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M-334 砦の完成が見えてきた


 やはりというか、王宮から星の海のカニの注文がやってきた。

 10匹以上という数だけど、1匹銀貨3枚ということにドミニク達は何とかできないかと連絡をよこす始末だ。

 出来なくはないが、これって騎士団の仕事なんだろうか?


「カニだって王都で暮らす人達からすれば、立派な魔獣ってことかもね。銀貨3枚と聞いて、マリアン達も是非とも何とかして欲しいと言ってたわよ」

「フェダーンが嘆いていたわ。砦建設と王宮の晩餐を比較するようなものだとね」


「まぁ、今回は俺が何とかするとしても、次回はリバイアサンを使うことになるでしょうね。カニの生息数が分からないので、今後とも簡単に釣れるかどうかも問題ではあるんですが……」


「生態調査も必要という事かしら? なら、あの島から東西南北方向に場所を変えて釣りをしてみたら? どの程度の範囲で生息しているか分かるかもよ」


 なるほど、そんな方法もあるだろうな。

 場合によっては、他の魚も掛かりそうだ。カニだけではなく他の魚も狙ってみるか。導師が大きなサメでも釣り上げられそうな釣り道具を1式運んできてくれたからね。

 戦闘モードに体を変えたら、力負けすることはないだろう。


 一か月ほど、そんな調査をしてみると、あの島から東西150km、南北に30kmほどの範囲でカニが釣れることが分かった。

 釣り上げたカニの数は200匹を超えてしまったが、リバイアサンで50匹ほどを皆で味わい、隠匿空間の商会ギルドに50匹、王宮に100匹をそれぞれ配ることにした。

 隠匿空間の商会ギルドの役員が金貨30枚を渡してくれたけど、王都に運ぶつもりに違いない。たぶん倍値でも売れるんじゃないかな。

 トリスタンさんから、20匹ずつ1か月ほど間を開けて卸してくれと言われてしまったが、やはり1度に100匹は多すぎたかな。


「結局、皆が喜んでくれたようね。もっとも一番喜んだのはマリアン達だと思うけど」

「少し、予算に余裕が出来たと言ってたよ。とはいえ、魚の方はあまり歓迎されなかったみたい」


 見た目がちょっと問題だったかもしれない。どう見てもワニのような感じの頭だからなぁ。ヒレは短い脚のようだし、魚というよりサンショウウオに見えてしまうような魚だった。

 勇気を出して食べてみようという奇特な人物も現れなかったから、とりあえずは亜空間に保管して貰うことにした。

 肉食魔獣をおびき寄せる餌にはなるんじゃないかな。


 そんな仕事もやったけど、メインは西の地図作りと帝国の遺産探しだ。

 かなり南方まで調査を行ったが、地上に見える遺産は、あれっきりだった。

 埋もれている可能性はかなり高いけど、地下の探査はアリスの能力をもってしても、それほど広範囲に行うことができない。

 ハーネスト同盟王国の領地付近まで、地図作りの為の地上撮影を終えたところで、星の海の西岸を中心に地下の調査を行なえば良いだろう。


 たまには指揮所に顔を出そうと、偵察を終えて指揮所に向かう。部屋に入ると直ぐにフェダーン様が、俺の顔を見ながら指揮所の片隅にあるソファーセットに腕を伸ばした。

 ソファーに座って待つように、との事だろう。

 指示のままにソファーに向かい腰を下ろすと、若い女性士官がコーヒーを運んできてくれた。

 軽く頭を下げて礼を言いながらカップを受け取ると、直ぐにフェダーン様とファネル様がやってきた。


「珍しいな。何か見つけたのか?」

「たまには顔を出さないといけないかなと思ってやってきただけです。すでに情報は見られていると思いますが、周囲の状況は平穏そのものです」


「それは何よりだ。城壁もそろそろ出来上がり、次の輸送艦隊が駆逐艦の2連砲塔の部材を3式運んでくる。南面は予定通り2基で良いだろうが、北面にも1基備えておけば安心できるだろう。噴進弾を6発装填した重自走車と簡易発射機があれば、チラノの群れでさえ追い払えるに違いない」


 戦機をおかずに獣機だけで対応するのがコンセプトだ。それ以外に、当座は駆逐艦を2隻滞在させるというんだからなぁ。


「そろそろ最終段階ということになるんですかね」

「工事も艤装が中心になってきている。居住区は商会ギルドに任せることになるから、輸送船と一緒にその荷物も運んでいるようだ。次の休暇後には、リバイアサンを移動して貰うことになるぞ」


 まだ工事を始めて1年にならないが、砦としての機能は最低限を満たしているということになるのだろう。

 居住区については、手を加えれば良くなることは間違いないが、どこまでやるかは商会ギルドの思惑もあるはずだ。

 砦の防衛を行う騎士団の居住区と、輸送艦隊の一時居住区がそれなりに出来ているなら、後は砦を運営しながら工事を進められそうだな。


「ここを第1砦と称して、次は第2砦。第3砦を作って最後に星の海の西岸に砦を作れば、隠匿空間から星の海の北を通って大陸の西を目指すことができる。

 国王陛下の一大事業として後世に伝えられるだろう。その工事指揮を次期国王陛下と成られるファリス殿下が行なったとなれば、貴族達に示す功績としても十分であろう。

 リオ殿。最後まで付き合って頂きたい」

「こちらこそ色々と便宜を図って頂き、感謝が絶えません。最後まで付き合うつもりですからご安心ください。それで、第2砦を始めるとなれば兵站を考えねばなりませんね」


 2人が頷くのを見ると、やはり兵站が心もとないと考えているようだな。


「リオ殿ぐらいだぞ。兵站を重視する人物は……。普通なら、魔獣対策や建設場所を考える物ばかりだ」


フェダーン様が笑みを浮かべてコーヒーを美味しそうに飲んでいる。

 ファネル様は少しホッとした表情をしているが、やはり兵站に悩みがあるということになるのだろう。


「最初は、リバイアサンに資材を搭載すれば問題ない。その後の輸送は隠匿空間、第1砦を経て第2砦の建設現場という経路になる。これは当初の予定通りではあるのだが、

やはり輸送距離が延びればそれなりのリスクを考えねばなるまい。

 第2輸送艦隊を作ろうと考えているのだが、仮装巡洋艦はそろそろ寿命でもあるのだ」


そういう事か……。

 確かに仮想巡洋艦はハーネスト同盟軍との交戦で得た戦利品のダモス級輸送船を改装して作ったものだ。元々が戦場に出しても惜しくないような船だったからなぁ。武装強化を施したから通常のダモス級輸送艦と比べると輸送能力は半分にも満たないはずだ。

 それなら前に考えた、回廊用の輸送船を作る良いチャンスにも思えてくる。


「輸送能力はかなり落ちますが、駆逐艦と輸送艦を組み合わせた形で、このような艦を設計してはいるのですが……」


 プロジェクターを取り出して、大まかな概要を説明すると、フェダーン様の笑みがどんどん深まっていく。


「やはりすでに設計を終了していたか。前に軽く専用艦の話を聞いたのだが、先を読むことにかけてはリオ殿の右に出る者はおらんだろう。

 ファリス殿下。これなら第2輸送艦隊として十分に使える。さすがに通常の輸送艦より搭載能力は劣るが、仮装巡洋艦よりも搭載能力、速度、武装共に強化されている」

「数隻の建造であれば軍の工廟で出来そうだね。5隻建造して、状況を見てさらに数を増やせば十分でしょう。建造に関わる書類はフェダーン殿に任せてもよろしいですか。もちろん連名で私もサインを致します」


 フェダーン様達の危惧は去ったようだな。

 輸送艦の調達について考えあぐねていたのだろう。回廊の輸送はある程度の武装を施さないと護衛する軍艦が必要になってしまう。

 輸送艦5隻を運行させるとなれば、駆逐艦3隻が必要になるのが北の回廊だ。


「この頃、ユーリル様が明るくなったように思えるのですが?」

「夜分にリビングに行くと、たまに顔を合わせることもある。デッキに望遠鏡を出して学生と一緒に観測を続けているようだが……」


「星の地図を作っているようです。肉眼で見える星の位置を正確に図面に落とせば、星の地図が出来ます。

 陸上艦で一番困るのが現在位置の確認ですから、正しい時計と六分儀があれば地図上に現在位置を示すことができますよ」


「現在は太陽高度で測っているのだが、星でも可能なのか?」

「太陽はある程度の大きさを持っていますが、星は点ですからね。精度がそれだけ向上しますし、全天に星が見えないという天気は、砂の海ではそれほどおおくはありません」


「西への進出は、広大な土地で現在位置が分からないということが無いようにせねばなるまい。それを考えると、ユーリル様の行動はウエリントン王族としての立ち位置を考えても納得できるということか……。ファネル殿下からも、労いの言葉を掛けるべきかと」

「そうですね。さすがはユーリル殿ということになるでしょう。リオ殿が、その計画を支援しているとなれば、北の回廊が完成したころには出来上がると考えてよろしいのでしょうか?」


「さすがに全天の図を作るのは無理でしょうが、航法に使える明るい星の位置を図にして一般に提供できるものと考えております。とはいえ、それはユーリル様の考え次第。俺から簡単な星図を世に出すようにとも言えないところです」

「それは、我から一言話しておこう。趣味で始めたようにも思えるが、それほど役に立つなら世に広めることも王族の務めである」


 さすがにタダではないだろうから、ユーリル様の懐も豊かになるんじゃないかな。

 もっとも、ユーリル様の事だから、教団を通して福祉に使うかもしれないけどね。

 

 さて、そろそろお暇しよう。

 あまり長くいると、仕事を仰せつかるかもしれないからなぁ。


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