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結論

 

「エリーに朗報? がひとつあるのだけど、聞く?」


 アリーのこの勿体ぶった言い方は、何とか出来ない物でしょうか。


「聞きましょう」


 神殿の廊下で出来る話題なのかしら。


「どうやら殿下は、最後まで貞節を守ったらしいわよ? 影からそう報告を受けているわ」


「え?」


 思わず足が止まりました。


「“結婚するまでは君を大事にしたいから”そう言って手や髪にはキスしてたらしいけど、そこ迄。どうやら彼には、魔女が貴女に見えていた……と言うか、魔女によって愛する者を錯覚していた? って事かしらね」


 殿下……

 よくそう言って、私の髪をひと房弄んで……そこにキスを落としてらしたわ……

 いやだ、思い出すと頬が熱くなります。


「凄いわね。神官でさえ誘惑した魅了の力なのに、それを抑え込むなんて。寧ろ逆? 彼、不能なんじゃない?」


「ちょっ、なんて事言うの! アリー‼」


 ……もしそうなら困るわ。

 いえ、困ると言うのは、なんて言うか……そう、王家に世継ぎが出来なくなるなんて、大変な事でしょう? って、誰に言い訳してるの私!


「この情報が貴女にとって、殿下を赦す判断材料になるかどうか、わたくしには区別がつかないわ。でも……どんな道を選んでも、わたくしは貴女の考えを支持します。それだけは忘れないでね」


 アリー、ありがとう。

 貴女の優しい瞳にはいつも励まされます。


「エリーは殿下に激甘だから、すぐ赦すと思う。少しはお仕置きしないと、あの手の男は付け上がるぞ。エリー1人だけなんだぞ? 婚約破棄宣言を破棄したのは」


 リリは殿下に辛口です。

 でも、そうなのです。あの日、婚約破棄宣言を受けた者の中で、私だけ婚約継続を選びました。

 国王陛下からは諸手を挙げて喜ばれました。


「そうねぇ……殿下はエリーに全面的に許されたと思っているのではなくて? 婚約継続したし? でもエリーだって煮え湯を飲まされてるのよ? なにか一矢報いたいと思わないの?」


 そうですねぇ。

 アリーの瞳は、なんだか面白い物を見つけた子どものようにキラキラと輝いています。

 リリの私を見詰める瞳は、いつもの落ち着いた煌めきです。


「よく、考えてみますわ」


 私は笑顔でふたりに答えました。



 ◇



  卒業式を終え、殿下に『強欲の魔女事変』の全てを説明する為のお茶会を開き。その席には聖女アレクサンドラ様と、私の正式な護衛となったリリベットにも同席して貰いました。

  その時、殿下は久しぶりに私をあの愛称で呼んで下さいました。

  それだけで感動してしまった私は『チョロい女』なので、全て赦してしまいました。

  リリには結婚の儀式を行うまでは、節度あるお付き合いをする様に、と釘を刺されてしまいました。

  つまり私は殿下と和解の道を選んだのです。



  それはそれとして。

 あの二人が助言してくれたように、私も色々と思う所がありましたので。


  国王陛下に、恐れながらとお願いしてみました。殿下の立太子を二年ほど延期し、同時に私たちの結婚式も延期するように、と。

 何事もなければ卒業と同時に結婚していたのですが、そのまま……というのもなんだか癪だったので。

  そのお願いの場に同席していた王妃殿下は、即座に賛同。

  なんでも、私たちの結婚式の準備をする時間が足りないと感じていたとの事。元々は学園生の間に準備するはずが、魔女に誑かされていた殿下は城に戻っても『生きる屍状態』でまともに話も出来ず。当然、私とも碌に話し合えず。妃殿下はずっと歯痒い思いでいらしたそうです。

 その上、あのパーティーの場では婚約破棄宣言。『あのバカ息子はエリザベス嬢に捨てられる!』と戦々恐々としていたそうです。

『バカ息子を見捨てないでくれてありがとう!』と、お言葉を頂きました。妃殿下、涙目でした。

 その話を聞いていた陛下にも、

『昔からそなたを溺愛していた馬鹿息子(あれ)には、丁度良い罰よの』

 と、笑ってご納得頂けました。




  そうして、国王陛下から直々に結婚式延期の報を聞かされた殿下は……今思い出しても笑ってしまうくらい、顔色を真っ青に変え、今にも泣き出してしまいそうな程顔を歪ませると「許してくれたんじゃ……なかったのか……?」と、実際涙目になって私に詰め寄ろうとしました。

 それを陛下が一喝。


「ならん! これは余の意思。令嬢に非は一切無い! 貴様には反省の時間が必要だ!」


 涙目のまま私を見つめる殿下は、少し情けなくて。

 でも、とても愛おしかったのです。


 殿下。

 コウさま。

 貴方さまが二年待てないとお思いになる程、私の事を好いてくださるのなら。

 私は二年待ってでも、貴方さまの事、愛しておりましてよ?


 いつでも奪いに来てくださいませ。


 …………なんて口で言えたら、もっと可愛げのある女になれていたかもしれません。






【おしまい】




ここまでお読み頂きありがとうございました。

m(_ _)m

戦う女の子、ちゃんと書けたかしら。

このお話は『婚約破棄宣言をした直後に前世を思い出した俺は、この絶対絶命のピンチから生き延びるつもりだ』の女子視点ストーリーです。

あちらで設定だけして出せなかったアリスとルイーズを書きたくて!(切実)

あちらではサラッと流したけど女の子たちは苦労してたのよ!って言うのも書きたくて。

書けて良かったです(*^^*)



どうでもいい話を。

女の子たちをイメージする動物がいました。

エリザベス=(ロシアンブルー)

アレクサンドラ=ユニコーン

リリベット=(ジャーマン・シェパード)

アリス=黒猫(幼少期)、黒豹(成人後)

ルイーズ=小鳥(シマエナガ)


因みに

マーガレット・ブラウン嬢=(シーズー)

コージー・イノセント・コーナー=犬(黒ラブ)←待てが出来る仔です。


皆様のイメージと差がありますかしら。

お読み下さりありがとうございました

m(_ _)m



評価を頂ければ幸いです。

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