083(テロ発生)
次の日の朝、男達は準備をする。拳銃、サブマシンガン、アサルトライフル、金属バット、デコイ、対人地雷。防弾チョッキに目出し帽。テロを、いや、戦争を画策している。ターゲットは小暮桜子だ。小暮総理大臣の秘書をしていて、指定峠制度の視察にやって来る。男達は抜かりない。桜子は必ず銀行に寄る事を下調べ済みだ。そこを狙い人質立てこもりをして、政府に法律を変えるように脅迫する算段だ。決行は今日の昼。
そんな事も露知らず、ケーイチは今日も通常運転だ。適当に朝飯を食い、向精神薬を飲み、GTRを運転して服部飲料の本社へ向かう。田辺巡査との約束を守るために。
ケーイチが服部飲料に着くと、警察車両が数台停まっていた。
「今日も沢山トレーニングをするぞ!」
ケーイチは自分で自分を鼓舞する。
男達は作戦に移す。桜子が銀行に入ったところで、バン! バン! テロリストの1人が天井に向かって2発発砲する。それと同時に出入口を施錠して、桜子をはじめて、他の客20人も拘束していく。
「カネを出せー! おとなしくしていれば、危害は加えない!」
武装した10人のテロリストに行員も誰もお手上げだ。
客の中には、ケーイチの担任だった荻野が居た。それと今井市子も。
テロリストのボスは桜子に詰め寄る。
「お前、総理大臣の娘だな?」
「日本国はテロに屈しないわよ」
「威勢の良いのは結構。要求は3つだ。今すぐに指定峠制度を廃止しろ。現金3兆円を用意しろ。それと不当拘留されている、ロベルトという男を釈放しろ。麻薬王だと言われ誤認逮捕だ。シロだからな」
「せいぜい頑張りなさい」
「ほう」
ドスッ! テロリストのボスは桜子にボディーブローを喰らわす。
「つっ! 痛い」
「威勢だけだな、総理大臣の娘。お前は無力だ。パパにこの状況を伝えろ」
「嫌よ」
バン! テロリストのボスは拳銃で近くに居た客の1人をヘッドショットする。即死だ。
「キャー! なんて事を!」
「お前に拒否権はない。パパにこの状況を伝えろ」
「わ、分かった」
客や行員はパニックを起こす。それを制止させるために、テロリストの1人が、バン! バン! 天井に向かって2発発砲する。
「おとなしくしろ! 殺されたら、この総理大臣の娘を恨め! 人質全員は携帯電話を出せ!」