041(宇宙人の子)
ケーイチは考える。卑怯で陰湿な守山の事だ。ボイスレコーダーを仕込んでるかもしれない。下手な事は言えない。
「守山の周回タイムは?」
「聞いて驚くなよ? 38秒82だ」
「守山、よく聞け。ボイスレコーダーで今の録音したから。大会運営に通達して、お前を参加資格失効にしてもらう」
「待て」
「待てだと? 待ってください、だろ」
「はっ、はい。1億円ください」
「はぁ!? 何で、お前に1億もやらなきゃいけないんだよ?」
「瀬奈と俺は友達じゃん」
「お前を友達だと思った事ねえから。カネが欲しけりゃ、自分で稼げよ」
「そんな事言わず。1000万円にディスカウントする」
「担保はなんだ?」
「タンポポ? 何を言ってる?」
守山は担保という言葉を知らなかった。守山は後ろから声をかけられた。
「瀬奈さんちに何のご用ですかな?」
「煩い、黙れ!」
ケーイチはチェーンロックを確認して、ドアを開ける。
「お巡りさん、コイツも樋口の仲間です」
「お巡り…………?」
守山は後ろを見ると、警察官が立っていた。
「君、署まで同行してもらおうか」
「樋口がなんだって言うんだよ!? それより、この瀬奈って奴は不当にカネを手に入れたんだぞー」
「知ってるよ。宝くじだろ」
「知ってるなら、逮捕しろよ」
「何で…………? 違法でも何でもないでしょ。ほら、警察署まで来なさい」
守山は警察に任意同行され、厳しい取り調べを受ける。
ケーイチと市子はドローンキットをGTRのトランクに入れて、中学校へ向かう。
「コンビニで弁当を買っていこうぜ」
「うん」
「前から気になってたんだけどさ」
「何?」
「市子ってハーフかなんか? グレーの瞳なんて珍しいよね」
「あれ。知らなかった? 私、里子なの」
「マジか。本当の親は宇宙人か〜?」
「バカ」
ケーイチは中学校へ行く途中でコンビニに寄った。
ケーイチはコーラとペペロンチーノを、市子は緑茶とBLTのサンドイッチをカゴに入れて、ケーイチのクレジットカードで支払う。
ケーイチと市子はGTRに乗り、ドローンレース大会の会場に着く。2人はドローンキットをトランクから出して、体育館に入る。今日は高橋は居なかった。代わりに、他のプレーヤー達が最終調整をしている。