、殺める手引きをしたのに何も思わないのですか?」

「平民だろ?」


そう言った瞬間、シャティリアの魔剣が俺の上腕を貫通した。


「痛い痛い痛い」

「彼女たちがどれほどの痛みを我慢していると思っているのですか!」


死ぬ死ぬ死ぬ。


「俺じゃない!実行したのは俺だが、望んだのはアリス・カナフィルディアだ!」


死ぬ死ぬ死ぬ。


「どういうことですか?」

「俺は何も知らないんだよ!カナフィルディア伯爵から通達があったんだ、準備はしたから、それを利用して、殺せと」

「はあ?」

「ほんとだよ!」


死ぬ死ぬ死ぬ。


「癒して、拘束しておきなさい」


シャティリアは俺の腕の魔剣を抜く。

俺は、また拘束された。


しばらくして、シャティリアではなく、学園長がやってきた。

なんだ、偉い俺に、媚びでも売りに来たのか?


「あなたを退学にするわ。私としても生徒の自主性を重んじたかったのだけれど。流石にあなたはやりすぎだわ」

「何を言っているんだ、俺みたいな才能ある魔法陣使いを退学にしていいのか?学園の損失だぞ?」


学園長はため息をつき、去っていった。

俺は拘束されたまま、学園を出された。

拘束を時、俺を運んだ教師たちは学園内に戻って行った。

俺は学園に入ろうとする。

しかし、不思議な力に阻まれ、入れない。


結界か!

この偉い俺を!許せない!


俺はすぐに王都にある自分の屋敷に戻った。

しかし、門は開かない。


「おい、門番、早く開けろ!」

「申し訳ありません、クルス様、もう貴殿はこの家の者ではありませんので、門を開けることはできません」

「何を言っている!」


すると、お父様が屋敷から出てくる。


「お父様、この門番はやめさせた方がよろしいのでは?私をこの家のものではないなどと失礼極まりない発言をしたのです」

「お前こそ、何を言っている。もうお前は俺の息子ではない。王族に対し、無礼を働き、カナフィルディア伯爵にも能無しと嫌われているお前を息子にしていると、私も貴族から嫌な視線を浴びるのだよ。そういうことだ。二度と、顔を見せるでない」

「お父様!お父様!」


お父様はクルッと方向を変え、屋敷に戻っていく。

俺は門をどんどんと叩き、お父様を呼ぶ。


「クルス様、おやめください」

「門番、殺しても構わん、静かにさせろ」


俺はお父様のその言葉に体に力が入らなくなった。

なんで…なんで…なんで…

俺はお父様を尊敬し、民を動かすやり方を学んできたというのに…どうして…


俺は、とぼとぼと歩き始めた。


あれから何日が過ぎただろうか。

俺は、表の大きな街道から一本入った暗い路地で、壁にもたれかけ、座っていた。

ドロドロの服に、ドロドロの体。

あれから、風呂にも入れていない。

食べるものもない。


俺は今、どのように見られているのだろうか?


平民か?


はたまた —— か?


はは、そうだとしたら笑えるな…

...

...

...


「おい、嬢ちゃん!よけろおおお!」


街道から、そんな声が聞こえた。

俺は、光の灯らない目を街道に向ける。


荷車の馬車の馬が暴走し、その前には7、8歳の女の子が轢かれそうになっている。


その瞬間がとてつもなく、長い時間に思えた。


女の子が一人、轢かれそうになっている。

荷車の御者は必死に進路を変えようと手綱を精一杯引く。


女の子は目を瞑り、うずくまる。


あの女の子は親に愛されて笑顔を振りまいているのだろうか?

誰かのために、働いているのだろうか?

勉学に勤しんで学者になろうとしているのだろうか?


なんであっても…


今はあの女の子の方がこの俺よりも、この世の中でよっぽど価値のある存在なのかもしれねえな…


俺はその瞬間、立ち上がって、一心不乱に駆け出した。


間に合え!間に合え!間に合え!


俺の体には詠唱もしていない身体強化の魔法陣が出現し、起動していた。


はやく!はやく!はやく!


その魔法陣は二重魔法陣になる。


もっとはやく!


魔法陣は三重になった。


届けーーーーーーーーーーー!


俺は女の子を優しく突き飛ばし、俺が代わりに荷車に轢かれた。

魔力を全く纏わずに、魔法陣の起動に全てを集中させたからだろうか。

俺の体は大きなダメージを受けている。

意識が遠くなっていく。


最後にとんでもなく、がらにもないことしてしまったな…



俺は目が覚める。ここは?


「あ、お兄ちゃん、起きたーー!」


知らない、男の子がそう言って、どっかにいく。

たくさんの子供たちが、やってくる。

その中に見覚えのある女の子がいた。


「あ、ありがとうございました。助けていただいて」


え、なんだ、心が…

なんだ、この子のお礼を聞いた時…

なんだ、この子の笑顔を見た時…


心が満たされていく…

なんなんだ…


「お兄ちゃん、泣いてるー!」


子供たちの誰かがそう言った。


俺は泣いているのか?

どうして…?

分からない分からない…


俺はその後、お腹をグーと鳴らし、この子たちが一緒にご飯を食べようと手を引っ張ったのでついて行った。


その時知ったのだが、ここは王都の孤児たちを集めた孤児院だそうだ。

俺は、少ない食べ物を分けてもらった。

俺の体の大きさからしたら、腹の足しにもならない。

しかし、人生12年でもっとも、お腹がいっぱいになった気がした。


俺はこれから、どうしたらいいのだろうか。


俺はご飯を食べ終わり、部屋をはしりまわり、笑顔になっている子供たちを見る。


笑顔に、俺は助けられたのか?


この子たちを見ていると、心が満たされるのだ。


俺はハンターになることにした。

低ランクの任務であれば、俺でもこなせる何かがそこにあると思ったからだ。

そして、この子たちの食べ物やら遊び道具やらを買ってあげたい。


それは一見、損しているように見えるかもしれない。

お金使って、それらを買っても、俺の腹は満たないし、楽しむこともできない。

でも違うんだ、そこにある転がっている当たり前の幸せこそが俺の得ているものなんだ。

この心を満たしてくる気持ちはその当たり前からやってくるんだ。


俺は、みんなにお礼を言って、孤児院を胸を張って、飛び出した。

クルスくんも家名を持たない貴族になってしまいました。

もっと、酷な末路も考えましたが、かわいそうなので、このお話に落ち着きました。

一旦、退場しますが、クルスくん、後々、本編に絡んできますので、お楽しみに。

次回は、キミハ視点です。

友好を深めるために遠足に行きます。

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