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31.(TS注意)疲れたから寝る

「じゃあ、掃除しよっか」


 咲さんは立ち上がると、再び黒い霧を出す。今度は大丈夫。見る見るうちに俺を包み込んだ黒い霧に俺は思わず目を閉じる。時間にして二秒ほど。

 目を開けると、俺のあの暖かい液体も含めすっかり綺麗になっていた。


 ニコッと咲さんは微笑んで、俺の頰に優しく触れると、そのまま俺に口付けをする。いつものように舌で俺の口が開かれ、中に何か入ってくる。

 咲さんの口が離れると、彼女はまた笑顔になり、俺に告げる。


「勇人くん。大丈夫。正常よ」


「とりあえず、異常がないようで良かったよ」


「うん、ちゃんと生殖能力もあるわよ」


 吹いた! そんな報告要らなかったよ! 生殖活動なんぞしないよ。ハア。

 いつも波乱万丈だが、この日はさすがに疲れ切ったので、扉に「勇人は寝てます。邪魔しないでね」と張り紙をしておいた。



 ようやく誰もいない部屋になったわけだが、制服モノもコスプレモノのムフフ本も今は虚しい。が、寝ようにも寝付けなかったからついつい手持ちぶさたで本を手に取る。

 お。おお。趣味じゃないと思ったが、制服モノはいける。うほ。ムフフ。おおう。


 自然と本を手に持ったまま、ティッシュを枕元に、そして続きを読む。趣味の本を咲さんに持っていかれたのが残念でならない。

 この分だと、ぺったん娘は別にしてコスプレモノもいけるんじゃないかと、手に取り見てみる。

 ほう。脱いだら結局同じだ。いける。ほうほう。ウフフ。


 興奮してきたので、自然に右手があれにのびるも......


 無い! そうだったー! ついムフフ本に夢中で肝心なことを忘れていた。何てことだ。せっかく一人で邪魔する奴がいないのに、スッキリできないじゃないか!

 う、ううむ。


 し、仕方ない。自分のおっぱいでも揉んで、ふて寝しよう。やさぐれた気持ちでパジャマの下に手をやると、またため息が出た。

 揉めるほどのおっぱいが無いじゃないかよ! ちくしょう。元さんの悪意しか感じねえ。この悪魔! あ、悪魔だったか。


「一人でするのは不毛でござるよ」


 モゾモゾと布団の中でうごく何かが声を出す。いつからそこに居た! み、見られていたのか!


「入って来るなと扉に張り紙してただろ! 何でいるんだよ!」


「最初から布団の中に居たゆえ」


 布団から出て来たのは猫クロだった......チェックが甘かったか。確かに布団は見たはずなんだけど。い、今はそんなことどうでもいい。見られていたと思い、顔が熱くなってくる。


「クロの雑誌のお陰でこんな体になっちまったんだよ!」


「おっぱい小さいと嫌なんです?」


「せっかくなら、誰にも気にされず思いっきり揉んでみたいだろ。何言ってんだ俺は」


「吾輩、小さいの気にしてるです」


 しゅんとする猫クロに気まずい空気になる。


「す、すまん。言い過ぎた。もう寝るか。しゃべってたら気持ちが落ち着いたよ」


 俺が猫クロに背を向けて寝転がると、後ろから暖かい体に抱きつかれている。クロが猫耳に変身したんだなこれは。


「クロ、猫のままでいろって」


「吾輩。小さくても大丈夫なことを分かってもらうでござる」


 首筋に後ろから舌を這わしてくる猫耳クロは、手をパジャマの裾へ入れ、俺のパジャマが腹の辺りまで捲りあがる。


「わ、分かったから。ほっといてくれえええ」


 俺の叫びも聞かず、クロの手が俺の胸へ伸びる。全体を撫でるように触れられると、電気が走ったような何かが体に生まれる......

 や、やばいぞこれ。いつの間にか猫耳クロの両手がそれぞれの胸に触れていて同じように撫でられる。


「ク、クロ。やめ、変なことに目覚めたらどうすんだー」


「変なことって何でござるか?」


 分かってる癖に、分からないフリをする猫耳クロは、俺の背中をつっと指でなぞる。つい反応して体を反らしてしまう俺に猫耳クロはどんな表情をしているのだろう。

 背中越しだから分からないけど、きっと悪そうな顔をしているに違いない!

 そうこうしているうちに、猫耳クロの右手が胸の中央に少し触れる。ダメ、これダメだ!


「ク、クロまじでやばいって!」


「んー。何がでござるかー。ハッキリ言わないと分からないでござる」


 左手が下半身へ。ボクサーパンツ越しに撫でられる。


「ん。すでにあれでござるね」


「お前はエロ本の男かよ! さっきまでムフフな本を見てたから分かるだろ。つまりそういうことだ」


「で、何がまずいんです?」


 何て奴だ。このどエス猫がああ。ほっとくとこのまま身を任せてしまいそうだ。何とかしなければ。


「んっ」


 変な声が出た! 本格的にやばいぞこれ。クロの両手はいけない部分に触れているううう。


「こら、先をつまむな!」


「もう吾輩、我慢できんでござるー!」


「お前は男でも女でもいいのか!」


「吾輩、ゆうちゃん殿ならどちらでも構わんでござるうう!」


 猫耳クロが覆いかぶさってきて、俺の口をふさぐと、舌が入ってくる。

 このまま猫耳クロにやられるわけにはいかない。意を決して俺は猫耳クロをようやくひっくり返すと、脱兎のごとく部屋を抜け出した!

 この後マリーを呼んできて、猫耳クロをつまみだしてもらい。マリーにきちんと監視するように言いつけを行い、就寝したのだった。



◇◇◇◇◇



――翌朝

 今日は咲さんとショッピングセンターまでお買い物に行く予定だからちゃんとした服を着ないといけないのだ! 気が進まないけど仕方ない。約束だからね。

 下着はいつものボクサーパンツで、ダブタブのズボンを履いていくわけにはいかなかったから、クロのワンピースを持ち出し、靴はマリーのスニーカーを借りた。ブラジャーは無い。だってマリー持ってないんだもの。仕方ない。猫? あいつはそもそも服が無い!


 軽トラックまで来るとすでに咲さんが運転席に座っていた。ああ、俺この恰好じゃ車運転できないじゃないか。免許書見せれないから......

 咲さんが運転できるようで良かったよ。


「勇人くん、おはよう。今日はありがとう」


 運転席の窓を開けて咲さんが笑顔で俺に声をかける。


「体がこんなんになっちゃったから、迷惑かけるかもしれないけど。よろしく」


「ううん。何かあったら私が守ってあげるからね!」


「う、うん」


 ま、まあ守られるのは今に始まったことではない。ダンジョンとかでいつも守ってくれてるから。助手席に乗り込み、俺と咲さんはショッピングセンターに向けて車を走らせるのだった。

 ショッピングセンターはここからとてもとても遠い。なんと車で二時間もかかるのだ。途中休憩をいれてもいいかもしれない。


「勇人くん、コンビニで何か買ってから行こうか」


「はあい。飲み物とおにぎりでも買おうかな」


「うん。勇人くんと二人なんて楽しい」


 ドキっとすることを言う咲さん。これで普通の人間ならなあ。彼女が普通の人間だったら、喜んでどこにでもお付き合いするんだけど。現実は首やら腕が取れるからハラハラする。


 コンビニに到着したが、駐車場が妙に広い......またこのコンビニかよ! 咲さんも利用してるのか!

こ、これはひどい。次回で元に戻るはず。

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