039(ベタなラブコメはない)
市子は冷蔵庫に食材を詰める。ケーイチは起き上がる。
「なあ、市子」
「何?」
「マイの死を予知出来てた?」
「…………結果的に」
「どゆ意味?」
「身近な人が亡くなるのは降りてきたけど、マイだとは分からなかった」
「そっか」
「うっ! …………」
「市子、大丈夫?」
「ううう! 降りてくる」
ケーイチは初めて市子の予知能力を目の当たりにする。市子から後光が差した。
バタン。市子は冷蔵庫の扉を閉める。
「ケーイチ…………。今すぐ株を買って。銘柄はストライクフリーダム。1億円前後は投資して」
ケーイチはノートパソコンを立ち上げ、ウェブで株を買う。1億円丁度、500万株だ。
「ジャスト1億円分を買っちまったぞ」
「ケーイチは凄い勇気ね。当たらないかもしれないのよ?」
「市子の事、信じてるから」
「バカ。それはすぐに化けないけど、数年後には数百倍よ」
「それなら、市子も買ったら?」
「私が買うと未来が変わってしまう確率が上がるの。だから、ダメ」
「便利な特殊能力だけど、縛りがあるのか」
「食材を買った事だし、何か作るね」
「おぅ」
市子はキッチンに入り、料理を作り始めた。ケーイチはドローンのトレーニングをする。トントントン。市子は包丁で野菜を切ってる。
「塩と胡椒どこ〜?」
「上の棚だよ」
「何で、そんな所にあるのよっ。あっ! ご飯は炊いてある?」
「昨日だけど、3合炊いてあるよ」
市子はフライパンにジュワ〜と薄切り豚ロース肉を焼く。そして、野菜を入れて、野菜炒めを作る。
ケーイチはドローンをラダーさせていると、ヘッドマウントディスプレイに市子の顔が映る。
「よっ」
「野菜炒めできたよ」
ケーイチはドローンを着陸させ、ヘッドマウントディスプレイを外す。
テーブルに並べられる、野菜炒め、ご飯、インスタント味噌汁。
「市子が料理をするとはな」
「何よ〜。これでも、女よ。ドローンを片付けて」
「おぅ」
ケーイチはドローンを床に置き、バッテリーを充電してからテーブルに戻る。
「いただきます」
「いただきま〜す」
ケーイチと市子は野菜炒めを食べる。市子は料理上手だ。
「美味いな。塩と砂糖を間違えるパターンだと思ってたけど」
「バカ。そんなベタなラブコメはないわ」