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アルコール依存症102
そんな会話を交わしている折り、又ぞろ行雄の手指が小刻みに震え出した。
そんな会話を交わしている折り、又ぞろ行雄の手指が小刻みに震え出した。
行雄が唸り己を自制するようにとつとつと呟く。
「畜生、又禁断症状だ。薬も無いしどうするんだ?」
その言葉を聞いて、咄嗟に悪友が立ち上がり、鉄格子に張り付き叫んだ。
「すいません、看守さん、相棒がアル中の禁断症状を引き起こしたのです。まとこに申し訳ありませんが、薬をくれませんか?!」
その声に反応して看守が現れ尋ねた。
「何だ騒がしいな、どうした?」
悪友が禁断症状に苦しむ行雄を指差し言った。
「こいつアル中なのです。薬も無いし、何とかなりませんか?」
看守が行雄を値踏みするように見詰め、おもむろに言った。
「アル中の禁断症状に効く薬は無いぞ」
悪友が語調を崩さずに喚く。
「ならば専門の医師に告げて処方して下さい、お願いします!」
朴訥とも言える態度のままに看守が言った。
「駄目だな。そんな時間は無い。もうすぐお前らの刑が執行される時間だ」
悪友が食い下がる。
「お願いします!」
看守が無下に言い放った。
「無理だな」




