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アルコール依存症112
「ち、畜生、何か回避する方法は無いのか?!」と行雄が悪友に向かって喚いた。
焚火を傍らにして鹿達は角がへし折れても、体当たりを止めようとしない。
血に飢えた猛獣さながらに赤い眼を見開き執拗に体当たりを繰り返す。
異様な光景だ。
行雄が泣き喚く。
「ち、畜生、何か回避する方法は無いのか?!」
悪友が周囲を見渡す間を置いてから喚き返した。
「もう少し上に登れば、鉄条網の外に伸びている枝がある。それを伝って外に逃げ伸びるしかない!」
行雄が再度喚き返す。
「この振動ではこれ以上登るのは極めて難しいぞ、それに枝では途中で折れてしまう可能性があるが、大丈夫なのか?!」
幹に必死にしがみついている悪友が喚き断言する。
「だが回避する方法はそれしか無い。一か八かやるしか無いだろう!」
行雄が泣き声交じりに喚き返した。
「わ、分かった、やってみるわ!」




