065(初戦の勝敗)
ケーイチは用意されたドローンキットを渡される。赤色の機体、ヘッドマウントディスプレイ、プロポだ。機体に取り付けられているエアガンのマガジンにはBB弾が100発。
屋内ドローン練習場は、ガンドローンとドローンレースの2つに隔たれ、入り口から右側がガンドローンだ。アクリル板で仕切られたステージが3つある。広さはテニスコートの半面ほどだ。レカロのフルバケットシートが各ステージに4つ並んでいた。
ゼニアは、ケーイチを手招きする。
「瀬奈ケーイチ、自分のドローンをステージ内に置いて」
「おおぅ」
ケーイチはドローンのバッテリーを確認してからステージに入り、マーカーが付いてる辺りに置く。
「瀬奈ケーイチ。ルールは簡単だ。同時に飛び上がって、先に地面着いた方が負け」
「相撲みたいだな」
「そうね。良い例えだ」
ケーイチはシートに座り、脚の上にプロポを置き、ヘッドマウントディスプレイを被る。プロポのトリガーを確認して準備は調った。
「少年、いつでもいいぞ」
「僕は、園原ゼニア。女だ。……ゴー!」
キュー! キュー! と同時にスロットルを上げて飛び立つ。バコン! バコン! バコン! ゼニアがエアガンを単発で撃ってくる。ケーイチはひらりと避けて、バコン! カチン! ケーイチが放ったBB弾が、ゼニアの白いドローンに傷を付ける。しかし、ボディーヒットだ。撃墜はできない。
「やるじゃない。でも……」
ダダダダダダ! ゼニアはエアガンを連射してくる。ケーイチはドローンレースの8の字を思い出して、空中ドリフトをしながら高速移動して避ける。
「撃ってくるね」
「僕の戦法だ。突撃あるのみ」
ダダダダダダ――! またゼニアがフルオートでエアガンを撃ってくる。しかし、ケーイチの機体には掠りもしない。カチチチチチ!
「弾切れか? もらった!」
「どうかな」
ヒューン…………カシャン。ケーイチのドローンが落下した。酔いそうな気持ち悪い映像がファースト・パーソン・ビューで、ケーイチの目に焼き付く。タッチの差でゼニアのドローンが着陸する。
「何が起きた!? 俺のが優勢だったのに」
「バッテリー切れだ。スピード勝負じゃないんだから、落ちたらその時点で敗北。まあ、ガンドローン初心者の陥りやすいパターンだけど」




