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M-313 ハーネスト同盟の動きは


 護衛艦の設計図をカテリナさんに渡すと、フェダーン様が直ぐに1艦隊を作るよう指示を出したらしい。おかげで設計費が入ってきたからマリアン達に喜ばれてしまった。

 リバイアサンの維持に使うと言うから、少し個人的に使いたかったんだが諦めるしかなさそうだ。


「そんな顔をしないの! リオ君には木製偵察機のパテントを振り込んであげるわ。でも何に使うのかしら?」

「例の無線局ですよ。北の回廊は物騒ですからね。通過する艦隊が現在位置を明確につかめない時には救援を呼んでも直ぐに助けに行けませんからね」


 大型通信機を作り上げたから、王宮、リバイアサン、ヴィオラⅡ、それに隠匿空間との交信は可能だ。モールス信号になったのはしょうがないとしても、格段に情報交換が容易になった。

 次はいよいよ艦隊との交信になるが、基本は偵察情報の共有になるだろう。その交信を特定の波長で行うことで、陸上艦に設ける指向性アンテナにより現在位置を確認できるようにする。

 ヴィオラⅡで試験をしたことがあるんだが、結構使い物になることが分かったからね。

 問題は無線機とアンテナの価格になるが、モールス信号の送受信機ならそれほど効果にならないし、なんといっても部品点数が少ないのが良い。それだけ壊れにくいということになる。


「そういう事なら、照会ギルドの補助も見込めそうね。西に向かう騎士団の陸上艦に備えるなら可能だと思うわ。私の方で確認してあげる」

「助かります。魔道通信機と少し異なりますけど、操作方法が同じになるようにしておきます」


 アリスに頼んですでに何組か試作してあるから、それをカテリナさんに渡しておこう。

 使い方のパンフレットも作ってあるから、同じように魔法で複製ができるはずだ。


「キュリーネが学生数人とともに微生物の分類を始めたわよ。生物と同じに、先ずは動くものと動かない物を区別すると言っていたわ」

「直ぐに悩みだすかもしれませんね。奥が深いんですよ。だいたいどれぐらい小さな生物までいると考えてるんでしょうか?」

「学園の池の水をの中から始めると言ってたけど……。リオ君がミジンコと言っていた生物は結構大きかったわね。50倍程度でも十分観察が出来たけど、さらに小さいのがいるのかしら」


 とりあえず、長さの単位で教えておくことにした。この世界で使われる最小単位はリム(1.5mm)と呼ばれる単位だ。1スタフの千分の一に当たる。

 微生物の大きさを測るとなればリムでは大きすぎるから、その千分の一の単位を新たに創設した方が良いだろう。仮にオルムと名付けておこう。


「およそ1オルムまでを当座は考えるべきでしょう。できれば十分の一オルム、可能なら百分の一オルム辺りまで観察できると良いのですが、さすがに現状の顕微鏡では無理があります」

「そこまで見ることができると、何が分かるのかしら?」

「病気の原因を探れますよ」


 俺の言葉にカテリナさんが吃驚している。

 病気の原因は未だに不明だったようだ。効果が期待できる薬草もあるようだが、それは古代帝国時代から引き継がれたものに違いない。


「現在では作れないと?」

「あることはあるんです。リバイアサンの医務室にね。でも使い方が特殊ですし、その画像を見てもカテリナさんには何が何だか分からないと思います」

「呆れた……。まだまだリバイアサンには秘密があるってことかしら」


 調べてみようなんて考えているかもしれないけど、たくさんの部屋があるし、敵が侵入してくることを想定していたのか、隠蔽工作もしっかり出来ているからなぁ。

 1年経っても分からないんじゃないかな。


「もし、さらに高倍率で観察したいという時には、使わせて貰えるのかしら?」

「その時には使ってみましょう。ですが何分古代の品ですから、修理しないと使えないかもしれませんよ」


 そうは言ったけど、多分使えるだろう。アリスがその存在を教えてくれた時には故障しているとは言わなかったからね。


「案外、キュリーネが一歩先を進むのかもしれないわね」

「そうでも無いですよ。一番深い泥沼に足を踏み入れたのかもしれません。それだけ微生物の数は多いんです。池の中にもいますし、熱水の中にも住んでいます。地中深く穴を掘って、底の土を調べれば、地表と異なる微生物がいますからね」


 原始的な生物だから多彩に進化したに違いない。

 だが、生物である以上エネルギー代謝を行い、増殖を行う。その仕組みから区分すべきなんだろうが、……さて、キュリーネさんはどんな分類を行うのかな。


「化学の連中は、鉱物を漁っているわ。元素を特定するんだと張り切っていたけど、特に問題はなさそうね。物理の方は手こずっているみたい。長さと重さ、それに時間を明確にすると言っても、やはり現状では無理があるわ。とりあえずは長さの原器を作って、それで重さを特定するような事を言っていたわ。だけど時間が問題になってきたみたい。

 1日は太陽の動きで特定するとしても、その時間と星の動きが合わないらしいのよ。

 その原因が分からないとリオ君に顔向けできないと毎日討論を繰り返していたわ」


 良いところに気が付いたな。

 となると、いよいよ天文学を教えないといけないのだろうか?


「カテリナさんはこの大地に四季がある原因を考えたことがありますか?」

「急な話ね……。王都はいつも暑いけど、確かに涼しい季節があるわね。隠匿空間の周辺では雪も降るんだから、春夏秋冬という四季はこの世界に存在するということになるでしょうね。でもそれはこの大地を太陽が照らす角度が1年周期で変化することから起こるのよ」


 思わず苦笑いが浮かんでくる。それを知っていながら地動説が広まっていたんだからなぁ。

 

「ちょっとした模型を作ってみませんか。少なくとも四季の変化がどうして起きるか分かるはずですし、太陽と星の時間の遅れも理解できると思いますよ。

 俺としては、太陽を元にした時刻を仮の標準としたいですね。仮と言ったのは、今はその時間を使えても、過去や未来については必ずしも同じ時間ということにはならないからです」


 過去は自転周期が短かっただろうし、未来は長くなるだろうからね。仮に定めておくならそれほど問題にはならないだろう。

 アリスの話では、かつて地球で使われていた時の単位とこの世界の単位はそれほど変わりがないとの事だった。惑星の大きさと比重がほぼ同じであるなら、自転速度も同じになるという事かもしれない。


「模型の設計図が出来たら貰っても良いかしら? ベルッドに頼んで直ぐに作って貰うわ」

「良いですよ。アリスがすでに制御室にプリントアウトしたはずです」


 言った途端に、ソファーから腰を上げて駆け出して行った。

 相変わらず元気そのものだな。ドミニクが案外落ち着いて見えるのはカテリナさんを見て、そうならないように心掛けていたからに違いない。


『行ってしまいましたね。ところで傾斜角はどのように教えるのでしょう?』

「今夜、北の離着陸台で星の観察結果を基に教えようと思ってるんだ。星の周回画像を撮影する方法があれば簡単なんだけどね」

『そのプロジェクターが利用できます。使い方を、転送します……』


 一瞬、頭がふらりとした。

 直ぐに、プロジェクターを使った映像撮影方法が頭に浮かんでくる。広角と望遠の2種類があるようだな。これなら三脚に固定して撮影が出来そうだ。

 デッキで使っている望遠鏡から、三脚を一時拝借して望遠鏡の固定用台座にプロジェクターを固定する方法を考えていると、手の中に1本の蝶ネジが現れた。

 アリスが送ってくれたんだろう。プロジェクターの下部にあるネジ穴を固定用台座にいくつか開いている穴を使えば簡単に固定できるぞ。


「ありがとう。これで星の動きが残せるな。南側でも撮影してみればこの大地が星空に対して傾いていることが分かるはずだ」

『正しくは公転面に対しての傾きです。その辺りは正確に伝える必要があります』


 ダメだしされてしまった。とはいえ、公転面にしても相対的なものに違いない。銀河の周辺部にこの星系はあるのだろう。そうなると銀河の回転も教えないといけないのかもしれないな。

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 リバイアサンに帰還して10日過ぎると、休暇を過ごしていた連中が全て戻ってくる。

 再び砦作りが活況を帯びてきた感じだ。

 そんな中、砦周辺とヴィオラⅡの周辺状況を確認して、それぞれに情報を送ったと心で一路星の海を西に向かって飛行する。

 高度1万mを音速で飛びながら、先ずはハーネスト同盟軍の調査艦隊の捜索だ。


「神殿の島にいたのは1か月ほど前だったはずだから、かなり移動しているのかもしれないな」

『移動方向はたぶん西でしょう。陸上を進んでいた調査艦隊が魔獣の襲撃に合っています。再び陸上を進むとなれば護衛艦隊の数を増やすでしょう』


 ブラウ同盟軍と敵対している状況だからなぁ。それにサザーランド王国が壊滅している状況だから、艦隊編成はかなり苦労しているはずだ。

 攻撃よりも防衛に重点を置かざるを得ない状況と言えるだろう。

 サザーランドの領内の三分の一は数百年は人が住めないだろうし、周辺に移動した避難民や負傷者の保護も必要になってくる。

 ブラウ同盟としても食糧援助を行ったらしいが、敵対国である以上、大規模に行うことは出来ないらしい。


「調査艦隊の状況を探ったら、次は西のグリーンベルト伝いにハーネスト同盟に向かってみよう。新たな調査艦隊が出ているかもしれないし、サザーランド王国のその後も気になるところだ」

『了解です。……見えてきましたよ。ハーネスト同盟軍の調査艦隊です。やはり西に向かっていますね。艦隊の先にある旧帝国の拠点はこの4つになります』

「先行して、状況を見てみよう。稼働しているか、脅威となる物体がありそうかぐらいは確認しておいた方が良さそうだ」


 ジョイスティックの動きに合わせて、アリスが方向を変えて速度を上げる。

 小さな仮想スクリーンが近くに現れ、かつての帝国時代に拠点が表示される。距離は500kmほど先になるようだが、アリスなら10分も掛からずに到着できるだろう。 


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