069(FD3S)
ケーイチは、リビングのソファーでまったりする。――気が付くと、眠っていた。起きた時には、時計が20時を回っていた。
ケーイチは3LDKの一室を倉庫にしており、そこからシルビアのリアタイヤを2本持って、マンションの駐車場へ行く。シルビアのトランクにリアタイヤを載せて、暖気運転をする。そして、金城にメールを送る。
『瀬奈ケーイチです。今から5連コーナーに向かいます』
すぐに金城から返信が来る。
『今、5連コーナー近くのコンビニに居るよ。先に行ってるね』
ケーイチはシルビアを運転して峠の5連コーナーに向かう。脚の痺れは大分和らいでる。途中で腹が減ってる事に気付き、コンビニでブリトーとハンバーガーを買って、食べながらゆっくり運転して峠に着く。
ケーイチは駐車スペースにシルビアを停めると、甲高いエキゾーストノートが聞こえてきた。金城のFD3Sだ。
平日の夜、明日は祝日だから、走りに来てるドライバーはケーイチと金城の他に数台。ギャラリーも何台か来ている。
金城はケーイチのシルビアの隣にFD3Sを停め、降りてきた。ケーイチはウインドウを下げる。
「ケーイチ君、来たね。追走しようよ。俺が後ろで」
「分かりました。じゃあ行きますか」
ケーイチと金城は5連コーナーを下り、ストレートでスピンターンをする。ケーイチは他に下ってくる車がない事を確認して、ファッとクラクションを鳴らし、スタートの合図をする。そして、ギアを1速に入れて急発進させる。
ケーイチはギアを2速に入れ、コーナー手前でステアリングを右に切ると同時にクラッチを切り、アクセルを吹かして一気にクラッチを繋げる。リアが流れたと同時にカウンターを当てる。ドリフト成功だ。
続いて金城もステアリングを右に切ると同時にクラッチを蹴る。しかし、コーナー出口で左右にタコ踊りしてしまう。シルビアとFD3Sの距離が開いた。
ケーイチはS字を繋げる。金城は1コーナーずつクラッチを蹴る。更にマシン同士の距離が付く。その差、約30メートル。金城はスピードを落とす。ケーイチはコーナー手前で一瞬ヘッドライトを切り、下ってくる車がないか確認する余裕すらあった。それも踏まえて、コーナーを滑っていく。ギャラリーは大喝采だ。金城は呟く。
「負けたよ……ケーイチ君」