28.クロとコンビニ
本日二話目です。
軽トラックに乗ってまたやって来ました、駐車場の広いコンビニへ。4280円事件があって以来、このコンビニは不思議な繋がりがあるな。
当たり前だけど、俺自身はよほどの理由がない限りここへは近寄らない。
蜜柑さん? あれはもう終わった事件なんだよ。キバヤ理論同好会の同窓会があったらどうするんだろう? 来るのかな叶くん。
コンビニの駐車場に到着すると、俺は助手席でニコニコご機嫌な猫耳クロに改めて問い掛ける。
「クロ、着いたけどコンビニで本当に良かったのか?」
「吾輩、ここへ入れなかったのが残念だったのです」
「そ、そうか」
軽トラックのドアを開け外に出ると、クロが手を繋いで来たのでそのままコンビニに入店する。
「いらっしゃいませ。あ、4280円さん」
居た! また例の若い女性店員だ。俺の名前は4280円じゃあないが、もう突っ込む気にもならんよ。
「こんにちは」
あえて朗らかに挨拶を交わす俺。
「今日は猫耳の女子高生......制服だけでなくコスプレまで。やるわね、4280円さん」
女性店員は小声で呟くが、聞こえてる。全部聞こえてるからね。しかし此処で何か言い訳すると泥沼にハマりそうだし、猫耳クロが余計な事を言いかねない。
ここは我慢して無視だ。聞かなかったことにしよう。
「買い物してもいいでござるか?」
「あ、ああ。猫缶もあるぞ」
「吾輩、猫ではないゆえ」
また涙目になる猫耳クロだが、俺は知っている。いままで買った猫缶を食べていることを。
「吾輩......猫缶......4280円さんのプレイ侮れない」
だから、女性店員さん。聞こえてますって!
猫耳クロは食べ物に興味があるようで、惣菜コーナーに釘付けだった。一体どんなもの食べるんだろう。
「これが欲しいでござる」
手に取ったのは、鯖の塩焼きだった......
やっぱ魚じゃないかよ!
「他に何かある?」
「吾輩、研究したいゆえ」
クロはトコトコ雑誌コーナーへ。嫌な予感がビンビンするでござる。
鯖の塩焼きを猫耳クロから預かると、彼女は何かの雑誌を探している。
「これがいいでござるー!」
やはりムフフな雑誌。コスプレモノだー。猫耳と犬耳の下着姿の女性が二人表紙を飾っていた。
何でこんなマニアックな雑誌があるんだ。このコンビニ。
俺はふと視線を感じ、女性店員に目をやると彼女はグッと親指を俺に突き出し、笑顔をみせていた。
お前だろ! お前が入荷したんだろお!
こんな雑誌をクロに与えては、また変な勘違いをしそうだ。しかもクロだけでなく、咲さんやマリーまで伝染すること必至!
買うと言った手前、買わないわけにはいかぬ。ならばこうだ。
「こっちはどうかなー?」
俺はムフフじゃないコスプレ系雑誌を手に取り、猫耳クロに見せる。だから何でこんな雑誌あるんだよ!
「それ、研究にならないでござる。猫耳の種類とか、着け方とかどうでもいいでござる」
ま、まあ元からついてるからな猫耳。
「これも欲しいでござる」
猫耳クロが見せて来たのは「月刊ぺったん娘」とか言うムフフ雑誌だった......
こ、これ買うと俺がぺったん好きと思われるのか? 嫌だああ!
俺は蜜柑さんの様な良い体した女の子がいいんだ。あ、ああ! 蜜柑さんは叶くんで、あれがあれだから女の子じゃない! うああ!
嫌なことを思い出してしまった......さ、咲さんはどうだ?
咲さんの垂れ目のおっとりした顔に茜色の浴衣。うん、いいぞお。気力が戻って来た。胸も普通より少し大きめ。俺好みだ。ただ、咲さんはいきなり人の目を持っていくようなお方。全然心が休まらねえよお!
だ、ダメだ。疲れてきた。
「未成年の方にはお売りできません」
女性店員がニヤニヤとこっちを見ながら猫耳クロに告げる。
クロおおお、勝手にレジに行くな!
まるで俺が、制服好きな上にコスプレ、貧乳好きとか思われるじゃないか! 仕方ない、他のムフフ雑誌も買おう。俺がそうじゃないと見せてやる。
「4280円になります」
マジかよ! また4280円とか。鯖の塩焼きももちろん購入している。
俺は泣く泣く4280円を支払い、コンビニを後にしたのだった。ここへ来るとロクなことにならんなホント。
◇◇◇◇◇
軽トラックで猫耳クロに鯖の塩焼きを食べさせつつ宿に帰宅する。まさか、コンビニに行くだけでここまで疲労するとは。侮りがたし。
帰宅すると俺は親父さんにハロウィンの事を話そうと厨房に向かう。
相変わらずオールバックのダンディな親父さんは、丸椅子に座り競馬新聞を開いていた。
「親父さん、ハロウィンやりませんか?」
「ん、あのカボチャのやつかね?」
「ええ、まず身内だけでも仮装パーティーでもやってみませんか? 上手くいけば、ハロウィン宿にしましょう」
「ほうほう、面白そうじゃないか。なら勇人君、パエリアや魚介系の料理にしてみようか」
「おお、面白そうですね」
「うむうむ。なら素材を協力して採って来てくれたまえ」
「お、俺も行くんですか......」
「ははは。まあ任せるよ。マリーと咲さんに宜しく言っておいてくれよ」
うわあ。あの二人に俺から言って、二人だけで行ってくれるわけないじゃないか!
ハロウィン楽しそうとか言った俺を殴りたい。
◇◇◇◇◇
部屋にマリーと咲さんを呼び、素材集めのことを相談することにしたんだ。かなり気が進まなかったけど仕方ない。何故か骸骨くんと猫までいる。
なんのかんのでこのメンバーにも慣れてきたよな俺。何度気絶したことか。
「でだな、米やら魚介がいるわけだ」
「うーん、お米は三十四階でしょー。カニさんはこの前のところだけど、イカとかエビなら二十八階だよー」
「うん、二つに分かれるか」
三十階以上はマリーと骸骨くんが単独だと危ないやら何とかって、この前砂浜行った時は大丈夫そうだったけどなあ。
「よし、ならマリーは二十八階。咲さんは三十四階。骸骨くんとクロはどっちかについてくれ」
我ながら素晴らしい提案だ。俺はここでさっき買ったムフフな本を楽しもうじゃないか。ははは。
「ねえ、勇人くん。この前私を置いてビーチに行ったよね」
今まで口をふさいでいた咲さんから、冷たい視線を感じる。何だこのプレッシャーは!
「えー、ゆうちゃん。わたしと行かないのー? ゆうちゃん何するのー?」
マリーも頰を膨らましてご不満そうだ。
え? 俺も行くの? やっぱりこうなるの?
「え、いやあ。ここで待ってようかなーなんて」
「勇人くん」
「ゆうちゃんー」
怖いよ! 二人の目つきが怖いよー。
一歩後ずさる俺へ、迫る二人。猫クロの首を掴んで持ち上げ、ガードしようとするが、全く効果ない!
役に立たない猫だよ。全く。
「わ、分かったよ。行くから。行けばいいんだろ!」
「マリーとこの前行ったから、私と行くのよね?」
咲さんの声が怖い。
「う、うん。今回は咲さんと行くよ」
乾いた声で俺は「行く」としか言えなかった。マリーがぶうぶう言ってるが、どっちと行っても同じなんだよ! 悟れよ!
「じゃあ、吾輩も咲殿と行くでござる」
厚かましい猫め。そうはいかねえぞ。
「クロはマリーと行ってこい。骸骨くんが居ないと、俺が無理だ」
ダンジョン行くのに骸骨くんが居ないと、漏らす。何をとは言わない察してくれ......俺の癒しは骸骨くんなんだ!
俺の言葉に骸骨くん達は、カタカタと喜びのダンスを踊っている。少し癒された俺はかなり病んでると思う......
ぶーぶー言ってるマリーと猫クロを無視して、俺は骸骨くんに手伝ってもらってダンジョンへ行く準備を始めたのだった。
ぺったんに謝れ!
明日は更新できるかどうか......明日の分を投稿しちゃいました。




