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後編

【改訂】

後半部分、改めて書き直しました!!

未完のままお読み頂いた方には大変ご迷惑をおかけしました!(>_<)

「聞いてくれ。俺の妹が、最近どうもおかしい。」


「…なんだいきなり。

オフィーネリア嬢がどうした。」


悪友、ユージィンと舞踏会で会い、近況報告がてら話していると、唐突に酒を呷り暴露し始めた。


「お前も知ってると思うが、春に社交デビューして以来、不貞な輩がフィーに対してちょっかいを掛けていてな。

大抵は俺や…お前が追い払っているわけだが、その目を掻い潜って手を出すバカが良からぬ噂を立てている。」


「……あぁ、あのバカげた話か。」


お酒に弱い…いや、お酒が魔力発動に繋がる彼女に、酔わせて一晩の遊びをと手を出すやつらがいるのは知っている。

その結果、魔力でオフィーネリア嬢にやり返された奴らが、腹立ち紛れに【淫乱】だと触れ回っているのだ。


女性の魅力に溢れた彼女の、魔力暴走を起こしかけて潤んだ瞳にさぞや男どもは浮き足だったのだろう。

だが、実際は彼女の魔力という力に勝てず撤退を余儀なくされ、逆上した。…どいつもこいつも、器が小さいな。


…その噂は今や社交界で知らない人などいないだろう。良くも悪くも彼女は目立つ。ただし、本人は無自覚のようだが。


彼女自身の貴族としての立ち振舞い。

そして、聡明な頭脳と慈愛の心は、見る者が見ればそんな噂などデマだとわかる代物だ。殆どの人は若造の戯言など信じちゃいない。



「その噂なら今に始まったことじゃないだろう。

それがどうしたって?」


「………実は、フィーが………。

俺のオフィーネリアが……っ、仮面舞踏会に出る計画を立てている。」


「……はぁ!?なんでそんなこと……っ!!!」


俺は思わず大声を上げ、グッと堪えた。

こんなところで叫んだら、誰に聞かれるかわかったもんじゃない。

俺は声を潜めて、もう一度聞き返す。


「仮面舞踏会って、()()仮面舞踏会だよな?」


「……ああ。夫や恋人に満足できず、一夜限りの遊び相手を探す場として利用される、()()仮面舞踏会だ。」


「……っ何がどうなって、そんなことに……?」


今すぐユージィンの胸ぐらを掴んで問い質したい気持ちを抑えて訊ねる。


「…それが、どうやらフィーの専属侍女の話を聞く限り、例の噂、当の本人が悪女だと皆に思われていると信じているようでな。

俺達家族にバレたくないと隠すため、既成事実を作ってそいつと結婚しようと画策している…らしい。」


「…………ちょっと、待って欲しい。

頭が混乱してきた。


……っ何がどうなるとその結論になるんだ、彼女は!!!!」


疲れきった顔でユージィンは言葉を続けた。


「僕だって、そう思うよ。

でも、今回手引きをしたフィーの友人から詳細が書かれた手紙を受け取って、それが事実だとわかってしまったからね。」


「……そう、か。

それが、事実だとして、当然止めたんだよな?」


「…止められるものなら、君にこんな話はしないよ。」


ぎりっと、握り締めた掌に力が入るのがわかる。


「……っなぜ…っ」

「今日なんだよ!!!!」




俺達はほぼ同時に叫んだ。


「…………は?」


何を言われてるのか最初わからなかった。

じわじわとその言葉の意味に気付き、俺は青ざめた。


「…っだから!君に相談したんだろう!!

()()()()()の君に!!


ルートウィン公爵家当主の君なら、完全招待制の仮面舞踏会に当日途中参加だって捩じ込めるだろう…っ!?」


僕には、出来ない…っ、そう悔しそうに告げるユージィン。


「それに、今日の舞踏会は、将来公爵家を継ぐためにどうしても会わなければならない人がいる。…今日僕はここを離れられない。


…だから、頼む。」


「言われなくとも…っ。」


俺は、すぐに踵を返した。

俺にとっても、今回の夜会は必要なものだった。

だが、俺はすでに用件は全て済ませている。…いや、もし済ませていなかったとしても、抜け出しただろうが…。


さっき主催の貴族の名と場所は聞いた。ここからさほど遠くはない。俺は従者に行き先を告げ、急ぐように指示を出す。優秀な公爵家の従者は、突然の出来事にも即座に対応してくれる。

こういうとき、ありがたい。


会場であるとある貴族の別宅に到着する。

門番は公爵家の紋章入りの馬車に動揺していたが、構うものか。

正々堂々と乱入させて頂くとしよう。


我が家の外交と関わりのある貴族であった為、途中参加はあっさり認められた。しかも、休憩用の部屋まで用意された。

…まぁ、()()()()目的で来たんだと思われてるだろうな。


とにかく、すぐに彼女を見つけ連れ帰る為、手渡された仮面を着けて会場に入った。


…ちっ。顔がわからないというのは面倒だな。

探すのに時間がかかりそうだ。


会場内をウロウロと探し回っていると、積極的なご婦人からダンスに誘われる。断りの言葉を告げるも、次から次へと声を掛けられてキリがない。


何人目かもうわからないが、誘いを断り、そろそろ嫌気がさす。

一度冷静になろうとバルコニーに行こうとしたとき、その声は聞こえた。



「『わたくし、少し疲れてしまいましたの。どこか、休むところはありませんか?』

…うん、よし。きっと大丈夫。後はお酒の勢いに任せればなんとかなるはず…っ」



ー俺の覚えている、彼女の声だ。

だが、その語られる内容は本当にオフィーネリア嬢、その人なのか耳を疑った。


そのまま、どう声を掛けるべきか躊躇っていると、溜め息を溢して可愛いことを言う。


「あ~あ…。

出来ればわたくしも、お母様達のように素敵な恋をしたかったなぁ…。」


…っそんなに望むなら、今すぐにでも叶えて上げよう。


声を掛けようとしたその時。

オフィーネリア嬢はふと視線を壁際に向けた。

と思うと、そちらに向かって歩き出した。


その視線の先には一人の男が立っていた。

ーまさか、その男に、決めたのか…っ。



そんなこと、させない。

俺は近くのボーイからお酒とジュースが入ったグラスをサッと受け取り、進行を妨げるように目の前に身を乗り出した。



「虹色に輝く麗しいお嬢さん。

宜しければ飲み物は如何ですか?」


先程の男が視界に入る。

きっと彼女が近付いていたのに気付いていたのだろう。

悔しそうな顔をしているのが見えた。


(自分から動こうともしないのに、そんな柔な男に彼女を取られてなるものか…っ。)


オフィーネリアの目に映るのは俺だけでいい。

俺は、殊更甘い視線と口調で彼女を見つめた。


見つめていると、仮面の隙間から覗く白い肌が上気しているのが見えた。…もしかして、見惚れてくれたのか…?


仮面越しの熱い視線に、俺は油断したのだろう。


「…っっあ、ありがとうございます!!

では、こちらを…っ。」


まさか、彼女がいきなり俺の手からグラスを、ーお酒の入ったーグラスを取るとは思いもしなかった。


止めようと声を掛けたときには、もう一気に飲み干していた。

…っあれだけお酒で嫌な思いしているのに、何故無防備に確認もせず飲んだんだ…っ!!


誘ったのは俺の癖に理不尽な怒りを浮かべ、俺は彼女の姿が他の男に見えないように覆い隠す。


程なくすると、彼女はぐらっと身体を揺らし小さく身を震わせた。


「……え?

……っ!!……んぅっ」


俺は慌てて彼女の身体を俺に引き寄せた。


ここはフロアの中央で他の男の目につく。

こうすれば彼女の潤んだ瞳や欲情した表情をこれ以上他の奴等に見せないで済む。俺は抱き抱えたのをいいことにぐっと体を密着させ、顔を俺の胸に埋めさせる。


…彼女の熱いくらいの体温に、男として反応しそうになるが、今日はそういう目的ではない。あくまで、この場から彼女を連れ出すのが目的だ。


どうやって自然にこの場を抜け出そうか。…いっそ、素性をバラし、保護しにきたのだというべきか。


あまり、ここに長居するのは得策ではない。


そんなことを考えていたら、彼女はきゅっと俺の服を掴み、上目遣いで、予期せぬ言葉を告げた。





「…あの、わたくし、どうやらお酒に酔ってしまったみたいで…。

どこか、休めるところはありませんか…?」



……っさっきのは、やはり聞き間違いではなかったのか…っ。

俺は彼女の言葉を反芻し、固まってしまった。


「………っ本気…か……?」




オフィーネリアのような可愛い令嬢に誘われて断る男などまずいないだろう。…彼女は自分の魅力を本当にわかっていない……っ!!


下半身が暴走しそうになる。

本当なら、こんなつもりはなかった。

彼女には、これからゆっくりアプローチを掛けて、少しずつ俺を知ってもらい婚約まで持っていくつもりだった。


公爵家当主としての仕事に忙しく後手に回っていたのは否めない。…だが、このまま静観していれば、彼女はまた同じ事をするのではないか…?


なんせ、彼女は昔から想像の斜め上をいく変わった令嬢だったから。


出会ったきっかけの日を思い出し、思わず口許が緩む。

こんな機会、2度はないだろう。


だったら、俺のすることはただ1つ。

…彼女の作戦に乗ろうじゃないか。


本気なのかと問い、頷く彼女を見下ろす。

…もうすでに発情しているのか、息を荒げて俺に身を委ねるオフィーネリア。男性不信のようだとユージィンから聞いてはいたが、どうやら彼女のお眼鏡にかなったらしい。


嫌がってはいないようで安心する。

俺は身を屈め彼女の耳許での囁くように誘う。



「……それなら、こちらだ。」


落ちてきたのは君の方。

ーもう、逃がさないー


俺は用意されていた休憩室に行き、彼女の初めてを貰った。

…想像以上に彼女は可愛く甘えてくれて、一回で済ませるはずが止められず、朝まで抱き潰してしまった。


…っ俺のせいだけではない、と思いたい。

あんな彼女を見せられて、溺れない男はいないのではないだろうか…。



ほんとに、間に合ってよかった。

他の男のものになっていたらと思うと、想像だけで怒りが沸き上がってくる。


俺は腕の中で眠るオフィーネリアに、朝、どんな風に声を掛けようか想像しながらもう一度微睡んだ。







*********


ことの真相を後日知り、私がいかに世間知らずか思い知った。


…なによ、これ…っ!!

私、あんなことしなくても幸せになれたってこと!?

勘違い女のバカな子丸出しじゃないの…。


…しかも、公爵さま…いえ、ベルナルド様が昔から私を好きだったなんて…っ。子供の頃の記憶はあまり朧気で覚えていないのだけれど、どうやら初めて魔力暴走したきっかけがベルナルド様だったのだとか。


そんな時から見初められていたなんて、知らなかったわ…っ。




「逃がさないから、覚悟して?」






あのあと、お相手が公爵さまだと知り、逃げ出そうとした私は、ベルナルド様にそう告げられました。

気付けばあっという間に結婚までのお話が進んでいて、ベルナルド様の決意が嘘ではないのだと身をもって知りました…。



いえ、とても素敵な方と恋人になれて嬉しい…嬉しいのだけれど、何かが違う気がするのよね!?


…まぁ、これが私らしいのかしら?



困難だと思っていた私の婚約は、一足飛びで結婚まで決まってしまった。不幸になるどころか、毎日のように溺愛され、恋愛経験値の低い私は毎日翻弄されているのだけれど、それもまたハッピーエンドなのかもしれない。

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