24/260
アルコール依存症24
「虫だ。全身虫が這っているぞ、辛抱堪らないわ。それに吐き気がするんだ。車を停めろ!」と行雄はわめき立てた。
行雄が身体中を小刻みに震わせながらわめき立てる。
「おい、我慢出来ない。何か全身ムズムズするぞ。何処かに酒は売っていないのか?」
「こんな山奥の何処に酒が売っているのだ。自販さえ無いぞ」
行雄が震え、涎を一筋垂れ流しながら再度わめき立てる。
「それじゃ来た道を戻ってくれ。このままじゃ俺は死にそうだ!」
「逆だ、酒を飲んだらお前は死ぬのだぞ!」
行雄が声を限りに逆らう。
「いや、死なない。俺は酒を飲んで溌剌と生き返るのだ。そして鹿を食い、愛しい婆さんにも会い、店は繁盛して、俺の命は燃え上がるのだ。だから酒を寄越せ、頼む?!」
「駄目だ。辛抱しろ!」
「虫だ。全身虫が這っているぞ、辛抱堪らないわ。それに吐き気がするんだ。車を停めろ!」




